白い煙
山源「白蕾様!こんなところに!探しましたよ!――華珩様も行方不明で!」
白蕾「華珩様、また課題から逃げたのね――(笑)」
華珩様はあの墓場の屋敷の裏の森で会っていた。
もしかすればそこにいるかもしれない――。
息を少し大きく吸って吐き、肺の中が冷たくなる。
この刺激でさっきまでの自分と切り替える。
雪をはたいて歩き続ける。
あたしは桃妃「白蕾」だ――。
白蕾「少し見てきます」
山源「ようやく白蕾様を見つけたんです、また見失うわけには――」
白蕾「華珩様がなんともない確認をしたいのです」
山源はあたしと華珩様が一緒に居ると思っていた。
これだけ雪も降り積もり、こんな寒い場所に華珩様が隠れる?
囚われたの?もしそうだったとして、華有様の子どもを攫うなんて。
どんなご身分の方?何も考えずにここへきてしまった。
山源がこれだけ慌てているということは真剣に探して時間も経ってしまっているんだろう。
華珩様に何かないことを早く知って安心したい。
红京「――何があったんですか?この吹雪の中、森へ行くのは危険すぎます」
雪の中から息を切らして走って来たのは红京だった。
白蕾「――探し物に行くだけです」
红京「その探し物は桜妃として大切なものですか?」
白蕾「――一人の大切な友人を、です」
红京は慌てた様子から、一息ついて何故か試す様に質問をしてきた。
红京「その友人は森の中の鳥ですか?」
白蕾「いえ、森の中にいるはずがないのに、角の王様を捕まえる人です」
红京「――華珩様ですか」
白蕾「――ふっ(笑)貴方は貴方の仕事をしてくださいね」
红京「貴方を狙ってのことかもしれないんですよ?――いくつ命があれば満足なんですか、もう少し冷静に行動してください」
白蕾「8歳の友人のほうがどうにもできないことかもしれないので」
红京「だからと言って、貴方が行く必要ないでしょう?!」
红京は肩を持って、怒っている。
そう、この人が怒ってくれる時は守ってくれているとき。
本当はこの人に飛び込んでしまいたいのに。
雪の中に消えていいと思ってしまった気持ちも取り消さなければ。
今は華珩様の安全を確認しなければ。
あたしはこの今の気持ちには逆らえない――。
この体で突っ込んでいくことしか知らない。
焦れば焦るほど時間が経ってしまい時間がないかもしれないのに、と気分が落ち込む。
红京「わかりました。ただ俺も一緒に行くことが条件です」
白蕾「――ありがとう」
何の手掛かりもない。
山源たちが宮中を探しても見つからないのなら、と雪の降り積もる森の中を红京が先導し、雪をかき分け進む――。
あの背中をあたしは見て着いて行くしかできなかった。
红京「煙――?」
白蕾「火事でないといいけど」
红京「急ぎましょうか」
森の中で焚火なのか、SOSなのか、火事なのか――。
森の中にこのような小屋があることを知らなかった。
冷たい空気の中に石作りの小屋の煙突からは白い煙が出ている。
红京「誰かいるんでしょう。先に俺が入りますので、白蕾様はここでお待ちください」
白蕾「あなたは剣を持っているのですか?」
この小刀は何かあった時のため持っていた。
それを衣から出すと、红京は頭を抱えていた。
红京「こんな物騒なものを――。わかりました、これは俺が借ります」
強引に小刀を红京は奪い取り、入口に立つ。
この役目はあたしがしたかったのに。
红京には誰かを傷つけることを選ばなくていいようにしたかったのに――。
扉を開け、左右上下を红京は確認する。
红京「荷物置き場のようですが、どうして煙が。やはり火事でしょうか」
白蕾「こんなところに小屋、それにこの品は――」
北の地にあったはずの品。
白新から見せてもらった、あの一族の品に見える。
红京「これは?」
白蕾「――これは骨壺ね」
手を合わせる――。
白の一族、梦王朝の品に骨を入れ、華王朝の手柄としている骨壺。
壊すだけでなく、見せしめたい意思を感じる。
ここまでして、梦王朝が華王朝に恨みを買ったのか――。
こんな綺麗な品に――。
これを知ってしまったのは良くない。
白蕾「红京、ここに華珩様が居ないことを確認して早急に離れましょう」
ここにいることが華王朝の人物に見つかってしまえば――。
よそ者のあたしたちが真実に近づいてしまえば――。
真実――?
あれだけ現代に帰れる方法が花街で掴めなかった理由は?
あれだけ優秀な李明様が未だに品にたどり着けていない理由は――?
大きな力で隠しているとしか――。
白蕾「――红京!貴方はここへ居てはだめっ!早く医学館にっ――」
振り返ると红京は真顔で奥のほうへと押し込み、口を押えた――。
红京「――誰か外に居ます、静かに……」
红京は力いっぱいに体を押し込んで、大きな体であたしを隠し続けた――。
もう危険すぎることを知ってしまったことからなのか、これだけ近づいて耳元で呟かれていることに、心臓が痛いのか分からなくて。
ただ言われるがまま身を小さくするしかなかった――。




