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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
白蕾【桜妃編】

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重い腕輪

 この世に来ることを望んだ。

 後宮でゆったりと過ごすはずだった。

 

 だけど静かに過ごすことあたしにはできなかった。

 だから皇太后様に目をつけられた。

 妃で居続けることが、侍女の陈莉を守り続けることなのにあたしにはできなかった。

 命の責任の重さに耐えられなかった。

 

 その現実から逃げるために今度は皇帝陛下の侍女になった。

 現代から逃げたあたしはまた逃げた。

 

 誰かのためだと言ってまた逃げて下庭に。

 もう逃げる場所がないのだと悟った。

 だから強がって花街の妓女として生きていくしかなかった。

 

 「红京ほんじんを現代に返してあげたい」なんて大層な理由をつけて逃げ回った。

 

 今度は大きな柵を準備してもらってその中に自ら入り込んだ。

 ここなら守ってもらえるから、もう逃げなくていいと。


 そんな逃げしか知らないあたしは飼い主に捨てられまいと、純情な女として生きる。

 もうあの人の1番で居続けていないとだめだと。

 誰にも負けてはいけない、と。


 強くならないといけなくて、それが嫌だった。

 もうずっとその繰り返しだ。

 何度同じようなことを繰り返せばあたしは分かるのだろうか。


 いつも逃げ道を探してる――。


 どうしようもないこの気持ちを向けることができるのは、この人だけだった――。


 冷たい雪を触っても、どれだけ雪を被っても、この人となら笑えること本当はずっと分かっているのに――。


 だけど今日ここで、この人に会ってしまって気がついてしまった。

 あたしは逃げたかったんじゃない。

 逃げるしかなかったんじゃない。

 

 誰かに頼りたかった。

 強がらなくていいと。

 自分でいいと誰かに言ってほしかった。

 

 だから必要以上に頑張って勝手に疲れて、その高い理想を勝手に抱かせてあたしがお面を被って勝手に疲れ果てたんだ。


 あぁ――。


 だめだ、この人がいたらあたしは強くいられないと思った。

 寄りかかりたい。

 でもこの人をあたしの毒や棘を取るための人にしてはいけないのに――。


 もう雪の中走れない――(笑)

 もう寒くて手がかじかんで雪が掴めない(笑)


 髪もボサボサで、唇の紅は取れてカサカサになって。

 ほっぺは林檎のような赤。


 目の前にいるこの人も全く同じだった。

 もう体中の力が抜けて、笑いが耐えられない――(笑)


 温花うぇんふぁ「――ふっふっ……あははっ!红京ほんじんまだまだじゃんっ!」

 红京ほんじん温花うぇんふぁは雪合戦には向いてないね、全然届いてない」


 たくさんの雪玉を抱えた红京ほんじんは両手を勢いよく上に伸ばしてボトボトと周りに雪が落ちていく。

 そしてあたしの顔にも落ちて来た――。


 温花うぇんふぁ「いったいっ……!」

 红京ほんじん「これくらい避けてください」

 温花うぇんふぁ「だって、動けないんだもんっ!(笑)」


 红京ほんじんは呆れた顔で雪を落としてくる。

 あたしの今の顔は多分、酷くて見せることはできないから――(笑)


 雪の奥から「白蕾ふぁんれい様ー!どちらにいらっしゃいますか?!」


 温花うぇんふぁ「あっ――やばい……あの声は山源しゃんやんだ……」

 红京ほんじん「――風邪を引きます、まず羽織を着てください」


 红京ほんじんは白の羽織を拾い、乱れた髪と髪飾りを付けなおしてくれて――。

 「この人本当に存在したんだな」自分の感想の意味が分からない。

 じっと红京ほんじんにされるがまま格好を整えた。


 帰りたくない――。


 红京ほんじんは何も喋らず、ただ宮中の医者見習いとしてそこに居る。

 何度この人に手を伸ばそうとしても、その勇気だけが出てこない。

 

 なんとか言ってよ。

 もう一緒に現代へ帰ろうよ――。


 白蕾ふぁんれい红京ほんじん、またね」


 またなんてないかもしれない。

 もう会えないかもしれない。


 あたしは皇帝陛下の女として帰らなくてはいけない――。

 あたしには桜妃なんて特別な位は――。

 

 山源しゃんやん「――白蕾ふぁんれい様っ、どうしてこのような場所に」

 白蕾ふぁんれい山源しゃんやん、ごめんなさい。この寒いときに探させて。桜館に迷い込んだ鳥を森へ返していたんです――」


 俺は、森に住む鳥ですか――。

 白の羽織は雪の中に消えて行く。

 

 俺はお転婆娘の落とし物を拾い集め、飾り付る。

 高価な宝石が散りばめられた髪飾り、真っ白でキメの細かく暖かそうな羽織。

 

 それに――。


 白い雪の中でも輝いている鳳凰の腕輪――。

 鳳凰の周りに桜の装飾が丁寧に施されており、これがこの時代の最高級の贈り物であることが分かる。

 これはあの人が「桜妃」である証拠のもの。


 こんな大切なものと落としてしまうなんて。

 どれほどお転婆なんですか――(笑)

 どうしてそんなにレールを外れて行ってしまうんですか――(笑)


 これだけはあの人に渡せなかった――。


 これをあの人に渡してしまえば、温花うぇんふぁでないと俺が言ってしまうような気がして――。

 今さっきまで騒がしかったこの場所はまた雪が積もりまるで何もなかったかのようだ。


 俺はこの重い腕輪をあの人に返すことができなかった。

 これを俺が持っていることが誰かが知ってしまえば間違いなく「死罪」となる。

 そしてあの人もまた桜妃が男と逢引していたこととなり、どうなるのか――。

 

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