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第六話:国王の望み、騎士団長の望み

ヴァイスから衝撃の報告がされている頃。

王城で一つの事件が起きようとしていた。



時刻は深夜が終わり、もうすぐ日の出といった時間。

ファステリード国王は一睡もせず、王城のとある部屋にいた。


その部屋は、女性の部屋であった。数年前から手入れだけは欠かさずに行われている、第一王女の部屋であった。

税を尽くすことを嫌い、王女の部屋としてはあまり装飾の無い部屋。

王家としてというより貴族として最低限といったレベルの家具が必要数だけ置かれた部屋。


生前、彼女がよく身支度をしていた化粧棚の前に国王は下を向きながらジッとたたずんでいた。

その視線の先には、白い箱に納められた赤い宝石で作られたペンダントが収められていた。

最も、そのペンダントは半分であった。

それでも、彼女はそのペンダントだけは毎日のように手入れをしていた。

国王もそれを見知っていた。その時の彼女の、心の底から幸せそうな表情も。


(今だにわからない。なぜ、お前が死ななければならなかったのか?親衛隊の男がお前に恋心を持っていたことも知っていた。

だが・・・それはあの話をしたタイミングで解決したと思っていたのに・・・なぜ、あの男はお前を)


国王はずっと、それこそこの5年間、公務の無い時間はずっと考え続けていた。

時間のある時は、娘を殺害した親衛隊の男の身辺調査も直々に指揮をしていた。

だが、この5年間、決定的な証拠は見つかることがなかった。


それでも、彼は娘の死の理由が知りたかった。知ろうと思った。

今でもその思いは止まらない。


彼はそれをペンダントの前で再確認し・・・部屋を退出した。



そして少しでも目をつむろうと思い部屋に向かおうとしたとき


足音が響いてきた。



彼が後ろを振り向くと、廊下の向こうから一人の男が歩いてきていた。

騎士団の者として、鍛え上げたがっしりとした肉体。年齢的には高齢と言っても過言ではないがそんな雰囲気などないしっかりした足取り。

ファステリード国王が最も信頼していると言って過言ではない男が、ゆっくりと歩いてきていた。


「どうしたかな?このような時間に」

疲れた雰囲気を見せないようにし、国王は質問した。

それに対して男は一度目を伏せ・・・そして


「お別れを言いにきました、陛下」

目を開いたときはっきりとその言葉を口にだした。


「・・・それは、どういうことだね?」

国王は動揺していた。

この男を信頼していたが、この男の信頼を失ったのだろうかと。

しかし、次に帰ってきた言葉は彼の予想していなかったものであった。


「言葉通りです。私の野望の為、貴方には消えていただく。これよりこの国は私のものとなる」

「な・・・なにを・・・」

「アリュシア王女が死に、刺客を差し向けた秘匿された第二王女リシリアも恐らくは。後は貴方がいなくなれば王家の血はなくなる」


「リシリアに刺客を・・・だと!?どういうことだ!ランバード騎士団長!!」


その発言に、ランバードは過去を思い出すように言った。

「アリュシア・・・あの女が私の計画初期段階通りに言うことを聞けばよかっただけのことなのにな」





3年前の王城


その日は、アリュシア王女の誕生日だった。

王城は盛大ににぎわっていた。


そんな中、アリュシア王女は自室に化粧直しに戻っていた。

そこに「話があります」とやってきたランバードがいた。


「・・・今、なんと言いましたか?」

バルコニーに出た王女にランバードが言ったセリフ。

「この国の未来の為、私の伴侶となっていただきたい」

「この国の未来の為?・・・あなたの未来の為ではなく?」

「そう受け取っていただいても構いません。私がこの国の国王となるためと言い換えてもいいでしょう」

「つまり・・・私はそのための存在だと?」

「左様。無論、このような手段を選ぶ以上御身に手を出す気はありません。私に王権がうつった後は王女の身は望まれるように」

「そうですか・・・」

アリュシア王女はバルコニーから海を一瞥、振り返り、真剣な表情をして言った。

「申し訳ございませんが、お受けできません。私には心に決めた方がおります。たとえそれだけの理由だとしても、この身を他の男に差し出す気はございません。

それが、野心からくるものであるなら尚更に」


「・・・そうですか。残念です」

そう言い、ランバードは懐に手を忍ばせ


そこに入れていたナイフを、王女に投げた。

その刃は狙いたがわず、王女の胸に突き刺さった。


「・・・あ」


その一言の後、アリュシア王女の体は後ろに倒れ・・・海に姿を消した。


その光景を見ていたランバードだったが、しばらくして誰かがこの部屋にやってくる足音が聞こえた。

部屋の出入り口を見た時、そこに現れたのは近衛騎士の男であった。

「ランバード騎士団長、アリュシア王女が中々戻られないので様子を見に来たのですが・・・王女はいずこに?」

心配そうな表情をしながら、彼は歩いてきた。

ランバードは目の前の男に怒りの感情を持った。このタイミングでやってきた男、こいつが自分の計画の支障を生んだのかと。

そう思い、ランバードは視線をバルコニーに向けた。

不審な表情をしながらも、近衛騎士はバルコニーを見るためにランバードの隣にやってきた。


次の瞬間、ランバードは腰に下げていた剣を抜き、男の胸に突き刺した!

「がはっ!?・・・なぜ・・・?」

その言葉を最後に、男は倒れた。


「お前には、王女殺害の主犯になってもらう。私の計画に修正が必要になるのでな。その時間稼ぎをしてもらうぞ」

そう言い、ランバードはその場を走り去った。


アリュシア王女誕生日、そのめでたい日に起こった、最悪な事件であった。




「・・・なんということだ」

ファステリード国王は愕然とした。

まさか、自分の最愛の娘を殺したのが、自分が最も信頼していた男だったとはと。



「あの時、王女が私を拒絶しなければこのような手段を使うこともなかったものの・・・」

ランバードは剣を抜きながら、国王に歩み寄った。

それをただ、国王は呆然と見ていた。


(わしが間違っていたのだろうか・・・この男を信頼していたことが・・・この男を・・・)

そう思った時、国王にある感情が浮かんだ。

このまま、何も真実を話すことなく終われない、と。


しかし・・・少し遅かった。


「私は、お前を・・・っ!」

そう口に出した瞬間、胸に激痛が走った。


視線を向けると、自分の胸に突き立てられた剣が目に留まった。

視線を上げると、ランバードの無表情の顔が目に入った。


それが、ファステリード国王の最後に見たものであった。



床に倒れる国王、その姿を背にランバードは歩き出した。

「・・・もはや、後戻りなどできぬ。私は、私の道を進むのみ」

そう言い、彼は歩いた。


この3年、誰にも気づかれないように密かに進められた計画。

最も注意して作業を進められた、自身の力の象徴とするために作り上げさせたメイル。


魔力弾に反応して防御行動を自動で行う両肩の盾。

ファルサラよりもたらされた、通常より大型化された両腕に装備された大砲型魔銃。

それを扱うために、同じくファルサラよりもたらされた「複数の精霊炉」を搭載した通常より大型化したメイル。


彼の力の象徴「ラー・ファステリード」。この世界の意味に当てはめるとするならば「新たなる王国」。


それに乗り込み、やってきた場所はこの王城の名物とされる場所。

人々の休息の場所、海を眺めれる巨大庭園。


メイルが立つにふさわしくないその場所。

彼が「力こそ正義と示す国を作るにふさわしくない場所」としたそこより



ランバード新国王の、野望開始の宣言がされたのはちょうど海面向こうに日の出がでた時であった。


ラー・ファステリード


通常のメイルより少し大型に設計されたものである。

両肩の自動防御設定のされた盾で攻撃を防ぎ、両腕に搭載した大砲型魔銃による攻撃。

運用方法としては「拠点防衛用」といった感じであろう、立ち止まっての固定運用を想定しているものである。


複数の精霊炉を使用することで盾の運用を実現させているが、実質的に本体を動かしている精霊炉は1基だけである。それ故に巨体ではあるが出力自体はそれほど差がない。大砲の反動に耐えれるように重量を増加させているので動き自体も通常に比べて遅くなっている。その分、装甲を厚くすることによってその欠点を克服しようとされているようである。

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