約束
晴晴「――約束は果たす」
いつもの屋根裏部屋で今日も晴晴と農業の進捗状況、下庭の人たちの様子、あの世のこと、あの世へ渡る方法を話すものだと思っていた。
晴晴はそう言うと傘を被った男?を部屋に招き入れた。
誰――?
驚きのあまり声が出せずにいると、晴晴は大きくため息を吐く――。
晴晴「お前が杨鈴のこと解決したいと言っただろ」
白蕾「それはそうですが――このお方は――?」
「――初めまして、白新と申します。白蕾様、お会いできて光栄です」
白蕾「はい、初めまして――」
その傘を被った人は肌が白く、まるで少女のようだった。
が、声は少年。
この人は――?
晴晴「白蕾、お前の身元をこいつに明かせ」
白蕾「そ、そんなことできませんっ!」
晴晴様は顎でやれ、とだけ指示を出し少し面白そうに笑っている。
今度は何をしようとしているのか――。
現代から来たことを知っているはずなのに、初めて会う人にそのようなこと言えるはずない――。
白新「あなたの家族は、どちらですか」
白蕾「――あたし親は……家族は……」
心から軽蔑、拒絶している――。
親は――。
家族は――。
どこなんだろう。
ずっと家族のことが嫌いだった。
あたしのことを奴隷のように使い、怒りをぶつける――。
その様子に無関心な兄妹たち。
どこにいるんだろう。
あたしの人生にはもう、いない。
忘れているわけじゃない。
でもなんだか思い出せなくなっていた――。
白新「すいません、話したくないことありますよね。それでは俺からお話します」
そう言って白新は頭の傘を取り、髪を布で隠していたのか、窓の外から入ってくる太陽の光に銀色の髪が輝く。
晴晴はその髪色を見たのは初めてだったようで珍しく目を丸くして白新の髪色を見ていた。
白蕾「まさか――」
白新「この髪の意味が白蕾様にはわかっていただけるのですね」
少年は少し安心した様子で。短い銀色の髪を後ろで束ねた。
銀色の髪で思い浮かぶのは楊兎将軍――。
そして楊兎将軍の過去は――。
白蕾「――白新様、よくここまで生きてくださって……」
この髪の色の人達が生活するには厳しい環境で村を作るか、攻め込まれ、奴隷になる――。
楊兎将軍は李春将軍に救われたため華国の将軍になることが許された人物。将軍となったが捨て駒に見られている、強き奴隷のようなものだ――。
白新様がここまで生き抜いてくるためにどれだけ大変な思いをしたのか想像をしただけで心が苦しくなって声が震える。
晴晴「まさか白蕾、血族ってことはないんだろ――?」
晴晴様もまさかの出来事に驚いている。
まさかあの世から来た人間が、白新様っと血族かもしれないなんて――(笑)
白蕾「白新様は血族を探して、この白蕾の名を聞きつけてここまで来てくださったんですよね――。白新様、すいません。私はあなたの血族ではありません。本当の名前は置いてきてしまったので、これは今の名というだけです――」
白新「そうでしたか――。ではどうして銀髪の意味をご存知なのですか?」
白蕾「――親友があなたと同じなんです。とても強くて優しい人です。きっとあなたが生きていることを知れば泣いて喜ぶでしょう」
白新「そうですか――俺はずっと一人だった気がしていたんです。でも一人でないことを知ることができたのでよかったです」
白蕾「その人があたしに剣を教えてくれたんです。だからあたしはこの花街で生きていく術を持ち生きています」
晴晴様は次から次へと話が流れて行くことについていけなくなったのか、酒を飲み始めてしまった。
白蕾「……晴晴様に宮中でのことお話していませんでしたね」
晴晴「そうだな、あんまり聞きたいとも――」
白新「白蕾様は宮中にいらしゃったんですか?!」
白蕾「はい。下級妃から侍女をして花街へ」
白新「お妃様だったんですか?!……え……お妃様は剣舞を稽古とすることがあるのですか?!」
白蕾「楊兎将軍と親友だったから、教えてもらったんです。――そう、白新様の血族は楊兎将軍だと思います」
白新「あ、あの、楊兎将軍ですか!?」
晴晴「白虎と呼ばれてんのは髪の色のことだったのか。」
ほんっと飽きない女だな――。
宮中から下庭に来たことは俺も拾った時から分かってはいたが。
まさか侍女、妃までしてたってことは――。
あの皇帝の相手もしていたのか――?
白蕾は本当の名前でない――?
红京という男も銀髪なのか?
銀髪のことも気になるが、白蕾の情報量の多さに全然ついていけねー。
はぁ――。
なんだ、本当に俺は白蕾のこと――。
本当の名前も――。
俺は何も知らなかったのか――。
白蕾「白新様がありのままの姿で過ごせる場所はありますか?」
白新「そうですね、杨鈴様といれば心穏やかに過ごせるんです。あの人はすごいお方です」
晴晴「――あー、白新を呼んだ本題を忘れるところだった」
白新が杨鈴へ思いを寄せていること。
こいつなら今の杨鈴でも身請け出来るだけの落簪も買っているし、誠実性は申し分ないだろう、と――。
目の前で白新と嬉しそうに話し込む白蕾は懐かしんだ顔を見せる。
宮中での話を聞けばその「红京」という男の名をあの口から聞くことになる可能性がある。
それが怖くて俺は聞けなかったのか。
それどころか皇帝陛下様の女だった、か――(笑)
今は宮中での白蕾はどうだったのか興味が湧いて仕方ない。
どこまでこの花の蜜に惑わされてんだ――。
今は杨鈴のことを解決することが先決だな――。




