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安全なダンジョン攻略配信はじめます

 最初は、このダンジョン攻略配信がうまくいくのか、不安が大きかった気がする。

 でも終わってみれば…ただの杞憂だったな。


◇◇◇


 スタート!というユズハの声とともにケイは勢いよく走り出す。ここから10分のタイムアタックだ。

 ケイの頭上には小型の浮遊カメラが追跡していて、そいつがリアルタイムで映像を送信してくれる。


 コメントも同時進行で盛り上がっていて、ユズハは配信端末を操作しながら「まずは第一セクション!」なんて軽快にアナウンスしている。


 第一セクションのジャンピングステップは足場が6個、並んでいるだけ……と思いきや、微妙に沈んだり傾いたりする。

 ケイは勢いよく飛び出した。


「おお、いい滑り出し…最初は言った通り足場がぐらつくから――」


「ぬおっ!?」


「え」


 一つ目の足場に乗った瞬間、ぐらりと沈み込み、ケイはあっさりクッションへ落ちた。


 ケイは「あと2秒早く言って!」と半泣きで俺に訴える。


「…説明ちゃんと聞いてたか?」


「100回は聞いてましたよ!」


「いや1回しか言ってないから…」

 ユズハはそんなやり取りを聞いて「あはは!」とすでに楽しそうだ。


 コメントは

『漫才かな?』

『開始5秒で落下』

『これは期待できる』

 など視聴者の反応は悪くない。


 ケイは二度目の挑戦で足場を慎重に渡りきり、1分程度で第一セクションを突破。


 第一セクションを抜けた勢いで、次の仕掛けへ向かう。

 ここは、トラップの回転壁を橋を渡すように改造したもの。幅1メートルほどの回転床が軸を中心にくるくる回り、乗った瞬間に重さで回転する。


「あーはいはい。こういうやつね。」


「ケイ、バランスが大事だから、一気に――」


「ヨユーです!」


 そこでケイにユズハが突っ込む

「えっ、ケイくん普通に渡る気!?」


「えっ、普通に渡る以外なにがあんの!?」


「そうだね〜、回転床の真ん中で止まって一言どうぞ!」


「落とす気マンマンだろ!」


「そんなことない!視聴者のみんなも期待してるよ!」


『そうだね』

『どうぞ』

『聞きたい』


「本気?…言うならやるよ?やるけどさ!」

 とケイは勢いよく回転床を踏みしめ、一気に真ん中まで走り、止まったかと思えばカメラに向かって…


「ケイです!好きなものは、アップルパ…ぁあーーイ!」

 そう言って回転床に飲まれ落ちていった。


『なんだって?』

『え、うーん』


「イマイチだったね…ごめんね!」

「やらせといてそれはないわ!けど許す!」


 そう言ってケイは第二セクションもサクッとクリア。ダンジョン攻略をしたことがあると言っていた通り、センスは良いみたいだ。


 第三セクション。

 長さ10メートルくらいの間に配置された飛び石を踏んで、対岸にたどり着く。ハズレ石を踏むと空気砲がドカンと吹き飛ばしてやり直し。


 スタート地点で、ケイが急に足を止める。俺もユズハも「どうしたんだ?」と顔を見合わせたところで、ユズハが声を掛ける。


「ケイくん、どうしたの? なんか考え込んでるね」


「前の2個で学びがあったんすよ。…必勝法があります!」

 そう言いながら、ケイは探偵じみたポーズで、顔を手で覆って何やら推理するフリをしている。


「描いてみせますよ、セクションクリアの青写真をね!」

 めちゃくちゃドヤ顔で言い切るケイ


「おお〜!?」ユズハが声をあげて、


 コメントも

『あおじゃしん』

『意味深なポーズ』

 とざわつく。


「リクさん!……正解ルート、教えてください!」


「そ、そうきたか…プライドは…?」


「視聴者のみんなもオレがノーミスで完璧に渡るとこ見たいはず!そうだよなぁ!」


 ケイへの問いかけにコメントは

『いや』

『そーかな?』

『不正良くない』

 など擁護派は少ない反応。


「お、お前ら…オレは悲しいよ!もういい、こうなったら絶対ノーミスで決めます! リクさん、お願い! ルート教えて!」


「ええ?…えーっとたしか…」


 それと同時にケイが脚を踏み出す。


「右、左、真ん中、右…」


「ほい、ほい、ほい」


「あ、いや左だったか…」


「ちょっ…とぉ!?」


 ——ドカン。

 空気砲に吹き飛ばされるケイ。華麗に宙を舞う姿がカメラに映る。


「間違えた…」


 ユズハもけたけた笑いながら「ケイくん、すっごい綺麗に落ちたー!」と実況する。


「痛った、この空気砲ヤバい!ちょっと、リクさん!?ちゃんと教えてくんないとそこは!」


 ケイはスタート地点に戻って再挑戦。


「右、左、真ん中、左、…次は!?」


「もう一回左…違うな、悪い、1回しかテストしてないから覚えてない」


「ぐはぁっ!」

 またしても空気砲がドカンと炸裂し、ケイが吹き飛んでいく。


「1回だけ!?ちゃんとして?!よく思い出して、しっかり思い出して!」


「えーっと…」と思い出そうとするが、


 コメントも

 『右行け』

 『左だろ』

 『いや真ん中回避』

 『上を踏め』

 『3歩下がる』

 と適当な指示が飛び交い、ますます混沌としてくる。

 俺も「え、どっち」と視線を泳がせていたら、思わず吹き出してしまう。


「……ふっ、もう、自力でがんばってくれ。思い出せないや」


「投げたー!あっさり投げたな!いいよ、オレの勘でいく!」

 そう宣言したケイは、開き直ったのか意外なスピードで足場を踏み進める。


 ――すると、なぜか空気砲に当たらずスルスルと先へ進み、そのままセクションゴールまで到達してしまった。

「おお〜」と俺もユズハも驚きの声とともにパチパチと拍手。


 コメントも

『まさかの』

『すごい』

『やるぅ』

 と驚きと称賛コメントが飛び交う。


 ケイもドヤ顔で手を振り、「オレ天才だわ!」と自画自賛して、「ほらほら、みんな、ここが褒めどころだから!」と煽る。


 マナチャがポンポン投げ込まれている様子が画面に表示され、ケイは「ありがとな〜!」と手をふる。


 俺も思わず笑みをこぼす。応援したくなるし、やっぱり、面白い。


 ここまでで気づけば残り4分ほど。うん、まあ順調だろう。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

とくに派手な回でなくとも、楽しんでいただければ幸いです。

コメントやお気に入り登録などしていただけると、とても励みになります。

それでは、次回もどうぞよろしくお願いします!

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