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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

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16/130

正体


 温花うぇんふぁお嬢様の言動に私は恐れ慄いて体が震える。

 

 本当に気がついていないのか――。

 私はこの国で1番権力を持つ人物から席を外すように指示され、その場を離れるしかなかった。


 下級妃の中の一番下の妃と言っても過言ではない今の温花お嬢様とこのお方が後宮内ですぐ出会えることもとんでもない運の持ち主だとは思う。

 今こうやって陛下がいることも不思議だけど……。


 夜の刻になっていないこの時間に、1人の妃をご所望される――。

 温花(うぇんふぁ)お嬢様にあのお方の手が伸びるようなことになれば、この華国(ふぁこく)で天地がひっくり返ってしまう――。


 もし陛下がここへ足を運んでもらえなくなることは温花(うぇんふぁ)お嬢様にとっては命さえも危うい――。

 

 ――このチャンスを侍女の私がお手伝いしなければ。

 

 温花うぇんふぁお嬢様は他のお妃様たちとは違う。

 とてもお優しい人だから。

 

 ソワソワと部屋の中を回ることしか今の私にできることはなかった。


「――変人の侍女」


 扉の外から呼び止められる声の主は――。

 慌てて部屋の外に飛び出る。


 陈莉(ちぇんりぃ)「はいっ!」

「――お前は何を知っている」

 陈莉(ちぇんりぃ)「……温花(うぇんふぁ)お嬢様の手紙の宛先のことでしょうか……?」

「まぁ、良い――。宛先は誰だ」

 陈莉(ちぇんりぃ)「あ……あっ……あの……、桜の木を植えてくださった方へ感謝の手紙を……」


 ここまで格上の方と話すことは人生で経験することは僅かのため、声が震え、上手く喋ることができない。


「桜の木を送った人物よりも先に……(笑)俺には手紙を書かず、書き方を習うなんてな。あの変人は策士なのか、ただの変人なのかわからぬ女だな」


 ――そう、私もずっと温花(うぇんふぁ)お嬢様への違和感を捨てられない。

 誰よりも真っ直ぐに見えるのに、私では何を考えているのか見えない。


 目の前の人物に膝をついたまま、話すことへの許可をもらう。

 温花(うぇんふぁ)お嬢様は変人かもしれないけど、この方に見捨てられるようなことがあればこれから先危険すぎる……。

 温花うぇんふぁお嬢様は昇給するつもりないと仰っていたけど、少しだけでも温花(うぇんふぁ)お嬢様の魅力をお伝えしたい……っ。


 陈莉(ちぇんりぃ)「あの――私からお話をしても良いでしょうか……?」

「なんだ、話せ」


 手に力を込め、頭を下げたまま話を始める。


 陈莉ちぇんりぃ「ありがとうございます……。お嬢様は桜の木を見上げることなく、木の根を見ました。木の根を傷つけることなく運んできてくれた職人は素晴らしいと。本来私が目に停めないようなこと、お嬢様は見ていらっしゃいます。そして真っすぐな気持ちの持ち主でございます。私は他に見たことがありません……。そして苦手なことでも笑って受け入れてしまいます。……本当に名前のまま温かい花の温花うぇんふぁ様なのです……っ!」


 そんな温花様の心配ごとが止まらず言葉になっていたのか不安になる。

 目の前の人物は真剣な顔に変わっていく。

 

温花(うぇんふぁ)か……お面を被ることが得意なのだろう。その仮面を剝がしてみたくて仕方ないのだ。ここは後宮。色んなしたたかな女を何人も見てきた。でも、温花(うぇんふぁ)の欲が分からぬ。見えぬ」

 陈莉(ちぇんりぃ)「はい……私にも昇進はしないから、他に行くように言って来たので」

「そうか。そんなに皇帝と戯れるのが嫌であるのに後宮に入って来たのか」

 陈莉(ちぇんりぃ)「お嬢様の事情は私にもわかりかねますが……、あの方は引き留めておかないと消えてしまいそうなんです」

「同感だ。鯉の餌やりをしていたと思えば池に落ち、炭を踏んで転びそうな女が危なくて見ていられない……(笑)」


 そんな危なかっしい女が笑顔の仮面を被ってここに居続ける理由は、なんだ――。

 いつかこの墓場でまるで居なかったようにされるのであろう――。


 温花うぇんふぁ「――すごい、そう、そうこんなんだったけど、本物の炭って雰囲気出るね」

「何を書くつもりだ」

 温花うぇんふぁ「ありがとうって」


 屋敷に戻ると手紙ではなく絵を描いていた。


「こんな状態では字がうまくなるわけないだろう」

 温花うぇんふぁ「だって、綺麗な字が書けないんです」


 言われてみれば発音もどこかおかしく感じることがある。裕福で無い家庭で育っていればそんな女もいる。

 が、だいたい後宮へ入るために勉強、教育はされているはず。

 それに張宏ちゃんほんの試験を合格してここにいるのだろう?

 字が綺麗に書けない理由があるはずだ。


 温花うぇんふぁ「筆難しすぎる~」

「そんな姿勢で綺麗な字が書けると思っているのが間違いだ。……あの薬味の器のものはなんだったんだ」


 皇太后に渡して、今話題になっていることを問うと、驚くこともなく笑ってごまかそうとする。

 

 温花うぇんふぁ「やっぱりそれが知りたいんだよね~……(笑)全部書き終えてから教えましょう〜」

「それでは日が暮れるどころか、俺が年を取りすぎてしまう」

 温花うぇんふぁ「失礼ですよ(笑)」

「分かった。今回は代わりに俺がこの三枚の手紙を書いておく。その代わりに皇太后様へ送ったものが何なのか話すんだ」

 温花うぇんふぁ「だから、ハンドクリームなんです。信じてください」


 失礼なのはどちらか――(笑)

 温花うぇんふぁは皇太后様へ送ったものと同じものを取り出して、器を開けて手に塗り伸ばした。


 温花うぇんふぁ「いい匂いがするし、手の乾燥も防げる化粧品」

「でもなんでそんなものを温花うぇんふぁは持っているんだ」

 温花うぇんふぁ「んー、旅人なんです」

「どの地域で手に入れた」

 温花うぇんふぁ「そうですね~ん~」


 窓枠の横にはある棚に、大事そうに飾ってある小さな袋があった。

 温花うぇんふぁはなんと話せばいいのかわからない様子でその袋を見て困っている。

 香袋にしては質素な包みだな。

 いや、薬袋か?


 「これは?」

 温花うぇんふぁ「薬です!(笑)」

「何の薬だ」

 温花うぇんふぁ「元気になるための薬です」


 あの袋は医学館のものだった。そういえば温花が後宮に入るのを推薦したのも医学館のものだったとか?


「医学館か……」

 温花うぇんふぁ「あたしって頭悪いんです。人の命預かるなんて重要なことできない……皇帝陛下って人一人だけでなく、国ですもんね。すごいですよね。あたしはあたし一人で精一杯なのに」


 温花うぇんふぁは急に体制を整えて、スッと目の前で跪いた――。

 なんだ――?


 温花うぇんふぁ「……皇太后様ってお母様ですもんね。心配になりますよね。すいません。変なものを送ってしまって。陛下が判断するためにここへ来たんですよね。お願いします。陈莉ちぇんりぃは今回のこと全く関係がありませんので別のお嬢様のところに――」


 温花うぇんふぁは深々頭を下げる――。

 

 いつから気がついていた?!

 気がついていてあの態度だったのか?!

 何が目的だ?!

 皇太后と、朕を敵に回すことが恐ろしくなったか?


 驚きと呆れのような感情が溢れてくる(笑)

 考えなければいけないことが多すぎる。


 まさかの温花うぇんふぁの行動にこちらが困惑してしまう。


「はははっ!全部知っていたのか!(笑)」

 温花うぇんふぁ「すいません。陈莉ちぇんりぃは本当に関係がないんです。ただ一人でゆっくり過ごすことができればいんです。誰かの命の責任をあたしが持つなんてできません」


 そうかそれで急に皇帝、国はすごいという話になったのか。

 侍女陈莉ちぇんりぃを庇うつもりか。

 

 張宏ちぇんほんから聞いていたが、本当だと?(笑)まさか墓場に1人で暮らしたいと思っているなど。

 よくわからん女だ。

 妃を望んだ人物が侍女の数で自分の力を見せつける、一人の侍女さえも手放したいなどそんなことを望んだ人物など今までいなかった。

 

 その言葉を聞いた侍女は慌てて温花うぇんふぁにしがみついた。


 陈莉ちぇんりぃ「お嬢様!私はこのお屋敷から離れるつもりはありませんよ」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃ……」

 陈莉ちぇんりぃ「お嬢様がこの世に執着していなくて、私は怖いのです!怖いもの知らずなのかもしれませんが、なんでも突っ込んでしまうお嬢様が、でも戻ってこないような……陈莉ちぇんりぃはここで生きています!お嬢様もここで生きること考えてもらえませんか!」

 「自由奔放な家主を持つと大変だな」

 温花うぇんふぁ「ずっと言っているでしょう?命の責任を持てないと」

 

 温花うぇんふぁは急に顔に影を落とした。

 なんだ、この真っ暗で触れてはいけない黒は――。

 

 まさか変人がこのような顔をすると思っておらず、こちらも固まる。

 侍女の命を預かることが怖いのか?

 妃ならば侍女を使って自分の生活を豊かにすることが当たり前だろう。思うままにすれば良いことを。

 

 そうだ。それならば――。

 命の責任を誰かに持ってもらうのが温花うぇんふぁにとって救いなのでは?

 

「分かった。温花うぇんふぁ提案をさせてもらう」


 墓場の変人の名前が自然と和らぐ。


 朕が皇帝だと分かった上でこの提案を受けぬことは大罪「逆命」だ。

 侍女も、この墓場の変人のどちらも救うことができる名案なのだから、受け入れる他ないだろう――。

 


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