表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/120

水辺


 墓場と呼ばれる屋敷のすぐ隣は宮中の中に唯一森が存在する。

 大きな動物は外の高い外壁があるため入ってくることがないため、温花うぇんふぁの好きそうな鳥が多い。

 薬草を取りつつ進むと、鳥の囀りが耳に入ってくる。ここへ来たくなる理由もわかる。

 

 宮中は今のままでも十分な大きさがあり、これ以上規模を拡大する必要がなくなってしまい開拓はされず、そのまま放置されている場所なのだろう。

 この大きな宮中、屋敷がある場所も元々は森だった場所なのだろう。

 あれだけ整備され、華やかな宮中を作ることができるのはそれだけ国の力が強い象徴でもある。


 〜♪


 太陽の光がこぼれ落ちる水辺から誰かの歌っている声が聞こえてくる。

 そこにいるのは誰か分かっている。

 また陈莉ちぇんりぃに心配をかけて。少しため息がこぼれる。

 もう少し妃らしくするべきだと話をしなくては――。


 木を掻き分け進むその先は楽しそうな歌声が咲く――。

 その水辺で靴を脱ぎ捨て、森の小動物に囲まれ、穏やかに笑う――。


 红京ほんじん温花うぇんふぁ……」


 お転婆で誰も手につけられないお転婆の妃。変人と呼ばれる妃は。

 この世界そのもの温花うぇんふぁという花をそっと抱きしめているように温かい。

 その様子に思わず、名前を呟いた。


 妃と呼ばれる女性は袖が落ちないように上品に振るのだが……温花うぇんふぁはこちらに気が付いてようで大きく手を振る。

 

 温花うぇんふぁ「あっ!红京ほんじんっ!」


 その瞬間、温花うぇんふぁは大きな水飛沫をあげ、驚いた鳥たちは飛び立っていく。

 持っていた本、籠を投げ捨てて走る――。


 红京ほんじん温花うぇんふぁ!」


 急いで池の中から引っ張り出そうとすると、衣が水を吸ってうまく起き上がれない。

 手だけでは上手く引っ張り出せないと思い、体ごと温花うぇんふぁを抱き上げ、温花うぇんふぁはフラついて胸に突撃してくる。


 红京ほんじん「どうして危ないことをするんですか?」

 温花うぇんふぁ「だって……」

 红京ほんじん「水の流れのない池では菌が溜まることもあります」

 温花うぇんふぁ「……ここの水は綺麗だし……大丈夫でしょ?」

 红京ほんじん「ダメです。感染症になってしまうかもしれないんですよ」


 陈莉ちぇんりぃに浴の準備をお願いしていて良かった。

 春でもまだ水の中は冷たい。体を冷やすと良くない。それに温花うぇんふぁが真っ直ぐ屋敷に帰ってくれる確証もない。

 手っ取り早い方法で行くか――。

 二人の髪と衣からはポタポタと同じ場所に水が落ちていく――。


 红京ほんじん「それで、駒は見つかったんですか?」

 温花うぇんふぁ「……えっと……石とどんぐりと……」


 花の刺繍が入った袋の中には綺麗な石と、どんぐりと、鮮やかな色を付けた木の実。


 红京(ほんじん)「……小学生男児じゃないんですから」

 温花(うぇんふぁ)「もっ……!红京(ほんじん)だって草集めてるじゃん!」

 红京(ほんじん)「これは薬になるので、温花(うぇんふぁ)の双六の駒と一緒にされては困ります」

 温花(うぇんふぁ)「あ〜っ……薬草ついでに探しに来たの?!」


 ――楊兎(やんとぅ)将軍と2人お茶を飲みながら2人の帰りを待っていた。


 楊兎(やんとぅ)「おー!帰ってきた!帰ってきた!」


 目線の先にはずぶ濡れの温花(うぇんふぁ)お嬢様を抱き抱える红京(ほんじん)様――。

 2人は何やら言い争いをしているようで。

 1人の顔は真っ赤で、1人は目を細めて仕方なさそうだ。


 陈莉(ちぇんりぃ)温花(うぇんふぁ)お嬢様っ!大丈夫ですか?!」

 温花(うぇんふぁ)「だっ、大丈夫な、わけないでしょっ?!」


 と、顔を真っ赤にしたまま必死に返事をした。


 温花(うぇんふぁ)「お、お、おろしてっ!」

 红京(ほんじん)「あ、はい。早く清潔にしてきてください」

 温花(うぇんふぁ)「人を汚いみたいにっ……!」


 红京(ほんじん)様の腕から下ろされた温花(うぇんふぁ)様は力が入らないのかそのまま座りこんで、顔をうつ伏せてしまった。


 陈莉(ちぇんりぃ)「……だ、大丈夫ですか?!」

 温花(うぇんふぁ)「だから……大丈夫じゃない……って……」


 息が苦しいのか、足が痛いのか、それとも――。


 红京(ほんじん)「……これが恥ずかしいと思う前にもっと恥ずかしいことあったはずです」

 温花(うぇんふぁ)「……っ!红京(ほんじん)のバカっ!」


 急に立ち上がった温花(うぇんふぁ)お嬢様は力を振り絞って湯殿のほうに走って行ってしまった。


 楊兎(やんとぅ)「……何があったんだ?(笑)」

 红京(ほんじん)「足を滑らせて水の中に落ちたんです……本当にあの人は忙しそうですね」


 红京(ほんじん)衣の水を絞って、濡れてしまった本を乾かそうとページを開き乾かし、籠の中の薬草の淡々と整理を始めてしまう。

 いつだって冷静な红京(ほんじん)はよく感情が見えない――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ