枯れた花
北の地から隊列を作り宮中へとの帰路、温花は荷物車には乗らず、列の後ろの方で静かに歩いている。
楊兎「なーんか温花元気ないよなー」
红京「楊兎将軍が元気にしていれば温花も元気になります」
楊兎「ん?どういうことだ?(笑)」
楊兎将軍を心配しているから、だ。
とは本人には言えず――。
温花は淡々と侍女の仕事をこなしていた。
華辉様と何を会話すればいいのかわからない様子で温花様は硬くなってしまっている。
静かな温花を見て陛下は不満そうだ。
温花は妃として陛下から気に入ってもらっているが……それが無くなればあの後宮での立場は無くなってしまう。
そんな温花は隊列の流れに乗らずに立ち尽くしてしまった。
楊兎「――红京、俺ここから離れられなくてさー。温花回収してきてくれる?」
红京「はい」
温花は一輪のその枯れた金銀花を見ていた。これは行きに見た金銀花だ。
红京「温花、侍女の仕事は慣れましたか?」
温花「うん」
前の温花なら侍女の仕事のあれこれを話してくるはず。ただ返事するだけでそれ以上の会話がない。侍女の仕事に疲れているだけではない気がした。
红京「温花、疲れているのなら休んでは?陛下は許してくださるはずです。それに温花は現代に戻れば命の危険は無くなりますよ」
温花「向こうとこっち――。向こうから逃げてきたから、もうこっちで逃げたくなくて」
温花は現代から逃げてきた――。
その目は光が無く、目の前にある枯れてしまった金銀花のようだ――。
綺麗に咲いていたはずの花がこんなにも枯れてしまうなんて――。
温花が目線を落とす先にある枯れた金銀花を思わず摘み取ってしまった――。
温花「……綺麗なときに、見てもらえなきゃ……意味ないよね」
静かに歩き始めた温花が恐ろしく感じた。この世にもあの世にも執着していないから歩き続けてしまうこの花に俺はどうすればいいのかわからないまま――。
金銀花の枯れた花びらは風に攫われてしまった――。




