表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/122

将軍

 

 墓場と呼ばれる屋敷の夜は細い虫の声がひとつ。

 空に浮かぶ月は、半月になり華国ふぁこくで過ごした日にちが進んでいることを静かに教えてくれる。


 「紅」の衣に身を包み、見たことも、会ったこともない男を待つ。

 夜に男女が会うことで何が起こるのか――。


 屋敷の門が叩かれ、陈莉ちぇんりぃが静かに開ける。


 そこには月夜に照らされる一人の男が立つ。

 月の光を集めた銀色の長い髪を靡かせ、黄金に輝く宝石のような目。

 これほど綺麗な人が、男が存在していいのか眼を疑う――。


 きっとこの男の嫁になりたいと思う人はこの国に五万といるだろう。

 

 着飾って待つしかできなかったあたしは将軍って大きくて野蛮で、血に染まったコワモテな男だと思っていた。

 アニメや漫画で見た将軍のイメージとは正反対で、まさかこんな美男子だとは思いもしなかった。

 この人が楊兎やんとぅ将軍――。


 楊兎やんとぅ「……温花うぇんふぁか」

 温花うぇんふぁ「はい。温花うぇんふぁです」


 低い声が夜の風に乗ってくる。

 

 陈莉ちぇんりぃはしきたりのひとつを知っているようで、楊兎やんとぅ将軍に酒と包みを乗せて差し出した。

 

 陈莉ちぇんりぃ楊兎やんとぅ様、どうぞ屋敷の中へ」

 楊兎やんとぅ温花うぇんふぁの顔を見ることができた、それだけでいい」


 楊兎やんとぅ将軍は礼を1つすると、静かに門を閉める。

 

 温花うぇんふぁお嬢様は力が抜けたようにその場に座った。


 陈莉ちぇんりぃ「お嬢様大丈夫です……か……」

 温花うぇんふぁ「よかったぁ――。憧れの生活を手に入れたはずなのに……欲が止まらない……どうしたらいいの……」


 温花うぇんふぁお嬢様の欲とは?

 

 皇帝陛下や将軍様と結ばれることではないの?とても光栄なことなのはず。

 

 楊兎やんとぅ将軍を私も初めて見たけどとても綺麗なお方だったのに。

 もし、このことが噂になれば温花うぇんふぁお嬢様が楊兎やんとぅ将軍に拒否されたなんて屈辱的な事件だと言うのに。

 

 それなのに温花うぇんふぁお嬢様は楊兎やんとぅ将軍が安心してしまった様子で客家けっかで静かに項垂れている。

 こんな時どのように声をかければいいのかわからない。

 温花うぇんふぁお嬢様はいつだって笑顔で一緒に過ごしてくれるのに。

 

 陈莉ちぇんりぃ「……お嬢様、夜の風は冷えます」

 温花うぇんふぁ「陈莉、一緒にお茶を飲んで寝よう。虫の音も心地がいいし」


 温花うぇんふぁお嬢様は髪飾りを次々と引き抜いていく。

 お嬢様の欲とは何なのか。わからない。

 この風景を楽しもうとするお嬢様のどこに欲があるというのか。

 

 楊兎やんとぅ将軍もどうして屋敷に足を運んだのに、温花うぇんふぁお嬢様と話もせずに行ってしまうの?

 皇帝陛下の王令に楊兎やんとぅ将軍が背いたことにならないの?

 私にはわからない――。


 ”ずっとこの衣に身を包んでしまって消えない、痒い思い。

 だめ。

 そう思っているのに、消えない。


 分かってる――。

 

 辛い思いをすること分かってるから、この気持ちを無かったことにする。

 これ以上あの人に迷惑をかけるわけにいかないから。

 あの人はあたしのような重たい気持ちを抱えているわけでない。


 分かってる――。


 この痒さから逃げるため、王令はちょうど良かったはずなのに。

 あれほど綺麗なものを見ても、心が向いている方向を変えてくれない。


 分かっているのに。

 どうすればいいの。


 分かっているのに。

 楊兎やんとぅ将軍がこの屋敷に入らなかったこと、安心してしまった――”

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ