魔力の燃費がなかなか...ですよこのコア
「……次もあんな感じでいくのはなぁ」
配信の終わった部屋で、俺はぼやいていた。さっきまでユズハが盛り上げてくれた配信はたしかにインパクトあったが、何というか“ユズハ頼り”感が否めない。
「せっかくおもしろく配信できたのに〜。もったいなーい」
ユズハがぷくっと頬をふくらませる。見ると、さっきまでの際どい服はすでに脱ぎ捨て、代わりに膝あたりまでの大きなサイズの長袖シャツをゆるっと着こなしている。
「それだと、ほぼユズハの配信になるだろ。俺、裏方で口出してるだけじゃ……」
「じゃあ次はリクさんの案でやりましょ!」
「う、……そう言われるといい案なんて思いつかないんだけど」
俺が眉をしかめて言うと、ユズハは悪戯っぽくウインクする。
「思いついたらでOKですよ〜。それより、ダンジョンコア見てみたいです! ほら、前に魔力送るって言ってたし!」
「……ああ、そうか。ちょうど試してみようと思ってたところだしな」
そう言って、俺はコアを取り出す。
――配信で得たマナチャの魔力をコアに注ぐ作業は、意外と簡単だった。
魔導端末を操作して“送信”をタップするだけで、あっという間にコアへ流れ込んでいく。
画面を見ていると、魔力量は一気に40000近い数字を叩き出していた。(ユズハの取り分のマナチャを差し引いたにもかかわらず、だ)
魔力量:1000 → 43631
エリア数:5(深度1) → 11(深度2)
モンスター数:10体
ダンジョン自体も前より規模が大きくなっている。
部屋が増えて深度が増えたということは、地下が出来たんだろう。
こんな調子で魔力量をどんどん増やしていけば、俺が攻略してきたようなダンジョンと遜色ないレベルになる...かもしれない。
(それはマスターである俺の方針によるか。)
ユズハはそれを横から覗き込み「良かったですね!」と嬉しそうに言う。
「おかげで、ここを生活拠点にするっていうのも実現しそうだ」
「マナチャたくさん稼いだかいがありました!これからもっとがんばりましょう!それで、リクさんなにを追加したいんですか?」
「そうだな...やっぱり風呂……あ、いや、せっかくなら温泉で」
なんて言葉を口にした瞬間、『マスター。』と窘めるような声のあと、『ぜんぜん魔力量が足りません』
「なん、だと……!?4万あって足りないって」
「温泉って高い?んですね...」
仕方ないので「じゃあ風呂……」と妥協案を呟いてみたら、コアがまた表示を切り替える。
『ーー承認しました』
そう言って魔力量が7000近く大きく減少するのが見えた。
(魔力量:43631 → 36325)
「うわ……結構使うな。温泉への道は遠いか」
そして新しく生成された“風呂エリア”をマップで確認する。
そこには確かに、浴槽らしきものが出現しているようだ。
◇◇◇
1Fのエリア4に風呂は出来ていた。すでに湯は張られ、いつでも入れる状態で。
浴槽以外にも、シャワー+洗面台+バスタオルなどのアメニティまで完備されて、とんでもなく充実している。
ユズハが「わぁ〜、すっごい!」と大興奮だ。
『水の生成も、沸かすためのエネルギーも、魔力を使っています。過度な利用は魔力不足になりやすいわ』
「…てことは照明のエネルギーとか、その辺の生活設備も?」
『ぜんぶ魔力で賄っているわ』
生活設備のすべてを魔力で対応してるんだ。魔力消費が激しいのはそういうことか。今後、作った施設を維持するにも魔力が必要になるわけだな。
「痛い支出だけど...必要だもんな...次はやっぱり……食事かな」
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