表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
白蕾【花街編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/132

李明

 私ができることを他人の誰かができないなんて。努力してないなんて。

 あの花ができて私ができないことって。

 

 晴晴しんしん様のような男があの花を選ぶなんて。

 

 杨鈴やんりんだって変よ。身請け話はもっと上手く纏まる方向があったはず。

 孫凉(すんりゃん様を選んだことによって、まだ子どものような白新ふぁんしん様に身請けされた。

 もっと良い方がいらっしゃったのに――。


 私はここまで頑張って来たもの。

 自分の男はいい男でなくては。ここまで頑張って来た意味が無い。

 

 高光がぉふぁん「――今日は李明りみん様の日ですね」

 「はい」


 李明りみんとは高光がぉふぁんの上客の一人。

 高光がぉふぁんは自身の夜を複数の客で分けることがほとんどだが自分の気に入っている客については一夜を許すことがある。

 その一人が華国の代々将軍家を務める、李家。李春りしゅん、上級妃の李珠江りしゅこうの家柄の一人である。

 異様に整った所作と美しい発音で「本当に李家の人間か?」と噂されるが、街でも高位の人物たちに顔が利く。

 さすがの将軍家の男だけあり体つきは良く、軽そうに見える性格だが聡明で謎多き人物だ。


 後ろ髪を三つ編みで束ね爽快に金階じんじぇいの席に着くと、赤い瞳を艶のある髪から覗かせる――。


 李明りみん高光がぉふぁん、また客を増やしたらしいな〜。俺の枠を減らしたいのか?(笑)意地悪な女だ」

 高光がぉふぁん李明りみん様がいらしてくれないからでしょう?」

 李明りみん晴晴しんしんのこと追いかけたらしいじゃないか。文家に喧嘩まで売るとは、もっとうまくやるべきだろ(笑)」


 李明りみんは大きな体で高光を担いで部屋を進む。


 高光がぉふぁん「花街でこのようなことが起きてもすぐ違う事件が起こるから大丈夫ですよ」

 李明りみん「そうだな、強い女は好きだ――」


 ――あの花が小葉館にいれば思うように動かせない。

 晴晴しんしん様という後ろ盾も、香膳での人気も気にしていかなければならない。

 下庭、花街で大きな存在感を持っている晴晴しんしんでなく、祝街と宮中、国で大きな役割を果たしている李明りみん様もとても魅力的。

 どちらも取れることは間違い無いのだけど――。

 晴晴しんしん様は思うように動かせないことがわかってしまったし。

 李明りみん様についてあの花をこの小葉館に居られなくなる方法を考える方が私として利が多いわよね。

 

 晴晴しんしん様の大きな出資が小葉館にあるからあの花は大きな顔ができるけど、祝街や宮中からのお金の動きがあれば下庭の金なんて小さなもの――。


 高光がぉふぁん李明りみん様――」


 甘い匂いがする李明りみん様は目の前にいる。

 いいわ――。

 あの花と晴晴しんしん様、私と李明りみん様のどちらが勝つのか。

 

 杨鈴やんりんも身請けしてもらえなかった孫凉すんりゃん様では無く、迎えに来た白新ふぁんしん様を選んだ。

 より自分への愛が深い人物を選ぶことは当たり前よね。

 私は何度も李明りみん手を伸ばした――。


 李明りみん「――晴晴しんしんを寝とった女はどんな奴なんだ?」

 高光がぉふぁん李明りみん様まであの男のような女に興味があるのですか?」

 李明りみん「あぁ、晴晴しんしんの女は最近話題になってる剣舞の妓女か」

 高光がぉふぁん李明りみん様!どちらに行かれるのですか?!」

 李明りみん「香膳だ。高光がぉふぁんより顔がよほどいいのか?(笑)見物だ」

 高光がぉふぁん「あの女は仮面をつけておりますので、顔を見ることはできませんよ」

 李明りみん「ますます興味が湧く話だな――(笑)」


 と、李明りみんは衣を整えて爽快に部屋を後にした。

 李明りみん様も負けず嫌いなのよ。

 やはり私と合う。さすが将軍家の方ね――。


 静かな部屋とは打って変わって、香膳は楽器の音や、歌声、料理の運ばれる音、客の喋り声がしてとても騒がしい。

 お香の匂い、酒の匂い、料理の匂いが混じり合った部屋は息をするこの空間を割くように李明りみんは綺麗な姿勢のまま進んでいく。


 「李明様はこちらの席へ――」


 まさか高光の部屋から香膳に戻ってくるとは思いもしなかっただろう。

 装いを整えて高光は機嫌良さそうに隣に座った。


 高光がぉふぁん「本当にあの女を見るつもりなのね(笑)」

 李明りみん「あぁ、面白いだろ」


 金階じんじぇい纱帘されん奥にいる晴晴しんしんの横には質素な白な衣に身を包んだ妓女が座って何やら話し込んでいた。

 晴晴しんしんは地味な女が好みなのか?子妓上がりか?それとも買い上げた奴隷の女か?


 高光がぉふぁんはその女だと目配せをする。

 まさかあれがあの女なのか。

 顔はよく見えないが晴晴しんしんに何か渡したようだった。あれは――。


 騒がしい香膳の場に、チリンと高い音がすり抜けて聞こえてくる――。


 李明りみん風鈴ふうりん――?」

 高光がぉふぁん李明りみん様どうなさったのですか?」


 あの物はこの国にあるはずがない――。

 なぜあの女は海の向こう側の風鈴ふうりんを手に持っているのか――。

 李明りみんは勢いのまま晴晴しんしん金階じんじぇいへと入り込んでいた。


 晴晴しんしん「なんだ、規則違反だろ。ここは俺の金階じんじぇいだが」

 李明りみん「――風鈴、どこで手に入れた」


 その瞬間、白い衣の妓女は勢いよく立ち上がり、座っていた椅子が倒れる――。

 しばらく妓女は李明りみんを見つめ、動揺をおさえている様子だった。


 白蕾ふぁんれい「――これは私が作ったものです。晴晴しんしん様へどのような絵を描くのが良いか相談しておりました。――ど……どうして、この物の名前を存じ上げているのです?」


 驚きの出来事で声が震える――。

 晴晴しんしんはこ白蕾ふぁんれいの何かに通じる物であることを理解し、風鈴を片手に白蕾ふぁんれいの横に立った。


 李明りみん「――俺は……李家の養子だ。俺はニホンから来た――」


 その言葉を聞くと完全に力が抜け、その場に座り込んでしまった。


 白蕾ふぁんれい「――どんぶらこ……と流れてくるものをご存知ですか」


 李明りみんを試すように、静かに仮面を取り見上げる――。


 晴晴しんしん「なんだそれ」

 李明りみん「知らん」


 白蕾ふぁんれい「――そうですよね」


 自分に言い聞かせるように白蕾ふぁんれいは倒れた椅子を元に戻し、静かに立ち上がる。


 そうだよ――。

 簡単に欲しい情報今までだって手に入らなかったじゃん――。

 

 ニホンからってこの人は言った。だけどあたしの知っている日本じゃない。

 流れてくるのは「桃」でしょう?

 いや、この人の今の時代に桃太郎の話がないのかもしれない。


 そっか――。

 红京ほんじんがこの華国へ初めて来た時に言っていた。

「自分たちが知っている歴史で華国という大国は知らない」と。

 あたしたちの知っている地球ではなくて、ここは時間軸の違う何か?

 やっぱりここは夢の中なのかな――。

 

 李明りみん「――朝と夜の玉。これを探すためこの大陸に来た」


 気がついた時にはその李明りみんと呼ばれる人物の両腕を掴んでいた――。


 白蕾ふぁんれい「――それは、あの世に渡るものですか……」

 

 小さく李明りみんに問う――。

 その瞬間、李明りみん白蕾ふぁんれいの両肩を持って体を揺らす――。


 李明りみん「お前は2つとも見たことがあったのか?!使ったことがあるのか?!」

 白蕾ふぁんれい「それが……わからないんです。どうしてこの世に来たのか……あの世に帰れたのか……」

 李明りみん「あったはずだ!玉が!あの貴重な玉をどこで手に入れた?!」


 白蕾ふぁんれいは何もわからないと頭の中が働かない様子だ。

 晴晴しんしんは目の前でとんでもないことが起きたと、酒を飲む手を止める――。


 白蕾ふぁんれい「……玉なの……?それがあればいいの?!」

 李明りみん「そんな簡単に手に入るはずがない!」

 白蕾ふぁんれい「でもあたしはここへ来た!それに戻って来たの――!」

 李明りみん「何も知らずに使ったのか――!」


 2人は取り乱した様子で落ち着けない。


 晴晴しんしん「――ここは香膳だぞ、酒を飲め」

 白蕾ふぁんれい晴晴しんしん様……す……すいません……」

 李明りみん晴晴しんしんは何も知らないのか」

 白蕾ふぁんれい晴晴しんしん様もあたしを手伝っていてくださいました」

 李明りみん晴晴しんしんも知らないのか。宮中も隠しているというより知らない様子だしな……」

 白蕾ふぁんれい「……李明りみん様もその玉を求めて宮中へ……?」

 李明りみん「……それでお前も情報が欲しくて宮中にいたのか……花街では限界があるだろう。ここは夢世だ、真実の情報など手に入らない」

 白蕾ふぁんれい「いいえ……李明りみん様とお会いすることができました……!もうそれだけで十分です……」


 白蕾は李明に深々と頭を下げたまま動けなくなっていた。

 床にはポタポタと涙の跡がついていく――。

 少しの情報と、1人の出会いによって白蕾はここまでやってきたことが報われたのだ。


 晴晴しんしん「――白蕾ふぁんれい、帰れるとは決まってないぞ?」

 白蕾ふぁんれい「――良いです。答えがないのかと思っていたものに、答えがあることを知れたのでそれだけで十分なんです……」


 高光がぉふぁん李明りみん様!戻ってきてくださいよ!天妓三姫を香膳で1人にするなんて!」


 怒った高光がぉふぁん纱帘されんを突き破って入ってきた。


 李明りみん「ごめん、ごめん。今戻る――」


 今の白蕾ふぁんれいには周りのことが入ってこない。

 涙を流さぬようにと体を振るわせるしかできなかった――。


 晴晴しんしん「これもあの世のものか――」

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ