3.これがゲームの中か
俺はこの世界を確実に知っている。毎日のように熱中していたゲームだからな。だから、俺には勝利に対する確信がある。ルーカス、存在を忘れていたが思い出したのだ。突出した技能は占いしかないが、すべてのスキルを総合したスペックではこのゲーム内においてはトップクラスだ。しかし、極度の方向音痴という弱点があり、目を離すと仲間から離れていってしまうことも多いのだ。俺はミアに協力を要請した。道案内は彼女の役目だ。マジカルカードをシャッフルして、運勢を占う。これは、現実世界で言えばタロット占いのような手法だ。北西10kmの地点に保存できる食料があるとでた。俺の行く先をミアが誘導する。さすがは、元勇者パーティーのメンバーだけあって走るのは尋常に速い。目的地に着くと、赤色の木の実が見えた。恐らく、あれが食料。主食の代わりになるかどうかはわからないが、まあ餓死するよりはマシか。突如、獣が行く手を阻んだ。ミアが剣を構えようとするのを、俺が手で制した。
「ここは、俺に任せろ。」
そう言うと空高く飛びあがって、獣の頭に回し蹴りを食らわした後、宙返りをして着地した。ミアが思わず拍手する。まあ、運動神経抜群の鬼頭流星、いや、ルーカスったら俺のことよ。その後、俺たちは村に食料を持ち帰った。貧しい村の人たちはとても喜んでくれた。俺たちに協力したいと言ってくれる人も現れた。1人はジョージ。幻術使いの魔法師だ。もう1人は、ビクトリア。彼女は忍術使い。一風変わったスキルを所有していることを、彼らは告白してくれた。そんなことを公にすれば、貴族階級の人間に殺されかねないし、何より他の住人から異端の目で見られることを恐れたという。しかし、俺という人間の登場により自分たちの暮らしを変えられるのではないかという淡い希望を持ち始めたそうだ。そして、俺の周りには男だけでなく、多くの女の子たちも寄ってきた。まさに一時的なハーレム状態だな。食べ物の力恐るべし。