第七話:野望と復讐
一部の日には国民にも開放されている王城で唯一の場所。
この国最高の景色とされた、王城の巨大庭園。
そこに突如とした現れた、通常より大型化された灰色のメイル。
国王の言葉を伝えるために国内に設置された通信魔道具より、
そのメイルから宣言が送られた。
『私は、ランバード新国王である。
まずは昨今、ファステリード王国周辺での魔獣被害が激減している事態を嬉しく思う。
これもこの国の優秀な騎士たち、この国にて活動しているバウンサーの諸君のおかげであろう。
そのことに感謝の意を示す。
その事態を受け、私は思った。
この先、もしかしたら国同士、人同士の争いに発展するのではなかろうかと。
その時になったら、この国はどうなるのだろうか・・・と。
答えは明白。蹂躙だ。
前国王時代の緩い政策による国では、強い国にはならない。
この国を守るための力が必要であろう。
故に、私は力を求めた。
そして得た!最高の力を!
この力があれば、この国の未来は安泰であると言わざるを得ない!
今私の乗る、この「ラー・ファステリード」の姿こそその象徴である!
私はこの力を量産化し、この国を最強の王国へと生まれ変わらせることを宣言する!
前国王は、その私の愛国心を聞き届けてくれなかった。
それ故に、彼には退場していただいた。
だが、それもすべてはこの国を思ってのこと!
私のやり方に不満のある者は名乗り出るがよい。
我が道、我が力によって我が正義を示すものとする!
私に賛同する者はこの力の元に集え!
そして共に最強の王国へと昇ろうではないか!!』
「・・・そんな・・・お父様が・・・」
リシリアは崩れ落ちた。
真実にたどりつけそうになっていた。
打つべき相手が定まりそうだった。
だが、相手の方が先に行動を起こしてしまった。
父を・・・助けれなかった。
「・・・ランバード騎士団長。ついに行動を起こしたか。・・・愚かなことを」
ヴァイスは拳を握りしめ、呟いた。
「どうやら、住人には動揺が広がっているようだな」
情報屋を名乗る男は、拘束を解いていた。
もはや、彼らにリシリアを害することがないと判断したからである。
すぐさま、彼らは散らばり情報を集め始めてくれていた。
しばらくして、王城のほうから魔銃の撃たれる音や何かが破壊される音が響きだしたころ。
散らばっていた男たちは全員戻ってきた。
「連絡魔道具で他の街にいるやつと情報交換したが、一部の騎士が謀反を起こしたそうだ。どうやらランバードの共謀者のようだ。もっとも、人数がそれほどいないのにやらかしたようで時間はかかるだろうが鎮圧されるだろうとのことだった」
「こちらも同じだ。こっちの方はメイルでの謀反だったようで街に被害がでたそうだ。住人にも被害がでているとの情報もある」
「この街の情報だ。バウンサーたちはとりあえず静観をするそうだ。クーデーターという方法を取った男の言葉は信用が薄いと」
「バウンサー組合の人にも聞いたぞ。組合としてはこの件には参加しない、場合によってはこの国から撤退も視野に入れると。そうなると、減ってきたとはいえ魔獣被害の方が心配になりそうだから待ってくれといっといた」
「王城では、近衛騎士たちがランバードのメイルに戦いを挑んでいた。だが、あのメイルの火力は相当なもののようだ。ほぼ一方的に近衛騎士がやられていた。自動で防御してるのか攻撃しながらも盾が攻撃を防いでいたそうだ。それと、騎士団の一部同士が戦いを始めてると。賛成派と反対派だろうなこれは」
「さすが情報屋を名乗るだけはある。知りたい情報が手に入ってありがたい」
そう言い、ヴァイスは歩き出そうとした。
「おい、どこにいくんだ?」
その言葉に、ヴァイスは振り向き・・・決意を固めた目で答えた。
「ランバードを討つ。それが、この街に俺がやってきた真の目的だ」
「それは!・・・相手の強さはかなりのものとの話です。いくらあなたがこの国に仕えていたことがあるとはいえ・・・」
リシリアが止めようとする。しかし、ヴァイスは首を横に振った。
「あいつはメイル乗りとしての実力で騎士団長に上った男だ。強いことは間違いない。・・・それでも俺はやらなければならない」
「・・・技術者との取引でもあったのでしょうか?」
アトナがそう聞くと、再び首を横に振った。
「ないわけじゃない。だが、それ以上に俺自身があの男を討つ理由がある」
そう言い彼は少し考え・・・そして、腰に下げていた物を取り外した。
それは、少し色あせた青色の布袋だった。
彼はそれを、リシリアに手渡した。
「・・・これは?」
「どんなことがあっても、確実にランバードは討つ。だが・・・もし、俺が戻らなかったときは・・・それをあるべき場所に置いてほしい」
そう言い、ヴァイスは王国の騎士がやってきた敬礼を見よう見まねで行った。
「リシリア王女、どうかお元気で。この騒乱の後も、御身が無事であることをお祈りしてます」
そう言い残し、彼は走りだした。向かう先は、自身のトレーラーを止めている場所。
「これはいったい・・・っ!?」
気になったリシリアは中身をのぞいた。
そしてそこにあった物をみて、驚愕した。
これと似たようなものを、彼女は見たことがあった。
そして、それのあった場所を思い出した瞬間、彼女はわかってしまった。
ヴァイスがこの街に、ランバード元騎士団長を討つために戻ってきた本当の理由を。
「・・・いくぞ、ダブルペイン。復讐の刃は今この時のためにあり」
ダブルペイン
大砲型魔銃を装備したメイル。サイズは普及している通常メイルと同じ。
中身もほぼ同じである。元々この国で使われている騎士団用のメイルを素体として改修されたものである。装甲のデザインはかなり変更を加えられたが出力などはあまり変わっていない。
最も、この国のメイルは旧時代からあまり手を加えられていないもののようであり、他国のメイルに比べると出力は高いものである。それ故に、両腕を使う事にはなるが大砲型魔銃の運用に耐えれる設計となっている。
また、このメイルには作った技術者の独自装備が付けられている。