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第七話:異形

 角からターゲットの二人を覗くクレア。


 男二人組。

 ここ周辺にはトラップは仕掛けられていない。


 敵も帯剣して周囲を警戒してはいるが、クレアの特殊能力による魔力の消失に気づく様子はない。


 ただの見張り番だろう。

 聖剣が掠っただけで死にそうだな。



 俺の合図でクレアが角から飛び出す。


 飛び出して、横並びの二人の首を一太刀で……って、ん?



 今、()()()()なかった?


 目を凝らす。


 斬られた二人は倒れ、しかし血は流していない。


 クレアが倒れた片方の男に近づき髪を掴んで頭を持ち上げる。


 逆手持ちした聖剣の柄頭で頬をつつく。



 ……は?



「ちょ、クレアなんで二人ともころ——」


 衝撃的な光景に口を噤む。


 首から下はまるで生気のない死体のようなのに、首から上は生命活動が止まっていない。

 男は引き攣った顔で嗚咽を漏らしている。


 呼吸はしている。

 脈拍に異常はない。


 斬った首から下だけ死んだという訳でもない。



 まさか——首から下の魂魄(たましい)を斬り落としたのか!?

 実体にダメージを与えることなく!?



 た、確かに聖剣テュラントは女神の加護を持つ者が望む限り、この世の万象を切り裂くという伝承がある……。


 裏を返せば、肉体の切断を望まないなら剣身が物体を透過するようになるという解釈もできなくもない……



 いやでも、だからって剣身の実体がなくなるわけなくねえ……?


 意味わかんねえ。


 大体、理論上できたとしてなんで目に見えない魂を斬れるんだよッ!!!

 間違えて全部斬ったらどうすんだよッ!!!



 この勇者、やば過ぎる……

 こいつのレベルが上がったら俺もう勝ち目ないじゃん……

 確殺される…………



 まるで「怪我させたわけじゃないもん」とでも言いたげな悪意の欠片もない少女の顔が、身体の異常な変化によって錯乱状態に陥った男の前に置かれる。


 その男は白目ひん剥きながら顎をガタガタ鳴らした後、まもなく気絶した。



 ちょ、尋問するなら気絶も死亡も大して変わらねーよ!

 なら両足斬り落とした方がまだマシなんだが……


 てかこれ斬られた魂って自然回復でくっ付くのか……?

 治らないなら普通に殺すより残虐じゃない……?



 倒れ込む二人を見て、クレアが思い出したように呟く。



「あっ……ま、どうせ死刑だしいっか!」



 人の心ある?





 見張り番がいた通路をもう少し進んだ所に、下へ向かう階段があった。


 しかも地図には載っていなく、奥の空間もかなり広いようだ。

 邪教徒らの中に土属性の魔術師がいるのだろう。


「恐らくここがカルヴァドル教団のアジトだな。トラップは無さそうだけど、念のため俺から離れるなよ」



 暗闇の中、階段を踏み外さぬよう、足音を立てぬよう慎重に降りていく。


 かなりの段数降りていくと、やがてだいぶ広い部屋に出てクレアが火球を灯した。


 すると、部屋の右手側に牢屋があり、中には囚われた男性が一人……恐らく騎士団員だろう。



「大丈夫!? 今助け——」


「やめろ!! 来るんじゃないッ!!」


「ッ……!!!」


 クレアが鉄格子に近づくと、突如として異形の怪物が天井から降ってきて、部屋全体に震動と轟音が響く。


 その怪物の姿を見て思わず目を見開く。



「……大量の人間で構成された魔法傀儡(ゴーレム)ッ!!!」


 捕まった騎士団員は計14人……牢屋にいる人を除くと13人……丁度その位だな。



 俺たちを視認したゴーレムは、人間の様々な部位で構成された頭部から咆哮を上げる。


 それだけでなく、ゴーレムのパーツとなってしまった人々の呻き声が幾つも重なり、中には助けを求めたり命乞いをする声もある……


 このゴーレム、死体じゃなくて()()()()()生成しやがったなッ!


 部屋に入った時点で俺の魔力探知に引っ掛からなかったということは、侵入者が来た瞬間にゴーレムに魔力を流して起動させたのだろう。


 つまり、ゴーレムを操作する魔術師がこの奥の部屋にいる。



「クレア、わかってると思うが——」


「もう助からない、でしょ」


「……ああ」



 ゴーレムは五メートルくらいの人型。

 動きは速くないが力は強そうだな……


 だが、大した敵ではない。



 魔剣を抜き、回り込んでゴーレムの踵に相当する箇所を斬りつける。


 よろめいたところをジャンプして後頭部に跳び蹴りを喰らわせると、ゴーレムは前方に倒れ込む。


「クレア! 背中の核を破壊しろ!」


 俺の言葉に呼応するようにクレアが飛び上がって、ゴーレムの核を聖剣で思い切り貫く。


 その瞬間、ゴーレムの核周辺に魔法陣が展開され、赤色に発光する。



「まさか——あのゴーレム自体もトラップだったのか!?」


 核の発光が収まると、クレアがその場で気を失い倒れてしまった。


 その瞬間、ある変化に気づく。



——魔力が……浄化されない!?


 恐らくゴーレムのトラップの効果は、核を破壊した者の全ての魔力を吸収すること。


 理由はわからないが、クレア自身が魔力欠乏で意識を失うと周囲の魔力の浄化能力が発動しなくなるのか……



 ん? 待てよ……?


 クレアは魔力が底を突いた状態で気絶し、俺は魔力が自由に使える……

 もうこんなチャンス二度と来ない。


 そこの捕虜は口封じのため殺して、俺以外生存者ゼロと報告すれば——





 ……いや、駄目だ。

 たとえ今ここで無防備な勇者クレアを抹殺できるとしても、それでは結局この世界を終結させることはできない。

 しかも、そもそもそんな倒し方じゃ俺自身が納得しない。



 今はひとまずこのアジトのリーダーを捕まえる。

 そして拷問して目的含む諸々を聞き出して殺す。


 領主には力加減をミスって全員殺したと報告する。


 これでいい。


 貸し一つだ、クレア。

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