高光の金階
晴晴「――それでその剣を持ってあいつは行ったのか」
その先は「宮中」に戻ったのか。
「白」の名は狙われる理由があり、剣を皇太后に返すため。
やはり――。
に続く言葉は「毒」だ。
後宮の毒もあいつは持って行った。
このスープ皿の親友のことも、白新のことも――。
白新「――晴晴様を巻き込まないため、急いだのでしょうね」
白新はまだ白蕾が明日もこの小葉館で剣舞を舞うつもりだった、白の衣と、髪飾りが置かれた寝台に目をやった。
女将小葉の言う、砕簪よりも酷いところ。
それが宮中の「墓場」。
身請けしたのは皇太后か――。それとも皇帝か――。
どれだけあの一人の少女の命が欲しいのか。
知りすぎたのか――。
背負いすぎたのか――。
あいつは「普通」に過ごせないのか――。
晴晴「――あいつが選んだ、お前に『白』を捨てるよう言ったんだろ。その皿はここへ置いていけ」
白新「ありがとうございます。俺は杨鈴様を連れて離れたところで暮らすことになります。――本当に、お世話になりました」
あいつに関わって、変な関わりも増えた。
変な荷物も増えた。
小葉「――晴晴、李明が呼んでるよ」
晴晴「はぁ。どいつもこいつも俺に聞いてもしらねえぞ……」
小葉「あんたしか白蕾の落簪を取ってないんだ、責任くらい持ちな」
林林「――晴晴に黙っててごめん!ごめんーって!」
晴晴「ふっ、どうせあいつに金でももらったんだろ。その口拭いて出直せ(笑)」
林林は慌てて自分の口を衣の裾で拭くと、焦ったように汚れを落とす。
晴晴「俺は男と飲むために妓楼に来てるんじゃない」
小葉「高光の金階だよ。妓女もいる」
晴晴「はいはい――」
金階で李明と座る高光は以前よりも凛とした姿でそこに居る。
桃色の色味に頼ることなく、自分の色にしている。
こいつも変わったか――。
李明「ふっ、お気に入りの妓女が先に身請けされた晴晴様待ってましたよ」
晴晴「俺は身請けするつもりない」
李明「夜王と言われた男は一人くらい身請けしたほうが品位が上がるんじゃない?」
晴晴「それで、本題はなんだ」
李明「――あいつの身請け先聞いたか」
晴晴「それをお前から聞いてどうする」
李明「俺は宮中、代々将軍家の息子だぞ〜?いいのか?」
晴晴「相手はでかい相手だろ」
李明の酒を奪って飲む。
李明「さすが夜王(笑)」
晴晴「お前もあいつを利用するつもりか」
李明「目的が一緒なだけだろ?」
こいつにとってあいつが宮中に入ることで利はある。
下庭、花街の情報を俺と高光から得つつ、宮中の深いところで情報をあいつから得る。
それだけでない――。
あいつを花街の妓楼「小葉館」からお偉いさんが見受けしたと慣れば高光を正式に身請けすることができる。
高光が李明という男に惚れていると思っていたが、李明のほうが重い。
「この世にこんな綺麗な人がいるなんてなー」と李明は本気か、冗談かわからない顔で笑ってこの小葉館に入り落簪を高光へと。
李家は華国で代々将軍家として支えてきた一家の付き合いの中で小葉館の香膳にやってきていた。
その時から高光に夢中だったが、今は本気になっていることは見ていてわかる。
その李家に養子として入った李明が花街の妓女を金銭的に手助けすることなど前例が無い。
最近は大きな金がこの小葉館に入ってきている。
李家の信用問題は大きなもののはずだが、それだけ李明も身を削っている。
李家からの金の動きがあることで下庭、花街、祝街の均衡を変える可能性も出てくる。
情報、高光を手に入れることができる。
まさに一石二鳥だった――。
李明「あいつの、師は……あの楊兎将軍、か?(笑)」
彼の脳裏に、幾つもの報告が浮かぶ。
楊兎将軍は八歳から華国に仕え、一時期「婚約の噂」が立った相手は下級妃であったこと。
しかしその話は、唐突に消えた。
あの墓場の変人が現れた時期、居なくなった時期――。
あの女の思い人は楊兎将軍だと思っていたが、それはどうなのか――?
皇帝の妃になった女が将軍の嫁になることを望むか?
だとしてもあの剣は楊兎将軍だよな――(笑)
分からん(笑)
墓場の変人と呼ばれた妃が皇太后に妙な薬品?化粧品?を贈ったことで医学館が大騒動になったこともあったな――。
皇帝華辉様は世渡りの玉のこと知っているのか?
むしろあの女は皇帝華辉から世渡りの玉を奪おうとしている構図か?
墓場の変人と呼ばれた下級妃にはお付きの医者も屋敷に出入りしていた、と。
まさか、相手は――?(笑)
宮中の人間関係は狭く複雑だ――(笑)
あの白蕾と名乗った妓女は――。
李明「――墓場の変人」
晴晴の盃に酒を注ぐ、と黙って腰掛ける。
ふっ――。
やっぱり知りたいんだろ(笑)
李明「医学館、红京――。あいつの本当の名前は――」
晴晴「李明それ以上は喋るな」
酒はもう注ぐなと、盃を上げ俺を見る。
知りたいのか、知りたく無いのか――(笑)
李明「かわいそうなやつだな、思い人がいるやつを本気で好きになるなんてな」
晴晴「そんなこと最初から知ってる」
高光「――待ってください!晴晴様、どういうことですか!白蕾の思い人は晴晴様でないのですか」
高光は分かってなかったか――(笑)
笑いが止まらず酒を吹き出しそうになる。
晴晴はこいつ馬鹿だ、と冷たい目で相変わらず睨む。
高光「納得できるのですか!ずっと晴晴様を利用していたことになるんですよ?!」
晴晴「俺もあいつを利用した。妓女と客の関係はそんなもんだろ」
高光「――」
晴晴「金で解決できる関係。それであいつは身請けされた。それだけだ――」
それだけのはず――。
それだけにしては重い荷物を持ってあの宮中に戻ってしまった、のか――。




