雨
温花お嬢様は今日も客家で鳥たちを待っていたが屋敷には冷たい雨が降り注ぎ、屋敷の床に緑が反射している。
温花「今日は鳥たちも来てくれない」
寂しそうな静かな笑みに含まれているのは、红京様が華有様のお調べばかりでこの屋敷に足を運ばなくなり。
寂しさの大きな理由だったのだろう――。
お調べを受けた红京様は華有様のところへ、薬や、食事の指導など信頼を得ている様子だった。
今は華有様専属医を差し置いて红京様は信頼されているような立ち位置になっていた。
温花お嬢様はお調べの意味を理解して心配し、ため息ばかりだ。
楊兎「今日も稽古できねーな」
温花「うん」
楊兎将軍は時間を見てこの屋敷にやって来てくれる。
温花「ねぇ、楊兎?」
楊兎「どうしたんだ?」
温花「あたしは何か仕事ないのかな――」
雨粒が落ちていく屋敷の外を眺めながら小さく呟いた。
楊兎「それは華辉の子を元気に産むことだな――」
楊兎将軍も温花お嬢様の気持ちを知っている人物でもあるが、この答え以外「妃」に与えられるものはない――。楊兎将軍も並んで森の方を眺めるしかなかった。
温花「そうだよね。楊兎いつもありがとう」
あたしに妃なんて、後宮なんて向いてなかったんだ――。
少し考えればわかっていたはずなのに、華国に来たことを夢物語だと思って飛び込んでしまったあたしの意思なのに。
あたしは皇帝の子どもを産んで終わるような人生を望んでいたんじゃない。
空には雲があって、雨が落ちてきて、土に染み込む。雨の音も、匂いもある。
この雨は、この気持ちは偽物じゃない――。
あたしは妃という立場があるだけで、後宮内には仕事があって皆忙しそうだ。陈莉もこの一人で。
あたしは自分の思うようにだけ過ごしてきた。現代のときには当たり前に自分の生活のためには自分で働いた。お金の稼ぐ大変さは知っていたのに――。
あたしは大変なことから目を逸らしていただけだった。
皇帝華辉様が解雇しないからこの世で食べて、寝て、過ごすことができただけだ――。
ようやく自分がこの世のものだと、夢ではなくリアルに感じることができるようになっている。
胸がチクチクして、悲しいことがあると息ができない、自分の息の音でよく周りの音が聞こえない。命を狙われてあたしはここで生きている。
そんなこの世に執着していない不思議な存在があたしをよく知らない人たちからすれば奇妙な存在になるのは間違いないことだ。
仕事をすればここにいていい理由になるだろう。
そんな浅はかな考えで自分の居場所なんて簡単に手に入るはずがない――。
それでも何もしないよりはましだと思ってしまった。
ずっと雨の音だけが響くこの森に消えていけば楽になれるはず。
あぁ、現代のときからあたしは何1つ変わっていない。
逃げて、逃げて自分では何もできず周りの人に迷惑をかけてここにいる「だけ」の存在だ――。
あぁ、ちゃんと冷たい――。




