表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/121

夕陽から月夜


 温花(うぇんふぁ)「……ほ、红京(ほんじん)!?」


 むしろ俺がいることに温花(うぇんふぁ)は驚いていた。

 谢琦(しゃきい)と呼ばれるその人物はずっとニヤニヤと笑っている。

 

 谢琦(しゃきい)温花(うぇんふぁ)が水に飛び込むんだもん!びっくりしゃったー!」


 違う――。

 

 飛び込むことを選ぶしかなかった。

 自ら死を選んだことにしたかったのか――。

 その作戦が失敗に終わったため、この谢琦(しゃきぃ)という少年はここまで追ってきたのか――?

 

 味方なのか、敵なのか――。

 少年のことを考えても答えがわからない。

 

 そもそも温花(うぇんふぁ)は何故、谢琦(しゃきい)を知っている――?


 红京(ほんじん)温花(うぇんふぁ)様、この方は?」

 温花(うぇんふぁ)「あれ?红京(ほんじん)知らないの?谢琦(しゃきぃ)様、羌笛きょうてきがとても上手な人なの」


 羌笛きょうてきは華王国では珍しい楽器のはず。確か西方の楽器だったはず――。

 異国の者なのか?

 長髪でなく短髪、華王国の身だしなみには見えない軽装。わざと、か。

 忍者のような役割をするため身軽にしているだけだと思っていたが色々と闇が深そうだ――。

 

 それに温花(うぇんふぁ)谢琦様しゃきいのことをどこまで知っているんだ?

 まるで友人のように話す2人。

 すぐに人を信用することをやめて欲しい――。

 

 温花(うぇんふぁ)「……まだ少しぼーっとするの」

 谢琦(しゃきぃ)「白湯でも飲めるかい?」

 温花(うぇんふぁ)「うん……白湯なら飲めそう」


 自分もまだびしょ濡れな俺とは違って谢琦(しゃきぃ)様は冷静な判断ができている。


 谢琦(しゃきぃ)「水路に落ちちゃったし、屋敷で湯浴みするのがよさそうだよね!」

 红京(ほんじん)「温花(うぇんふぁ様?……今、後宮になんて戻るのは危険ですよ……」


 温花うぇんふぁ様をどうしたいんだ?

 

 今後宮になんて温花うぇんふぁが戻れば皇太后様、華有ふぁよう様から次何をされるか――。

 

 俺は今まで素直すぎる人たちに囲まれすぎていたんだな……。

 温花うぇんふぁ楊兎やんとぅ将軍、華辉ふぁほい様、陈莉ちぇんりぃまでも――。

 人の心を考えること、こんなにも疲弊することだったのか。


 谢琦しゃきい「医学館なんて男ばかりだよ?こっちのほうが危ないでしょー、红京ほんじんもずっとここにいるなんて難しいし、侍女の陈莉ちぇんりぃも危ないでしょ?」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃは大丈夫」


 温花うぇんふぁはやたら強気に答えた。


 谢琦しゃきい「でもこんな真っ暗なところにいるなんてずっとできないでしょー?」

 温花うぇんふぁ谢琦しゃきい様、死ぬまでここにいるつもりはないですよ(笑)」


 温花うぇんふぁ様は震える体を掴んで起き上がった。

 

 谢琦しゃきい様のこと牽制しているのか――。

 そうだ、この人は素直なようで人を見る目はある。


 温花うぇんふぁ「……魏峰(うぇんふぉん)様だったら、どのように判断しますかね?」


 温花うぇんふぁ谢琦しゃきい様の顔をあえて見なかった。

 谢琦しゃきい様はニヤニヤと笑ったままだ。

 

 魏峰うぇんふぉん様……?

 上級妃の1人、淑妃の?どうしてその人物の名前が上がってくるんだ?


 谢琦しゃきい「なぜ魏峰うぇんふぉん様?(笑)」

 温花うぇんふぁ「あのお方は冷静だから、判断を知りたくて」

 谢琦しゃきい温花うぇんふぁ様はあまり妃には興味ないものだと思ってました」

 温花うぇんふぁ「そんなことはないんですよ」


 この二人の中で見えない攻防のようなものがあるのだろう。

 俺も温花うぇんふぁが他の妃の情報を持っていることに驚いている。

 谢琦しゃきい様と同じように質問していただろう。


 谢琦しゃきい「すいません、ここにお邪魔して」


 谢琦しゃきい様は突然、窓の外に飛び上がった。

 本当にあの人は猫みたいな人だ。

 

 红京ほんじん「いえ、温花うぇんふぁ様の意識が戻ったのは谢琦しゃきい様のおかげです」


 「またねー」と気楽な挨拶をして薬庫から出て行ってしまった。

 その姿を見た温花うぇんふぁは力が抜けたように体を横にする。顔色は悪く座るのもやっとだったのか。


 红京ほんじん「なぜ谢琦しゃきい様のことをご存知だったんですか」

 温花うぇんふぁ「――あー死ぬかと思ったー……」


 窓から溢れる光はいつの間にか月の光に代わっていた。

 この夜にこの人を一人にしてしまうわけにいかない――。

 

 红京ほんじん「本当に危なかったんですよ。もう少し自分の身を大事にしてください」

 温花うぇんふぁ「そんなのわからない……(笑)」

 红京ほんじん「わからない……?毒を飲まなければよかったですし、水路の近くに行くべきではなかったし……!」

 温花うぇんふぁ「それは大事にされたことがある人はできるよね……?誰かのために生きないと自分がわからなくなってしまう……」


 どうしてそんなことを言うんだ。

 わかっていたはず。なんで諦めるんだ。

 

 红京ほんじん「そんなの自分1番でいいんです!」

 温花うぇんふぁ「そんなのとっくにわかってるよ、红京ほんじん。――でもわからない。本当に疲れた、自分のためだけに生きるなんてしたことないし――」


 温花うぇんふぁは仰向けになっていた体を横に向け小さく丸まって寝てしまった――。

 スースーと寝息を立てて――。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ