退屈しのぎ
――墓場の下級妃が姿を消した。谢琦と淑妃魏峰は笑っていた。
下庭や、花街の噂話を耳にする。
剣を持った女が剣舞をして荒稼ぎをしている、と。
魏峰「――飽きない女だな(笑)」
谢琦「名前が変わっても、中身があれだからねー(笑)」
上級妃の実質2位の淑妃魏峰。
華国の中で一番髪が長く、艶やか。
赤い紅に負けない綺麗な顔立ち、孔雀衣が肩にかけられ、白の羽織に映える。
金の扇子を持ち合わせ、金の額飾りが揺れる――。
中世的で酒や煙草を好むが上級妃になったため禁止されている。
後宮へ入宮したのは皇太后のことが信じられず、自分の目でどのようなことが宮中、後宮で起きているか見るため。
才色兼備。
とにかく強い体を持ち合わせており病にかかったこともなく、毒を盛られてもなんだこれは?と味が違うことだけを指摘して難なく過ごしてしまう。
皇太后推薦の李珠江とは折が悪い。
何でも尽くせば良いと思っていることを憐れんだような目で見る。
2人は数少ない白蕾=温花であることを知っている人物だった。
二人の暇つぶしは宮中での事件だ。
魏峰「下級妃に侍女、妓女――今度は桜妃か(笑)。だが、駒が足りんな――」
魏峰の言う「駒」とは――。
それに俺がなればいい――。
「梟がまた現れたか――」
宮中の問題を音もなく解決する謎多き「梟」
梟になれば音なく情報収集することができ、退屈しのぎには丁度いい――。
魏峰「あの医者が冷宮か。妃に口付けなどする頭だとは思えんが」
谢琦「あれは人命救助って感じだったよ!でも最後さっ――!」
魏峰「あれを失うのは惜しい」
谢琦「わかった!任せて!」
冬の冷宮なんて生きてられるような場所じゃないなー。
寒すぎる。
積まれた石は冷たく、体の芯から冷えていく。
谢琦「ねえ、死ぬの?」
緑の衣も色が抜け、茶色に染まっている人物の頬は細くなり、肌は色を失い、目には光がない。
红京「――今度は何して遊んでいるんですか」
谢琦「梟っ!俺にお似合いだと思わない?!こっそり動くんだ。そして事件を解決。気持ちがいいもんだね〜」
红京「あなたって人は」
谢琦「面白いでしょ?(笑)――あ、おにぎりがおっこっちゃった!」
木の葉に包んだおにぎり。
冷宮に転がりあの医者見習いの前へと。
红京「――こんなことして貴方は大丈夫なんですか。罪人に加担していることになりますよ」
谢琦「命を救ったのに?(笑)まぁ、最後のほうはだめだと俺も思ったけどさー!毒持ってる人の方が罪人でしょ?(笑)――それにそれは転がっただけだし!……後始末だけはしっかりしてねー!」
そして何回も冷宮に転がし続ける。
人間って意外と生きてしまんだよなー。
红京「――俺をどうしたいんですか。また退屈しのぎですか」
谢琦「うんっ!そうだよ!……!そろそろ助けに来てくれる人がいるよ!よかったね!」
その人物は皇太后の妹、華有――。
よほどこの医者見習いが気に入ったみたいだね。
お調べなんて狂った遊びに終止符を打つのがまさかこんな平凡な男だとは思わなかったけど――(笑)
红京「――華有様、嬉しいお言葉ありがとうございます。红京、貴方の名前でここを出るわけにはいきませんので」
華有「どうして。私がいいと言っているの。姉だって許してくれるわ」
红京「俺の刑については皇帝陛下の命でここにいます。例え皇太后様がお許ししてくださったとしても、この国の皇帝陛下は華辉様ですので――」
あぁ、面白い――(笑)
このまま出ちゃえばいいのに(笑)
華有様のわがままはこれまでも見逃されてきた。
皇太后の味方が増えていくだけだから。
これじゃ、華有様だけでなくて皇太后様も敵に回しちゃったようなもんだね――(笑)
華有様派の兵は多いぞー。
それは傷みつけられても仕方ないなー。
谢琦「――あーあ……華有様の言うこと聞いて出ておけば、ここまで痛い思いしなくて済んだのにー」
红京「華辉様とこれ以上、敵対する理由を作らない方が懸命でしょう」
谢琦「えー、そんな風には見えないけどなー。まるで華有様の男になる気がないみたいだったけどー」
红京「では、そのようにしてもらって構いません」
谢琦「じゃあ、誰が好きなの?!俺気になるな〜」
红京「はぁ、今日は疲れたのでまた今度で」
谢琦「皇帝陛下とこれ以上、敵対したくないじゃ無かったの〜?」
红京「――はい、そうです。だから貴方にも言うつもりはありません」
谢琦「ふーん。今日は華有様へ反抗記念日に肉持ってきたよ!――で、なんであの人は後宮から消えたの?帳簿まで消えてたけど。やっぱり墓場の妃ってそうなる運命なのかな〜」
肉を投げ入れると男はかぶり付いて、まるでこっちの話は聞いてない。
あー可哀想に。
本当にお腹空いてたんだな。
本当にこの男も理由は知らないみたいだな。
探るのも飽きてきたなー。
红京「元いた場所へ帰っただけでしょう――。ここにいるための理由なんてありませんから」
谢琦「――それってどこなの?」
红京「そうですね、あの星の向こう側といったところですか」
谢琦「そっ――。帰れるのならそれがいいよね!そっか!」
次に果物を投げ入れる。
あの星の向こうかー。
にしては随分近くで剣舞してるみたいだね――(笑)
翼を捥がれてこんなところにいるから分かんないのか――。
魏峰様への土産話が欲しいんだけどな。




