薬屋の女将陈雪
本日12:00にも投稿します!
よろしくお願いします!
はな
今度は男について調べるように晴晴に言われ、調査を始めた。
宮廷勤めの男らしいが花街ではそんな男の名前は聞いたことがない。
下庭に来るようなことがあるのか?買い物なら祝街で済ませるだろ――。
下庭の男であれば私も詳しいけど――。
店の人たちに「红京という男を知らないか」と聞いて回るしかない。
祝街に行くことができればもっと早く情報を得ることができるはずだけど。
薬屋の女将が忙しそうに動き回ったまま返事をした。
まさかその言葉が返ってくるとは思わず店の中に身を乗り出した。
陈雪「――红京?红京なら知ってるよ」
林林「おばちゃん!知ってるのか?!」
陈雪「知ってるよー。あの子はいい子だよ、よくここへ買い物にくるよ」
そんな薬屋の女将の腕はアザ?だらけだった。
林林「おばちゃん、その腕どうしたの……?」
陈雪「この街に来る前にね、火傷をしちゃって」
林林「火傷……?」
その火傷の跡は、首や、顔。
いや――多分これ全身だ――。
陈雪「――墓場にいたのさ。だから焼かれてしまったの、さ」
林林「墓場?」
陈雪「そう、墓場」
林林「……下庭よりも酷いな……」
陈雪「そうだね、私はここが幸せだよ」
女将は店主のオヤジと楽しそうに仕事をしている。下庭にも幸せってあったんだ――。
晴晴が小葉館から帰った後、白蕾とお茶を飲むようになっていた。この女からも情報が欲しい――。
林林「白蕾、墓場って知ってるか?」
その一言が白蕾の動きを止める――。
林林「下庭のほうがその墓場よりも幸せだっていう人がいて――」
くるりと振り返り、嬉しそうに目を開いていた。
その表情の差に私も固まる。
林林「……どうしたんだ?」
白蕾「その方はどこにいるの?!」
まるで白蕾が子犬のように飛びかかる。
今まで鉄の顔面だと思っていた女から温かい花を咲かせたような――。
林林「下庭の薬屋さ。店の前にカエルの置物がある……」
白蕾「えっ――」
白蕾の笑顔は無邪気そのものだった。
ただ呆気に取られる。
強くて隙のない女だと思っていた人のイメージが……。
女将の火傷の跡の話をすると今度は黙り込んでしまった。
白蕾「どうしてもその方とお話がしたいの……林林、ここへ呼んでもらえるかしら……。晴晴様には全て内緒でお願い。これで美味しいもの食べて」
落ち着きを取り戻すとまた妓女白蕾の姿になっていた。
何を考えているのか、何が本当なのかこの人の横ではわからなくなる。
袋に入った金をどっさりと渡してくれた。これがあればしばらく美味しい飯が食べれるぞ――。
林林「わかった!」
そして薬屋の女将陈雪様を小葉館の屋根裏部屋に案内する――。
突然妓楼に呼ばれた陈雪様も困惑の様子だった――。
白蕾「――お久しぶりです!お元気でしたか?!あの時は助けてくださってありがとうございます!」
白蕾は薬屋の女将を見ると嬉しそうに駆け寄った。
そんな白蕾を見た薬屋の女将陈雪様も最初は驚いていたが大きく手を広げた。
私には訳がわからない――。
陈雪「まさかあなたが花の剣舞の子だなんて……!……あなたもあれから大丈夫だったの?私は元気よ!」
白蕾「……あれから……後宮で墓場に入りまして……」
墓場――?
後宮に墓場があるのか?
その瞬間、薬屋の女将の顔が曇った。
まさか白蕾もこの女将と同じところにいたのか……?
陈雪様は顔を真っ青にして白蕾の体を見た。
宮中に下庭よりも酷い場所があるのか――?
陈雪「あなた……体は大丈夫なの……?」
白蕾「はい、見ての通り元気ですよ。红京がいましたから」
その名は晴晴が私に情報を探るように言われた男の名前だった。
あ、晴晴――(笑)
この男に妬いて、本人には聞けず私に聞いたのか(笑)
陈雪「そう……よかった……。红京は元気だよ」
白蕾「そうですか……よかったです……」
陈雪「――これをあなたに渡したくて。剣舞を舞う妓女の子がこの剣を持っていれば皇太后様に届くんじゃないかって……」
これは――。
薬屋の女将が持つはずのない剣が包みの中から出てきた、皇帝にのみ許される鳳凰の模様があしらわれた剣。
陈雪「――これは前皇帝のものなの。ここに今は皇太后様の名前と、皇太后様の色の赤の宝石――」
白蕾「……こんな大層なものあたしが頂くわけには……!」
陈雪「そうね、とても大切なものだと思うわ。前皇帝から皇太后様への愛の品ですもの」
それから陈雪様は後宮で起こったことを白蕾に静かに話し続けた。
そしてこれを、あなたに持って欲しいから、と――。
陈雪様がこの剣を持っていたのは――。
墓場と呼ばれた屋敷には何らかの問題を抱えていた妃、戦地で居場所を失った女、子どもが過ごす場所だった、と。
当時の皇后様が屋敷にやってきたためこの剣を一時的に墓場の屋敷に隠していた。
当時の皇后様が屋敷に居座る人たちをよく思っておらず、そのまま屋敷を追われ、身ごと焼かれ川に投げ捨てられてしまったこと――。
でもこれだけは無くしてはいけない、焼かれてはいけないと体で握りしめていた――。
白蕾「――皇太后様にもやはり――」
やはり――?
なんなんだ?
剣を渡すか悩んだ薬屋の女将陈雪はその剣をまた包む。
それを白蕾は嬉しそうな顔で手を伸ばした。
陈雪「これ、あなたが持ってしまえば――」
白蕾「これは預かるだけです。大丈夫です。皇太后様にお伝えさせてください」
皇太后――?
この剣をどうするつもりなんだ――?




