表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/58

これが“ダンジョン×癒やし”なのか......癒やしってなに

 ユズハと正式に組むことになり、配信慣れしているユズハがメインで、俺はいったんダンジョンの場と環境を提供する黒子という役割で迎えた配信当日。


 俺は頭を抱えることになった。


「思ってたのと違う……」


 目の前で繰り広げられている光景が、ユズハが豪語していた“ダンジョン×癒やし”配信とやらのイメージを大きく覆しているからだ。


 俺の想像では、スライムを撫でたり抱っこしたり――せいぜい、そんなほのぼの系の映像になると思っていた。

 ところが、ふたを開けてみれば……。


「みんなー! こんにちは! 今日は超めずらしいダンジョンにきてまーす!」


 ユズハは自撮り風にカメラを構え、部屋に設置した小型プールの中から元気に手を振っている。

 そこにはスライムたちがぎゅうぎゅう詰めで、ぷるぷると波打っていた。


「じゃーん! 見てみて、これぜんぶスライムだよ〜!」


 テンション高めに声を張り上げるユズハ。

 その服装は...もう俺には何と言えばいいのか分からない。

 肩がまるまる出てるってだけでも十分刺激的なのに、下は……妙に切れ込みの深い“何か”をはいてるというか、いや、ほぼ水着だろコレ。

 さらにその上から、透けた上着と短いスカートを重ねているせいで、全体的に「隠してるようで隠してない」って感じになってる。


 おまけにプールの水分(?)で濡れているせいか、布がところどころ肌に張り付いて、こっちから見るといろいろ大変なことに……。


「すごくない? こんなにしても全然攻撃してこなくて〜!」

 ユズハはスライムを両手で抱きかかえ、楽しそうにぷるぷるさせては、「きゃっ」「あはっ」と弾けるような声を上げる。


「ほら、かわいいでしょ~?」


 その声に合わせるように、コメントがどんどん流れていく。

『癒やされる』

『神企画!』

『スライムいいな……』

『最高です』


(……これが“ダンジョン×癒やし配信”ってやつか?)


 マナチャも、しっかり投げ込まれているのが見える。そこから、ユズハはさらに視聴者をあおるように、楽しげにカメラへウインクした。


「ねえねえ、みんな! このスライムプール、ほかにどんなことやってほしい? いいアイデアあったらマナチャつけてコメントで教えてよ! それ採用したら、もっと面白いことできるかも!」


 コメントが一気にざわめく。

『マナチャ!投げろ投げろ!』

『ぷるぷるスライム抱っこしてほしい!』

 ユズハは、まるでショーのステージに立つスターのようににっこり微笑む。


「そうそう、みんなのリクエストに応えるのが配信の醍醐味!一緒に楽しもうね〜!もりあげろー!」

 カメラ越しでもわかるほど視聴者がヒートアップして、マナチャの通知がポンポンと飛び込む。


 その様子に、俺は複雑だ。

 複雑なんだけど...


(……すごくわかる。こういう...場の盛り上がりを見ると、投げたくなるんだよ)


 ...配信は嫌いじゃないんだ。

 マナチャを投げたときに喜んでくれる笑顔が嬉しくて

「……楽しいんだよなぁ」


 ユズハは視聴者からの突っ込んだ質問にも、するりとかわして応えている。

 「スライムが攻撃してこない理由? 友達だから……かな?」

 「ダンジョンの場所? え〜教えちゃうともったいないし、内緒〜♪」

 ――そんな調子で、見せたいところだけ見せて肝心なとこは言わない。

 さきほどの盛り上げ方もそうだが、これがユズハの配信者としてのテクニックなんだろう。


 と思っていると


「マナチャありがとー!すっごく嬉しい!……スライムプールってちょっと憧れだったんだよね〜。ひんやりして気持ちいい……あ♡ 変なとこくすぐらないで!」


 ユズハはさらに勢いよくスライムを抱きしめる。


 (...あれ...?)


 コメントは

『スライム羨ましい…!』

『そこ代われ』

『しっかり狙ってるなあ笑』

 といった言葉でさらにヒートアップ。


「え〜やってみる? ...ちゅ! んっ...ぷるぷるしてる! あはは!」


 ユズハは視聴者のリクエストに応えるように、スライムへ“ちゅ”とキスをする。

 その瞬間、コメントがさらに熱狂し、マナチャ演出が連続で弾ける。


『うおおおww』

『破壊力エグい』

『投げます!投げます!』


(まずいな、これ以上は……)


「ユズハ、このへんで……やめたほうがいいかも。配信事故になるぞ」


 カメラには映らないが、マイクだけオンらしい。

 一瞬、コメントがざわつく。


『今の声は?』

『裏方が止めてるwww』

『これからでしょうが!』


 ユズハはチラッとこちらを見やり、軽くウインクして笑う。


「聞こえちゃった? リクさんに“スライムいじめすぎ”って言われちゃった☆ だよねぇ、ごめんねぇ、重かったよね?」


そう言いつつ、スライムを優しく撫でてみせる。視聴者からの反応はさらに続く。


『リクさん出てこい〜!』

『謎の裏方かよw』

『コラボなら顔出そう!』


「まあまあ、配信はここまで! みなさん、また次も観たいって言ってくれたらうれしいな〜。いいねよろしくね〜!」


 そんなユズハの締めくくりとともに、コメントは盛大な盛り上がりを見せたまま怒涛の配信は終了した。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

とくに派手な回でなくとも、楽しんでいただければ幸いです。

コメントやお気に入り登録などしていただけると、とても励みになります。

それでは、次回もどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
地雷系女さんだ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ