31.頭の中がお花畑だな
とある休日、俺は今度は「ア5人衆のうちの1人、ジビアにカラオケに誘われた。」
彼女は堂々と大きな声で歌う割には、音痴だった。
まあ、絶望的に音痴というわけではないがな。
微妙に音が外れているのがまた何とも言えない感じを醸し出している。
満足するまで歌い終わると、彼女は言った。
「ルーカス君は、私のこと、好きなの?」
唐突すぎる彼女の質問に俺は耳を疑った。
「なぜそう思うんだ?」
「え、いや、この前、私のこと助けてくれたし、秘密も打ち明けてくれたから、そうなのかなって。」
謎が多い少女と思っていた彼女だが、意外と単純なのかもしれない。
それにしてもどうやったらそんな発想になるのか。
何というか、頭の中がお花畑だな。
ファンタジーの世界に生きている幸せ者だ。
しかし、それにしてももうどういう状況なのかわからないな。
状況は目まぐるしく変化している。
ステージ4クリアには一直線上に近づいているが、ラブコメの世界としての難易度は上がる一方だ。
この世界ではモンスターを倒すことと、ラブコメを上手に進めることがゲームをクリアするための必須条件だ。
しかし、ラブコメを上手に進めるってなんだよ。
どうなったら上手に進められたってことなのか、明確に分からないじゃないか。
それに、現状は絶望的だな。
ラブコメにすらなってない気がするが、大丈夫なのか、これ?
モンスターを全員倒せたとしても、ラブコメがクリアできずにゲームセットになるんじゃ…
いやいや、よからぬ期待をしても仕方ない…
今はただ目の前のできることを全力でするだけだ。
俺ならそれができる。なぜなら、俺は天才高校生、鬼頭流星、もとい、ルーカスだからな。
「何を一人でぶつぶつ言ってるの。まさか私に愛の気持ちを伝えたくて?」
俺は頭を押さえながら呟いた。
「まったく、何をどうやったら、そんな考えになるんだか…」
目の前の少女はまだまだ謎が多い。