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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

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お調べ


 俺は――。

 

 寝不足のまま華有ふぁよう様の屋敷に向かった。

 あのとき温花うぇんふぁから強烈に香っていた香が屋敷中に広がり、息をすることが難しい。


 屋敷の外にはかなりの兵が配備されていた。

 自分の身はここまでしないと守れないということ、か――。

 

 上を見上げると谢琦様の姿が見えた。本当に小動物のように動き回っていたんだな。

 やはりあの少年は華有ふぁよう様の手助けをしているのか――?


 红京ほんじん「医学館第3班、红京ほんじん。お調べのため参りました」

「遅い――」


 御簾の上から耳を刺すその言葉は空間から色を奪い、体が冷めていく――。

 鮮やかな衣には数えきれないほどの色があしらわれ、目が痛くなるほどだった。


 華有ふぁよう「調べの命を出したのは昨夜のはずだが」

 红京ほんじん「遅れて申し訳ございません」


 お調べを受けた男子は華有ふぁよう様の配下に入ったこととなる。

 だが、そのお調べに拒否権など無いも等しい。


 後宮の複数ある派閥の中で華有ふぁよう様の派閥「綾彩会りょうさいかい」は皇太后様の「金鱗会きんりんかい」の次に大きな派閥になる。そしてその2つの派閥は敵対しておらず、上級妃の派閥を除いてそのどちらかの派閥から小さな派閥が広がっている。宮中で力を持つ宦官や文官たちとの繋がりも深く、状況的には一強と言っても過言では無い――。

 

 下級妃の温花うぇんふぁはどちらにも所属せずここまでやってこれたのは間違いなく皇帝陛下華辉ふぁほい様の支持があったため。温花うぇんふぁの立ち位置が危ないのは明白だ。俺が温花うぇんふぁのような自由人と関わったことがなかったため、このようなことになることを想像できなかった――。

 後宮は戦場ということを知りながら俺が入宮させてしまったこと――。責任を取らなければいけない時が来たのだ。

 

 この目の前にいる人物は時期皇太后になる可能性のある人物である――。


 華有ふぁよう「まぁ、良い」


 「お調べの部屋はこっちだ、急げ」と独特な鮮やかな衣に身を包んだ男は兵なのか体つきが良く、顔が整っている人物ばかりで華有ふぁよう様の好みが伺える。そんな男たちは医学館の臭い男がお調べを受けることに前向きでは無い様子で、まるで汚物のように引っ張る。


 指示された部屋には窓がなくまるで毒ガス室のようだ。

 温花うぇんふぁもこの部屋に通されたのか……?

 この色の無いこの部屋が回る――。

 

 あぁ、そういうことか――。

 

 華国の宦官制度がこんな緩いものなのか、意味を知ってしまった――。

 

 まぁ、良い。諦めの言葉ではない。もう配下に入ったも同然だと思っているのだろう。


 華珩ふぁこう「お母様!お母様!」

 華有ふぁよう「なんですか、今は仕事の時間です」

 華珩ふぁよう「それが大変です」


 部屋の外は騒がしく、すぐ後ろの扉は勢いよく開き体が倒れる。

 目をなんとか開けると顔を真っ青にした派手な衣の侍女は、同じ衣の兵たちに連れ去られていく。

 

華珩ふぁこう様!いけません!今からお調べの時間です――」

 華有ふぁよう「躾のできない侍女のようだな」


 ニヤリと笑う。もう次はないのだ。


 華有ふぁよう「お仕事が終わってから聞きます」


 俺の顔を扇子を使い持ち上げると吟味しているのか目に皺を寄せて見下ろしている――。


 華有ふぁよう「医者は久しぶりなの。楽しませて頂戴?」


 と華有ふぁよう様は――。女は自分の胸に俺の手をあてる――。

 そして俺の衣を解き、胸から手を這わせていく。


 華有ふぁよう「体は悪く無いわね」

 红京ほんじん「お手伝いしましょうか?」


 その医者は瞑っていた目を開けた――。


 薬が効いていないのか――?

 医者は大きな手で首を触る。

 女に興味なさそうな男も悪く無いわね。染めて、あの男に手を貸せないようにしてあげる。


 華有ふぁよう「そうね、しなさい」


 これだけ意識がある状態も珍しい。奉仕できるのならそれで良い。

 顔はこちらを向いている、目もこちらをまっすぐに見ているはずなのに、こちらを見ていない――?


 红京ほんじん「……また貧血ですか?」

 華有ふぁよう「また?貧血?」


 私を抱こうとしながら誰を見ている?!なんと失礼な男だ――!

 中途半端に薬が効いているということか。

 医者は急に咳をすると目に光が戻ってきたようだった。


 红京ほんじん「……華有ふぁよう様、貧血ですね」

 華有ふぁよう「貧血とはなんだ!これ以上の無礼は許さんぞ!」

 红京ほんじん「血が足りていないんです。立つとふらつくことはありませんか?化粧で隠していたようですが、実は体が弱いのではないでしょうか?」

 華有ふぁよう「なぜ……わかるのだ……」

 红京ほんじん「爪が割れやすいのでしょう?食欲不振も、顔色も、気分の調整も難しいのでしょう?……まぶた失礼します。やはり、鏡を見てください。俺のは赤くなりますが、白く見えるはずです」


 医者離れた手つきで爪先、顔、瞼の確認をし、症状を言い当てていった。

 

 華有ふぁよう「……色か」

 红京ほんじん「――失礼しました。食事の改善と、血流を良くするため体を冷やさないでください。これは帯状疱疹ですね。疲れが溜まっているようですね」


 その医者はどんどん私の症状を当てて、改善策をすらすらと――。

 私は色がわからぬ。だからこの衣が必要なのだ。自分の支配下であることを把握するために――。

 きっとそれもこの男は見抜いたのだ。


 红京ほんじん「お調べ、健康観察をするのが医者の仕事ですので」


 どうしてこの男は媚薬が効かない?媚薬に強い体質なのか?

 体を鍛えている兵たちもあの量の媚薬からは逃げることはできないというのに――。


 華有ふぁよう「私の医者はそんなこと見抜けなかった、なぜお前はわかる」

 红京ほんじん「第3班の妃にも同じような人がいますので」

 華有ふぁよう温花うぇんふぁか――」


 その質問に医者は顔色1つ変えず口を開かない。


 華有ふぁよう「墓場の女の何が良い?!穢れをここに持ち込むな!」

 红京ほんじん「……穢れですか……」

 華有「もう良い。お前のことが理解できん。疲れた。お調べを終わる。貧血の改善、薬の準備を頼む」


 華有ふぁよう様はそのまま横になった。布団をかけた。

 本当はずっと疲れていたのかもしれない、満たされないのかもしれない。休むことも大事だ――。

 

 鼻と耳に詰め物を外し、口は歯を強く噛み締めて息を吸わないようにした。

 あのタイミングで華珩ふぁこう様が現れたことであの密室の時間を短く済んだ。

 まだ媚薬の効果は残っているようだが、華有ふぁよう様から医者としてのお調べの信頼を得るため医学館に戻り薬の調薬を始めた――。

 


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