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ケイですっ! よろしくお願いしまーす!

 ユズハの「いい人がいる!」といった人物は、どうやら“ケイ”という男の配信者らしい。

 なんでもいま、新進気鋭?の若手配信者だとか。しかも本人はダンジョン攻略配信を始めたばかり。

 俺はユズハから送られてきたメッセージを読んでいた。


 「ケイくんは面白いよ!」


 ユズハの第一文がそれだった。

 続けて送られてきたメッセージには、「いろんな企画やるんだけど、リアクション面白くて〜。あ、ダンジョン攻略はすごく上手いってわけじゃないから安心して!」とあった。


 思いつきで“安全なトラップを使ったダンジョン攻略配信”なんて言ったものの、まさかすぐ候補を見つけてきてくれるとは。これは成功させたいな。 


◇◇◇


 1Fの応接室。


「それで、“安全なトラップダンジョン”って、具体的にどんなイメージなんです?」

 ユズハが尋ねる。


「とりあえず“死なない仕掛け”を考えてるんだけど、まだ詳細が決めきれてなくてさ」


「そうなんですね!うーん、視聴者にドキドキしてもらいながら、笑って見てもらえたら理想ですよね」


 そこにコアのぶっきらぼうな声が割り込む。


『……落とし穴の深さを倍にして、底に棘を生成。段差も作って高いところから落とせば仕留めやすいわね』


「何を仕留める気だよ……」

 思わずツッコむが、今のコアの言葉が引っかかった。


「……待て。いま“段差を作る”って言ったよな? もしかしてトラップ以外にも、ダンジョンの地形そのものを変えられる……?」


『できるわ。トラップの位置も大きさも自由。そのぶん魔力は多く必要になるけど。』


「……なんか、ひらめいた気がする」


 俺はざっとコアに“安全トラップダンジョン”の構想を説明した。


『……できなくはないけれど、相当な魔力を消費するわ。作り直しは難しい。それでもいいの?』


 そこへユズハが魔導端末を見ながら、小さく悲鳴を上げた。


「わ、ケイくんが“全く新しくて見たことないダンジョン攻略やるんで~”って、あちこちで宣伝しまくっちゃったみたいで…。すごくハードル上がってるかも……視聴者も前よりずっと増えそうです。」


「え、もう宣伝したのか……ありがたいけど、下手に失敗できないな……」


『どうするの?やるの?』


(……一度作り始めたら大規模な修正もできない。でも、ほかに案はない)


「やるしかない。頼む」


『……承認』


◇◇◇


 後日。ダンジョン入口。


 軽快どころか、底抜けに明るい声が響く。


「どーも! はじめまして、誘われたらどこでも飛んでいく男、ケイですっ! よろしくお願いしまーす!」


 ぱっと見、黒を基調にシルバーと青のラインをあしらったロングベストを身につけ、両腕にはアームカバーを装備した動きやすそうな格好。髪はくすんだグレー寄りの色合いに、ほんのり紫がまざっていて、差し色の青がキラッと映えている。


「お誘いありがとうございますッ!」

 ケイは人懐っこい笑みを浮かべて、いきなり手を伸ばしてきた。


「……あ、ああ。わざわざ来てもらって助かるよ。よろしくな」


「ユズハから元プロって聞きましたよ! マジですごいじゃないっすか! めっちゃ憧れますって! オレも一応、ランクの低いダンジョンなら何個かクリアしたことありますけど……あれ以上のランクがごろごろしてるって聞くとやっぱ格がちげーって」


 この怒涛の喋りには、どこかデジャヴを感じる。

 嫌味のない全力の「すげえ!」は悪い気はしないけれど、これが配信者のノリってやつなんだろうか。


 ユズハがニコッと笑い、手を叩いた。


「よーし、それじゃあ早速、リクさんの特別ダンジョン、見に行こうか!」


◇◇◇


 B1F。

 俺とユズハはスタート地点の脇に簡易的な配信ブースを設置して、配信用の機材を用意している。ユズハが魔導端末のカメラに向かって手を振り、いつもの元気な声で配信を始めた。


「みなさーん、こんにちはー! 今日もリクさんと一緒に配信していくよ! そして今回のゲストは、ケイくんです!そしてダンジョン攻略をしてもらいます!」


 コメントには

『ダンジョン攻略ってベタだな』

『新しい企画だって聞いたぞ』

『見たことない攻略とか何が違う?』

 など、ケイが「全く新しくて見たことないダンジョン」を宣伝したおかげで盛り上がっている。


「そうなんです!実は、これまでのモンスター退治をするダンジョン攻略とは全然違うんです!」


 そう言いながら、ユズハがカメラを切り替える。

 画面には、B1Fのスタート地点であたりを見回すケイの姿が映し出された。


「なんっ…なんだこれぇ!」


 ケイは思わず声を上げる。

 もともとはいくつものエリアや通路で区切られていたはずのフロアを思いきりぶち抜き、無理やり一本の巨大なアスレチックに仕立ててあるのだ。見た目はほとんどアトラクション。


「リクさんがここを大改造して作ったんです! 重たい装備や武器は不要――その代わり体力やバランス感覚が試されるってわけですね!」


「こんなダンジョン見たこと無いんですけどぉー!てかこれダンジョン…?」


「じゃあリクさん、解説お願いしまーす!」


「ああ。スタートからゴールまで一直線にしてあって、途中に仕掛けを仕込んだ“セクション”が5つある。そこを一つずつクリアしないと先へ進めない仕組みだ。」


第一セクション

 ジャンピングステップ:乗るとぐらぐら沈む足場を6個わたり切る。

第二セクション

 回転床:上に乗った瞬間、足を取られてクルッと転がる回転床をわたり切る。

第三セクション

 飛び石ブリッジ:点在している石を踏んで対岸へ渡りきる。ただしハズレ石を踏むと空気砲で吹き飛ばされてやり直し。

第四セクション

 スライム運び:細道をカゴに入ったスライムと一緒に渡りきる。

第五セクション

 大ジャンプ:落とし穴を飛び越え、ゴールのコアに触れればクリア。


 …とまあここまで解説したものの、生成に使った魔力量は16500とスゴイことになっていた。


 魔力量:17202 → 702!


(……魔力はほとんど残ってないし、失敗はできない――なら、今ある仕掛けで絶対成功させるしかない)


「制限時間は10分!落ちてもクッションを敷いてるから安全だし、セクションごとに再挑戦OKだよ!」


「見た目だけでも破壊力あるな〜!面白いすねこれ!」


 ケイがノリノリでスタート地点で構える。


 視聴者からも応援や期待の声が一斉に飛んできた。

『ケイがんばれ』

『スライム運びってなんだよw』

『落ちるとこ見たい』


「みんな応援よろしくね! ケイくんはどんなリアクションを見せてくれるんでしょうか? それじゃあ――」


 カメラへ向かって軽く目配せして、


「――よーい、スタート!」

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

とくに派手な回でなくとも、楽しんでいただければ幸いです。

コメントやお気に入り登録などしていただけると、とても励みになります。

それでは、次回もどうぞよろしくお願いします!

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