表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
白蕾【花街編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/125

落簪


 小葉しょうよう「――な、何を言ってるんだいっ!?」


 賑わう屋敷の裏で女将小葉の怒号が響き渡る。


「しかし晴晴しんしん様が――」

 小葉しょうよう「あのバカ、本当に何を考えているのか――」


 屋敷の面にある落簪るぉざん台。

 ここで妓女を男たちが指名していく場所になる。

 

 そこには紫と黒の衣の男が慣れたように立っている。


 小葉しょうよう「――お断りだね。あれはまだ売ってないんだよ」

 晴晴しんしん落簪るぉざんは作って来た。問題ない」

 小葉しょうよう「あんたはもう――。香膳こうぜんの奥に座るんだよ……全く……」


 「落簪るぉざん」妓女を指名する際に男の名前が刻まれた石や木の札のこと。

 落簪を指名する妓女の名前の下にかけ金額を伝え、落簪るぉざん台の人が男を金額順に掛けていく。そして落簪るぉざんの名前を呼ばれた男が妓女と過ごすことを許される。


「――白蕾ふぁんれい、あんた落簪るぉざんが入ったよ。準備しなさい」


 準備しなさいと言われても何も準備するものを持ち合わせていない。

 このまま行けも同義だった。


 白蕾ふぁんれい「はい」


 ただ張り付いた冷たい笑顔で返事をする。

 そうするしかないのだから、そうする。


 やっとだ。これで――。


 晴晴しんしん「どうだ?花街は」


 引っ張られてやってきた場所はガヤガヤと男たちが妓女と食事をする間「香膳こうぜん」で座っているのは晴晴しんしんだった。

 あたしを買ったのはこの男だったのか――。

 

 晴晴しんしん「なんだ、残念そうだな」

 白蕾ふぁんれい「いえ。失礼します」

 晴晴しんしん「なんだ、お前は慣れているのか?」

 白蕾ふぁんれい「さあ、どうでしょう?」


 後宮の妃たちがやっていた所作を真似してあたしは晴晴しんしんに酒を注ぐ。

 晴晴は大きな手を目に当て、クスクスと笑っている――。

 大きな衣からは手が見えない。

 そういえば晴晴しんしんの衣の袖は他の人よりも少し長い。


 晴晴しんしん「花街で苦労してるみたいだな」


 身なりを冷たい目で見つめ、それもまた嬉しそうに笑う。

 宮中の女が汚れていくのを楽しんでいるのか。趣味の悪い男――。


 白蕾ふぁんれい「あたしはどこでも楽しいですよ」

 晴晴しんしん「なんだ、お前が地獄でも味わったとでも?」

 白蕾ふぁんれい「人によって地獄は違うのかな、と。晴晴しんしん様の言う地獄かどうか」

 晴晴しんしん「あの世は地獄だったとでも?」

 白蕾ふぁんれい「はい、そうです。ただあたしの地獄はぬるかったのかもしれませんね」

 晴晴しんしん「温度が違うというのか」

 白蕾ふぁんれい「はい――」


 温度――。

 そういえばどうして红京ほんじんはあたしに温花うぇんふぁ……温かいと意味を込めてくれたんだろう?

 あのときは嬉しくてそれ以上深く考えていなかったけど――。

 あのとき红京ほんじんはどんな顔して言ってくれてたの――?


 いや。

 あたしは今、白蕾ふぁんれいだ。

 花街にいる白蕾ふぁんれいだ――。


 酒を注いで、あたしは自分の目標を達成しなければいけない――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ