屋根裏部屋
小葉「――あんたは何してるんだい」
剣舞の妓女「白蕾」のお通しをしようと男たちが自分の落簪を渡そうと番台にやってくる。
晴晴「なんで俺のは受け取らないんだ」
小葉「これじゃ……」
白蕾のお通しが仕方なく許された夜を買うためにこの男は大金を番台に乗せる。
そして周りの男たちを見下ろす。
晴晴「そんな金であの女のお通しできると思うな」
「おいっ!お前があの妓女の金を釣り上げようとしてるんだろ?!」
「女将も同じ仲だな?!」
晴晴「これは俺の金だぞ、女将に文句言ってどうすんの」
この金は――。もうすでに白蕾を買った金額を当に超えている。
最初から売らなければ良かったものを――。
興味を示したものに執着するのは他の男と変わらんな。
香膳で過ごす間に夜の落簪を選ばれる。
晴晴は当たり前のように白蕾の香膳と夜の両方に金をかける。
白蕾も耐えられず笑っている。
白蕾「晴晴様にとってはあたしも、男たちもおもちゃなんですね」
晴晴「お前はおもちゃになるためここへ来たんだろ」
白蕾「そうですね」
目的のためなら。
あの世に返す方法を知ることができるのなら。
金階に妓子がやってくると夜の落簪が晴晴に決まった、と。
香膳の視線が集まる中、妓子に案内されるまま屋敷の中に入っていく。
「――白蕾様……あのおめでとうございます」
この花街ではお通しがあることめでたいことだ。
妓子は白蕾を見上げる。
白蕾「ありがとう。杏」
晴晴「妓子に名前があったのか」
「――」
白蕾「晴晴様は杏たちが発言しても怒りませんよ。懐の大きい方です」
「あ……あの……白蕾様がつけてくださったんです」
白蕾「杏杏は可愛いから。でも晴晴様と混じってはいけないから杏と呼んでるの」
晴晴「他二人もか」
白蕾「鈴鈴は声が綺麗だから、雪雪は雪のように肌が白いから」
まるで自分のこどものように白蕾はその杏と呼ばれる妓子の頭を撫でた。
晴晴「名前なんかつけてどうする」
白蕾「人生が温かくなります――」
そう言って白蕾は扉の前で立ち止まる。
白蕾「ふっ――」
晴晴「何がおかしい」
この扉はこの屋敷の中で最も奥に存在し、屋根裏部屋に続く。
肩を震わせて白蕾は笑いが止まらないようだ。
杏杏「すいません……白蕾様……この部屋しか開いておりませんでした」
白蕾「あたしこのようなところ大好きなの。杏杏はよくあたしのことわかってくれてるのね。ありがとう。仕事に戻っていいわよ」
杏杏「はいっ……!」
白蕾が不安そうな杏杏を抱きしめると、俺を見てまるでこの女を悲しませるなという顔で見上げてくる。
晴晴「この部屋になったのは女将小葉が仕事さぼっていたせいだ」
扉を開けると埃臭く、ここが客を通す部屋には思えない。
二人で部屋の中に入るとため息しか出ない。
晴晴「どの妓女がこれを仕向けたのか、探すのも面白いぞ?」
白蕾「それでその妓女の毒は抜けるんですか?」
白蕾はギシギシという音を立てる階段を登り、笑っている。
そんなのどうでも良いと。それで全てが解決しないと。
晴晴「俺の遊びをとるつもりか」
白蕾「……部屋はあの子達がなんとかしてくれようとしてくれていたみたいよ」
わかった。ついていけばいいんだろ。
もういい――。




