双六
梅心「坊ちゃん、どうしてお妃様を侍女などにしたのですか?」
華辉「温花が望んでいるんだ――」
侍女としてこの屋敷にやってきた白蕾は梅心が動かなくていいほど手早く仕事をこなしてしまう。
まるで最初から侍女であったかのような働き振りに梅心も驚いていた。
なぜ自ら妃という立場を捨ててまで侍女になったのか――。
気がかりだった。
俺も温花から話があった時はこのようなこと初めてでどのようにするべきか頭を悩ませた――。
妃として墓場の屋敷に居た温花のところへ勇気を振り絞り向かうと、先手を打たれていた。
温花は夜伽をする気はなく、双六をするのだと――。
華辉「温花」
温花「双六をするんでしょう?」
甘い声で温花を読んでみても揺らぐことない意思を感じる――。
この顔で笑われると頷くしかない。
暗いこの部屋に蝋燭の火が揺れ、温花の顔が照らされる。
双六は楊兎たちとこの屋敷でいくつも作り上げた。
その1つを温花は机に広げる。
華辉「負けないぞ」
双六だけでも温花に勝っておきたい。
これだけ揺さぶられてしまうのだから。
温花の横に座ると、自分の心臓の音で温花の喋る声が聞こえない、視野も狭くてよく見えない。
後宮の当たり前を温花にぶつけてはいけないことわかっている――。
横にいる温花は次から次に双六を振る。
どうすれば温花が心を開いてくれるのか、俺には分からない――。
華辉「――温花の望みは何だ?」
温花「侍女の陈莉の解放です」
華辉「それは侍女が願えばいいことだろう?」
温花「主人として侍女の幸せを願ってはいけませんか?」
温花は他の妃と同じように交渉の顔になっていた。
何があったんだ?侍女陈莉と仲違いでもしたのか?そのようには見えなかったが。
温花「陛下としてあたしを屋敷に置いておくのは不都合がありますでしょうか?」
華辉「どういうことか」
温花「陈莉の任期をあたしが代わりに陛下の屋敷で侍女をすることは叶いませんか?」
こちらをまっすぐに見る温花の顔が冗談ではないことが伝わってくる。
まさか妃から侍女に格下げを願い出る女が現れるとは、思いもよらない。
温花「陛下のお世話を私がいたします。どうでしょうか?」
確かにそうすれば墓場で温花が一人震えて生活することも、俺はここまで来ずとも毎日温花に会うことができる。悪くない話だ。
華辉「本気か?」
温花「はい。全て解決できるのです――」
その言葉の意味を俺は後で知ることになる。
温花に一本取られてしまったのだ――。
俺はただその場で温花の匂い、動きに、必死に耐えることなり、その後のことをしっかり考えていなかった。
温花「双六第4弾作成します?(笑)」
華辉「そうだな」
交渉が終わればいつもの温花が目の前で笑って双六を作っていた。
これが毎日か――。浮かれていた。
夜の鈴虫の音と、灯篭の灯りがゆらゆら揺れる。
でも温花はこちらを見ない。双六を作る手を止めない。
結局朝まで双六を作って、大作ができてしまった。温花と作る双六は楽しい。
こんなにも近くにいるはずの温花は本当は存在している人間ではなくて、俺は幽霊でも見ているような気持ちになる。
あまりに俺との考えが反対すぎる。
だからこそ温花と距離がいつまで立っても埋まらない。
華辉「温花、そろそろ寝よう。限界だ」
温花「はい」
温花と俺はそのまま机にうつ伏せて寝てしまった。
仕事でもこのように寝てしまうことはあるが、幸福感に包まれたまま目を閉じることができた――。
山源に聞いて様子を観にやって来たが、華辉が夜温花の屋敷へ正式に来るのは初めてじゃねーの?
楊兎「心配で見にきたが……(笑)あんなに新しい双六は作らないと言っていたのになー(笑)」




