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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

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診察


 あの声は墓場と呼ばれる屋敷には優しすぎる。

 

 楊兎やんとぅ将軍は誇らしそうに红京ほんじん様を前に押し出した。

 

 红京ほんじん「――温花うぇんふぁお嬢様はどこですか?」

 楊兎やんとぅ红京ほんじん、診察お願い〜」

 红京ほんじん「はい」

 楊兎やんとぅ「……红京は見習いだけど腕は確かだ。医学館のじーちゃんたちは他のお嬢さんたちに言ってしまうかもだし。信頼できる红京ほんじんならと思ってさー!」


 陈莉「あ、ありがとうございます!すぐお嬢様にお知らせして来ます!」


 楊兎やんとぅ将軍が医者の红京ほんじん様を連れて来てくれた!

 きっと温花うぇんふぁお嬢様は喜んでくださる!

 元気になるため診察を受けることができる!

 

 部屋に入ると温花うぇんふぁお嬢様は誰か来たことを察していたのか着替え始めていた。


 陈莉ちぇんりぃ「お嬢様、動けますか」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃ誰が来たの?そろそろ屋敷を追い出されるときかな〜(笑)ごめんね、最後まで一緒にいれなくて」

 陈莉ちぇんりぃ「違います!楊兎やんとぅ将軍と医学館の红京ほんじん様が来てくださったんです!これでお嬢様の病も治ります!」

 温花うぇんふぁ「え……――。あ、追い出されるんじゃないの……?(笑)」

 陈莉ちぇんりぃ「はい!助けてもらえます!」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃ、ごめんね。お断りして」


 二人が来てくださったこと喜んでくれると思ったのに。どうして?

 冷たく言ってお嬢様はまた横になった。


 陈莉ちぇんりぃ「どうしてですか?!これ以上お嬢様が弱っていくのは見ていれません!」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃお願い。こんな格好見せられないでしょ?あたしが悪いだけだから」


 診察を待つ楊兎やんとぅ将軍と红京ほんじん様は隣に温花うぇんふぁお嬢様がいないことに目を合わせていた。


 楊兎やんとぅ「断られたのか?!」

 陈莉ちぇんりぃ「はい……お嬢様は、私が医学館に飛び入ったときも連れ戻されてしまって……どうしてでしょうか」

 楊兎やんとぅ「どうするのがいいんだろうな〜ん〜」

 陈莉ちぇんりぃ「このままではお嬢様……食事もほとんど食べず、体調が悪いようで……」


 红京ほんじん「……まさか――」


 その红京ほんじん様は予想を初めて黙り込んでしまった。

 

 ”温花うぇんふぁは懐妊していることを隠したいのか――?

 

 正八品せいはっぽんが懐妊となると他の妃たちが黙っているはずがない。

 それに皇后様は、まだ女子しかいない。

 もし温花うぇんふぁが皇帝の隠しておいたお気に入りで、男子を懐妊となるとかなり後宮内で嵐が起こることになってしまう。”


 红京ほんじん温花うぇんふぁ様!入ります!」


 红京ほんじん様は自分の顔をパンパンと叩いて覚悟を決めたのか、温花うぇんふぁの許可なく部屋の中に向かう。


 陈莉ちぇんりぃ「勝手に入られては困ります……!」

 红京ほんじん温花うぇんふぁ様を助けたいんだ?見捨てたんだ?どっちなんですか?」


 红京ほんじん様の言葉は真っ直ぐで、正論だ。

 温花うぇんふぁお嬢様は横になったままだった。


 楊兎やんとぅ红京ほんじんの診察が終わるまで、お前も休憩しとくんだぞ〜?一人で大変だったよな〜」

 陈莉ちぇんりぃ楊兎やんとぅ将軍様……先ほどは悲しい人なんて言ってしまってすいません……ありがとうございます」


 楊兎やんとぅ将軍は空が見える場所に腰掛け、太陽に笑う。

 私はこの人のように余裕がない。笑って待つことができるなんて、あの红京ほんじん様を信頼しているのだろう。

 この楊兎やんとぅ将軍が言うのなら私も力を抜いていいのかもしれない。

 気が抜けてしまったのかその場に座り込んでしまった。


 ――。

 

 温花うぇんふぁの部屋には墓場と呼ばれる屋敷の想像とは異なる後宮な家具が並べられていた。

 送られたのは桜の木だけではなかったのか。それだけ皇帝陛下に寵愛されていることをこの部屋を見れば分かる。

 医学館に皇帝陛下と並んで現れたことに驚きを隠せなかったが、それが事実である。


 寝台の布もきめの細かい――。

 あ、これは現代から持って来たものだな。

 

 红京ほんじん温花うぇんふぁ様、起きてください。……温花うぇんふぁ


 温花うぇんふぁはしばらく風呂にも入れいていないのか髪の毛は乱れ、天真爛漫の姿は見えない。

 まるでそこにいることだけを選んでしまった人だ。


 温花うぇんふぁ红京ほんじん……?夢?」

 红京ほんじん「墓場の桜の木、見て来ました。客家けっかの縁で鳥を待つのでしょう?」

 温花うぇんふぁ「もうそれはしたの……もういい」

 红京ほんじん「ではなんでこんなところにいるんですか。もうここに温花うぇんふぁがここにいる理由はないでしょう」


 ここにいる理由はもうない?

 あたしはこの華国に逃げてきた。それはあたしがここにいる理由だった。だけど今は――。

 

 温花うぇんふぁ红京ほんじんは向こうに帰りたくないの?……一人だけ帰るのなんて後味悪いじゃん……」

 红京ほんじん「何を言っているんですか……俺だけでも見つけられるかもしれないじゃないですか」

 温花うぇんふぁ「それならあたしは红京ほんじんが帰れる方法見つけたい」


 温花うぇんふぁは気力がないのか強く言い放つような言葉しか出せない。

 

 红京ほんじん温花うぇんふぁ様はなぜ逃げなかったんですか……。帰れたはずですよね」

 温花うぇんふぁ「こっちに戻って来ないことが怖くなったの」

 红京ほんじん「……あなたはいつでも戻って来るそんな自信があったから……温花うぇんふぁは簡単に行き来ができたのだと思っています。俺はその自信がないから戻れないんだと思います」

 温花うぇんふぁ「じゃあ、ここにいる!」


 温花うぇんふぁは勢いよく起き上がった。

 髪の毛は寝癖で爆発していて、ずっと眠っていたからなのか半目で、脳貧血を起こしているようで視点が合わない。


 红京ほんじん「どうしてそんなにわがままなんですか!?こちらに居たいのなら診察を受けてください!自分が今どんな状態で、陈莉ちぇんりぃさんにどれだけ心配させているのかわかっていますか?!」


 温花うぇんふぁを叱ると、フラフラと体の向きを変えた。

 

 温花うぇんふぁ「……ごめんなさい……。红京ほんじん、怒ってくれてありがとう。1時間待ってもらえますか?こんな状態で人に会うなんて」

 红京ほんじん「分かっているのならよかったです。待ちます。陈莉ちぇんりぃさんお呼びしますか」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃは休ませて。大丈夫、支度くらい自分でできる。楊兎やんとぅ将軍にもお詫びを」


 温花うぇんふぁはやっと寝床から起き上がって果実を一口食べ、準備を始める。


 屋敷の広く、庭を見渡せる部屋にやってくる温花うぇんふぁは扇子で顔を隠し、本当に後宮にいるお嬢様そのものだった。

 きっと顔色の悪さを隠そうと化粧をしていて、それでも隠しきれなかったのだろう。


 温花うぇんふぁ楊兎やんとぅ将軍様、温花うぇんふぁです。お待たせしてしまい、大変申し訳ございません」

 楊兎やんとぅ「いいのー、いいのー。俺ここでずっと煎餅と果物食べてるだけだから!」


 楊兎やんとぅ将軍は大きな体と綺麗な顔立ちは引き締まった印象。

 将軍って呼ばれる人はもっと怖くて、男臭くて。そんな人物像を勝手に作り上げていたから、明るい喋り方をしていて驚いた。


 楊兎やんとぅ红京ほんじんの診察受ける気になったみたいでよかったー!红京ほんじん、終わったら教えてー!陈莉ちぇんりぃの作るせんべいがおいしいから俺食べて待ってる!」

 陈莉ちぇんりぃ「これはお嬢様が教えてくれた菓子なんです!残った米を焼いて――」


 あたしの知らないところで陈莉ちぇんりぃ楊兎やんとぅ将軍は仲良くなってしまっていた。


 红京ほんじん「それでは診察していきます」

 温花うぇんふぁ「はい」


 温花うぇんふぁお嬢様がこんなにも素直に診察を受けてくれるなんて。


 红京ほんじん「――診察ありがとうございました。とにかく貧血なのは間違い無いでしょう。薬あるので、これを」


 红京(ほんじん)様か取り出した薬袋には見覚えがあった。

 

 陈莉ちぇんりぃ「お嬢様の元気薬!貧血の薬だったんですか?!」

 温花うぇんふぁ「だって」

 红京ほんじん「だってじゃありません。医学館も忙しくなるし、皇太后様から目をつけられて温花うぇんふぁ様は消されてしまったとこちらは考えましたし」

 温花うぇんふぁ「だって……」

 红京ほんじん「少しは俺のいうことも聞いてくださいよ、お願いですから」

 温花うぇんふぁ「はい……」

 红京ほんじん「食事、散歩。陈莉ちぇんりぃに心配をかけすぎないこと」


 楊兎やんとぅ温花うぇんふぁ、懐妊じゃなかったか?!」


 楊兎(やんとぅ)将軍の元気な言葉は屋敷の向こう側まで響いた。

 

 温花うぇんふぁ「えっ……?まさか妊娠したって思われてたの?!そんなわけないですよ!陛下とそのような関係にないですし、それにあたしはここに来てまだ半月ですよ?陛下とお会いしたのはここ最近で……悪阻ってそんなに早いの?!」

 红京ほんじん「あ……」


 红京(ほんじん)は持っていた薬袋を机に落とした。

 

 温花うぇんふぁ红京ほんじんまでまさかそんな風に思ってたってこと?!(笑)」

 红京ほんじん「……はい……完全に視界が狭くなっていました……すいません……」

 温花うぇんふぁ「ふっ(笑)红京ほんじんも完璧じゃなってわかってちょっと嬉しい(笑)」

 红京ほんじん温花うぇんふぁは年上なのでもっとしっかりしてほしいですけど、ね!」

 温花うぇんふぁ「え〜っ、あたししっかりしてるほうだと思うんだけどな〜」

 红京ほんじん「しっかりしている人は侍女にここまで心配かけませんし、だって、なんて言いませんよ!」


 温花(うぇんふぁ)お嬢様と红京(ほんじん)様。このお二人にしか出せないこの空気はなんだろう。

 見ていて微笑ましく見える。

 しばらく2人が言い争った後、温花(うぇんふぁ)お嬢様は姿勢を正し、楊兎(やんとぅ)将軍を真っ直ぐ見つめた。


 温花(うぇんふぁ)楊兎(やんとぅ)将軍、ご心配おかけしました。温花(うぇんふぁ)はそのようなことに身に覚えがないため、期待に沿う状態ではないと思います。楊兎(やんとぅ)将軍様、红京(ほんじん)、今日はありがとうございました。そして陈莉(ちぇんりぃ)今まで心配かけてごめんね」

 陈莉「とんでもございません!」


 主人の久しぶりの笑顔をみた侍女陈莉(ちぇんりぃ)は涙を流して喜んでいた――。


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