医者見習いと皇帝
红京「本日の健康観察に参りました――」
朝の健康観察に红京がやってきた。
華辉「――穏やかな红京は喧嘩することあるのか?」
红京「俺ですか?そうですね、昨日温花様と2回ほど喧嘩しました」
華辉「红京が?温花と?何を喧嘩するんだ?」
温花は红京のことを思っていると、俺は考えていた。红京と喧嘩することを知って嬉しくなった。
俺はそんな温花と衝突することはない(笑)
红京「簡単に話すとやりたいことの違いと、毒見の件ですね」
華辉「……毒見の件はすまなかった」
俺は誰かを思うことができる。
温花は誰かのことを深く思い詰めすぎているだけだ。
それに楊兎将軍は将軍なのだから強くて当たり前だ。温花が心配しなくても大丈夫だ。考えすぎるのも大変だからそれを手放せばいい。
红京「いえ、結局は楊兎将軍がしてくださったので……本当に心強いです」
そうだ、楊兎には備わっている。
心配する必要はない。
温花は考えすぎなだけだ。
红京「……あのお方がたまに挫けているのをみて人間なんだと安心できます」
红京は脈を測りながらぼそっと呟いた――。
華辉「挫ける?将軍だぞ?」
红京「楊兎将軍らしくて俺は好きです」
華辉「どういうことだ?」
红京「……すいません、陛下の前で将軍たる男が挫けることはありませんでした」
あ――。
そうか――。
楊兎将軍の弱さを陛下は知らないのか――。
楊兎将軍はよく挫けている。
剣を持つ手が震えていた背中を、俺は何度も見ている。
もう頑張れないと打たれ弱い。
何度も自分を叩いて、叩いて――。
顔は凛々しく、体は強く逞しい将軍である楊兎将軍も、心が折れる。
自分の調子にかなり振り回されている。
俺たち側にいる人間がそれをうまく周りが助け、なんとか回っている。
楊兎将軍の調子がいいときは無敵状態になることを誰もが知っているから。
それを陛下の華辉様も知っているものだと思っていた。知らなかったのか――。
陛下は様子を伺うようにこちらを見下ろす。
華辉「……先ほど温花が嘆いていた……楊兎将軍が心配だと」
红京「心配?」
華辉「楊兎将軍は将軍なのだから女の温花に弱みはみせないだろうと」
红京「まだそのことで悩んでいたんですね……(笑)」
俺から見ればここ最近楊兎将軍が調子の悪い時、むしろ温花の屋敷に行き力を蓄えに行っているような気がしていた、が――。
红京「温花様は何と言っていたのですか?」
華辉「ここから楊兎の故郷が近いから心配だと。朕からは温花が気にする必要ないと、考えてもどうにもならないと伝えたかったのだが、うまく伝わらん」
红京「そうですね――」
温花が悲観していたことがなんとなくわかった。
皇帝という人間の考えもわかってしまった。貧しい思いをしたことがなければ失う怖さを知らない。今あるもので充分だろう。
人間の気持ちや、ストーリーをこれまで触れずに生きてきたのだろう。
温花はそれが分かってしまって耐えられなくなったのだろう――。
無いのであれば、与えれば良い。
与えるものが無ければ、探せば良い。
それが故郷を奪っていた、悲しむことはない、と。
温花は感情でどうにか人を救ってあげたいともがいてしまう人間で、陛下との考え方に差が生まれてしまっている。
红京「――温花は0から1のものを自分で作って渡そうとすることが難しく踠いているように俺は見えるんです……俺にはそれができないから見ていることに飽きない人なのでしょう――」
慌ただしいノックの音と同時に、扉が開かれた。朝食を持って入ってきた侍女は皇帝陛下相手に頬を膨らませている――。
温花「――陛下っ!宮中に早く戻る話は本当ですかっ?!やっと荷解き終わったんですよ?!……まだ見て見たいお店もあったんですよ?!」
山源「温花様!今陛下は健康状態をチェックしております――」
温花「……あっ……失礼しましたっ!」
朝食を机の上に慌てて並べた温花は上半身の肌を見せている陛下を見ないように顔を背け、顔を真っ赤にして逃げるように部屋を出た。
華辉「あのお転婆は男慣れしてないのか……?わからんやつだな……あの人を守るにはかなり忍耐が必要そうだな――」
服を整え、並べられた朝食を嬉しそうに陛下は眺めた。温花を見る目が優しいこと近くで見る人間は誰もが気がついているだろう――。




