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第五話:野望の影、1つの思い

「ランバード騎士団長がそのような計画を立てているなんて・・・冗談では済まない情報ですよ?」

驚きながらもリシリアは冷静に考えて、そう質問をした。

それに対してヴァイスは頷き、続きを話し始めた。


「ランバード騎士団長は元々そんな野心のある人ではなかった。それは俺も知っている。

俺たちのように暗部として活動している者でさえも気にかけてくれ、時には便宜も図ってくれていた。

身内に関係する調査が入った場合は、当事者の者に参加の辞退を自ら進めて来ていた。

本当に、騎士団長になるべくしてなったと言っていい人物だ」

一度目をつぶった後ヴァイス・・・次に開かれた彼の目には、どこか悲しむような感情があった。

「本当に、あの人のためならどんな任務にも頑張れる。そう思える人だ。

だが・・・ランバード騎士団長は変わってしまった。転機となったのは、とある大国から持ち込まれたメイルに関する技術だった」

「メイルに関する技術・・・それだけで、彼の心変わりがするのでしょうか?」

リシリアが首をかしげる。

「実際に変わってしまったのですから、そうとしか・・・この話が真実ならですが。

続きをお願いできますか?」

アトナがそう促すと、ヴァイスは続きを話した。


「大国から持ち込まれたとはいえ、ただの技術者が持ち込んだものならそうはならなかっただろう。

だが・・・それが『ファルサラ』で過去に行われた『貴族位』に関わる貢献度争いにて最終選考まで行った技術だった」

「「!?」」


大国ファルサラ。


この大陸において最大規模を誇る国であり、メイル誕生の国とされている技術大国でもある。

今はほとんど行われていないそうだが、過去においてはメイルの技術争いが頻繁に起こっていたそうだ。

それはいつしか、貴族同士の争いに発展しそうになった。「どちらがより国に貢献できるか」ということで。

それ故に、当時の国王が貴族たちに勅命を与えた。

「メイルにより大国にまで上り詰めた国の貴族。その者たちがこの国に貢献できる証明をするならメイルに関することであろう。

貴族たちよ、技術者たちと協力し・・・この国のこれからの未来を支えるための技術を新しく開発するのだ。

その功績が認められた時、求める爵位を与える」


簡単に言ってしまえば

「大変すばらしい技術を作ったね。爵位は何が欲しい?じゃあ、それを上げよう」って感じ。


実際、最終選考まで残らなかったとしても大きく貢献するものだと判断された子爵が伯爵に昇進したりしたそうだ。


そして、今回持ち込まれた技術が行われた最後の技術審査会の時のものだったそうである。

「さすが大国と言えるような技術ではあった。いうのは簡単だが、それをくみ上げるための土台がなかったからな。

それを作り上げ、完成されたその技術は・・・騎士団長に野心を与えるには十分の代物だった」

「そうですか・・・」

リシリアは、話を聞いて納得した。

しかし、ヴァイスの表情はすぐれなかった。

「俺が見ても、確かにこれを使えば同レベルの国相手くらいまでなら戦況を一片できると思えた。

ある程度の戦力差なら覆せるとも。・・・だが、この技術には欠点があった」

「欠点ですか?」

アトナが疑問に思う。あの大国が作り上げ、多くの者が絶賛する技術の欠点とは・・・と。

「ああ。ある意味致命的ともいえる欠点だった。後になって俺はそれを知った。

だが・・・彼は、あの技術者はそれにいち早く気づいていた。すぐに騎士団長に進言したが、彼はその技術に完全に取りつかれていて話を聞かなかったそうだ。そればかりか、その技術者が持ち込もうとしていた発明には見向きもしなかった。『この世紀の発明を言っていい技術の理解できない者の話など聞く価値もない』と」

「それが、なぜ騎士団の捜索対象になるのでしょうか?話を聞く限りだと、ランバード騎士団長にその技術者を探す必要を感じないのですが・・・?」

「それに話がややこしくなってきましたね。

ひとつ、騎士団長が昔技術者を解雇した。

ひとつ、貴族に命令して技術者を探させていた。それが集団失踪事件に関係していた。

集団失踪したとされているのが、あやしいと思われる技術者ばかり。

ひとつ、対象の技術者が騎士団長の野心の証拠を持っている。

・・・あれ?」

アトナが途中で何かに気づいた。

同時に、リシリアも一つのことに気づいた。


「もしかして・・・貴族はその技術者のことを知らなかった?騎士団長の『調査進歩』というのがその技術者の捜索だとするならばそうかと。

それ故に、話を聞いて『国のメイル開発に関係した事のある技術者』を片っ端から捕えた。それならほとんどの人物が該当します。そして、騎士団長が技術者を探していた理由・・・彼が本当に計画を立てていたとしたらその証拠品を持っている」

その説明に、ヴァイスは頷いた。

「その技術者、ほとんど表には顔を出さなかったようで本当に研究室にこもりきりだったそうだ。

なので、王城に勤めていなかった地方貴族のほとんどは彼の顔を知らない」

「なるほど・・・そう考えるとつじつまが合います」

アトナが頷き、情報屋を名乗っていた男の方を向く。

「ただ、その情報とこの方々がリシリア様を狙った理由は繋がっていると思えません。2人に接点がないのですから」

そう言い、ヴァイスを向く。

「改めてご質問します。この接点のない2つの案件を繋げる理由に騎士団長の名を上げた理由を教えてくださいますか?」


そう。ここまでの説明では「騎士団長が新技術を手に入れて野心に火が付いた。それを知る技術者を探している」ということがわかっただけ。

「情報屋を名乗る者たちが秘匿されていた第二王女を殺害しようとした」指示者とつながる話はでていない。

ヴァイスはそれを聞き、頷いた。

「もしランバートが主犯だとするなら、次に彼の起こす行動はクーデーターだ。この国の王家を根絶やしに、主権を得る。そうして自身の得た技術を推奨し、戦力の拡大を加速させる。その後は近隣国への宣戦布告だ」

「王家の根絶やしだとするなら、リシリア様が狙われる理由は納得できます。しかし、その存在は秘匿されておりました。いったい・・・?」

アトナが疑問に思っていた時、リシリアがあることに気が付いた。

「・・・もしかして、あの写真に気が付いた?」

「あの写真?」

ヴァイスが聞くと、アトナが何かに気づいた表情をした。

「もしかして、それはただ1枚だけ存在している『第一王女と第二王女が国王と一緒に写った写真』でしょうか!?」

その発言に、リシリアは頷いた。


「あの写真は、確か姉の部屋にあったはず。もしかして、その写真に気が付いて国王を問い詰めたとしたら・・・姉を失ったことで心身共に衰弱していた王ならば話してしまっていても・・・」


「恐らく間違いないと思うぞ」

情報屋の男が言った。

「俺たちに渡された人物像は『絵』だった。写真はないのかと聞いたら『生まれてしばらくしたころの写真しかない。その頃の面影と姉妹の面影から想像で描かれた絵だ』と説明された。話を合わせると、間違いないと思う」

その説明で、話が繋がった。


「ランバート騎士団長は、王家の簒奪を企んでいる。目的は、自身の野心の為。それ故に、秘匿されている第二王女を含めて王家の血を根絶しようとしている。

逃走した技術者はそれを決定づける証拠品を持っていると。貴族に騎士団本部から技術者の捜索が依頼されていたのはその証拠品を何としても消したかったから」

リシリアがそう言う。

アトナが頷き、ヴァイスに1つ質問した。

「・・・技術者の掴んでいる証拠品というのは、どのようなものかご存知でしょうか?」

ヴァイスは頷いた。


「新型メイルの開発計画書。ファルサラからもたらされた技術を最大限に生かすためのものだ。だが、そのメイルの製造には既存のメイルの倍以上の費用がかかる計算だった。騎士団長の権限だけでは簡単に実行できないであろうもの。それ故だったのだろうな、一緒にまとめて置いていたもう1枚の計画書の存在が秘匿されなかったのは」

「それが・・・」

「そうだ。王家簒奪のための計画書だ。もっとも、その中に第二王女の情報はなかったから、今焦って外部に依頼してまで行動しているんだろうが」

なるほどとリシリアは頷いた。

「そして、後にランバード騎士団長が3年前にすでに計画を動かすしかない状況になっているという証拠品も手に入れることになった」

「それは?」

リシリアが不安そうに聞くと、ヴァイスは一瞬言うのをためらったが・・・意を決したように話した。



「王城勤めのメイドが記録魔道具に納めてしまった映像。その映像の中でランバートは・・・第一王女を殺害していた」



それは、その場にいる全員に衝撃を与える内容であった。


「知り合いがいると言っただろ?その伝手でそのメイドが俺を探していたから保護した。そのメイドは、先に話の出た近衛騎士の恋人となった人物だ。そしてその騎士もまた、ランバードに殺害されたそうだ」


ファルサラは、メインの方で出ている国の一つです。


この世界で最初にメイルを開発した国とされている大国。国土、技術力、人材、そのほかあらゆる面でこの大陸で最高峰とされている。

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