剣舞
小葉「まだ剣を取り上げていなかったのか?!晴晴!」
晴晴「静かに――。女将、あの剣は使えるぞ」
小葉「あんなので金は取れないね」
晴晴「宮中の女の手にタコがあった」
小葉「晴晴あんたまさか宮中の厄介払い受けた女を私に売ったのかい?」
晴晴「厄介、というより変人が正解だな」
目線の先には庭で剣を振るう女がいた。
目の中に光はなく、ただ込められた気持ちだけでこの剣は動いている。何がそうさせる?
晴晴「あの世それはあるのか」
白蕾「――いえ……ありません」
女とあろうものが剣を握り、汗を流し、自分を鍛えるなど――。
晴晴「ではその剣は誰のためのものだ」
白蕾「……それは――」
太陽の暖かい陽に照らされた白蕾の目は俺を吸い込んでいきそうだ――。
なんだ――。
晴晴「――男か」
白蕾「さあ、どうでしょう」
あの顔は間違いなく女の顔だ。
居たとすれば宮中に思い人がいたのか。この変人の思い人がどのような男なのか、想像もつかない。
誰だ――。
白蕾の顔を見つめると、じっと固まっている。俺の手は白蕾の顔へと伸びていた――。
晴晴「――ふっ。ここで綺麗なままいられると思うなよ」
ここは花街だ。
女に蹴落とされ、男に汚される。
この街で、この女の心は温かすぎる。
この剣を振るったとしても、その身は守れないだろう。
白蕾「あたしが綺麗に見えているのであれば、晴晴様の目は節穴ですね」
白蕾は剣を鞘に納め、するりと俺の首に手を伸ばす。もう汚れているとでも?宮中の女がそのようなはずはない。
白蕾「この世で汚れたとは限られませんよ」
晴晴「この世でまた汚れるつもりか」
白蕾「それは晴晴様次第かと」
白蕾の手は俺の顔に伸び、体が近づく。そして親指をそっと動かす。そして痺れるような感覚に陥る――。
晴晴「誘っているのか?」
白蕾「とんでもない。晴晴様はこのような下女に興味ないのでしょう?」
晴晴「下女か――自ら嫌いなものになるのか」
白蕾「何にでもなりましょう」
白蕾は笑いながら白い仮面を被る。
わからない。この女の全てが。
あの花は空気を割き、人の心を止める、剣舞を舞っていた――。
誰もが真っ白へと塗り替えられていく――。




