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第18話 拾われなきゃよかった!

「じゃあ、ご飯も食べたことだし、オレが眠らせてやるよ」

 ガキも家に連れ帰ってきたことだし、とりあえず寝かせておくか。

 オレは、アウローリアを羽交締めにする。

 そして右手で彼女の肌に──


「何この変態! ノクシア! どうしてこんな男と交渉なんてしたの?」

「お前の夜更かしをしてもらうためだ。それと、俺のことは『お母さん』と呼べって言ってるだろ?」

 巨女は、やれやれとため息を吐きながら皿を洗う。もちろん、『魔法で』だ。


 キッチンに浮かぶのは水でできた球体。

 その中に浮かんだ食器はぐるぐると回転している。

 傍には食卓を拭いたりなど、雑務をするモネア。

 オレはと言うと、

 リビングの隅で、ロリを拘束して強制睡眠する真っ最中だった。


「矯正って何! お母さんだって今朝、朝まで起きてたでしょッ?」

「今はお前の話をしているんだ、アウローリア。ちゃんと寝て、睡眠値を稼いでほしいんだよ、俺は。だから──」

「いつもそうだよねッッ!」


 するり。

 と、オレの腕から抜け出すロリ。

 あ、今オレ韻踏んだなチェケラ。


「お母さんはいつも、自分の意見を押し付けるだけ。どうせアウのことなんて、『自分の研究を引き継ぐ素体』とでも思ってるんでしょ?」

「そんなこと──」

「うるさいうるさい! こんなことなら、ノクシアなんかに拾われなきゃ良かった! 実の子でも無いのに、一々口出しして!」

 そう吐き捨て、アウローリアは自分の部屋に閉じこもる。

 その寸前──


 オレは凄まじい速さでロリに追いつき、再び羽交締めにした!

「離して変態男! 空気読んでよ!」

「はっは、オレから逃げられるワケないだろ、ガキが」


 するとモネアがオレの肩を叩いた。

「空気読めって言われてもな? モネアはオレ側だよな?」


「フェイン、空気読みなさい。こういう時はそっとしてあげるものよ」

「唐突に外された梯子ッ……!」


 ど、どこかにオレの味方はいないのか?

「いや、ロリに一人の時間が大切なのは確かだ! けど、オレの能力で眠って朝になれば、衝動も冷めるハズ。変に悩んで色々拗らせるより、寝てリセットした方が良いだろッ……?」


 そうだ。

 アウローリアの親……!

 『アンタに拾われなきゃ良かった』なんて、あんな酷いこと言われたんだ!

 流石にオレの味方してくれるだろ!

 オレはキッチンの巨女を見上げた……!


「さっきのは『無い』だろ、客人。流石に俺もドン引いたわ」

「あんな暴言の後に子の味方できんのッ? それはもう最愛だろ……! アウローリアも認めてやれよ、親の愛を!」


 その時、家の奥から現れるラナ。

「お風呂出ましたよ〜。フェインさんもどうですか? あ、さっきの行動サイアクでしたね〜」

「風呂上がりの人にもダメ出しされんのッ? もはや話聞いてなかったろお前ッ!」


「とにかく、『アウローリアを解放しなさい』これは命令よ」

 すると、モネアの発言に首輪が反応する。

 何かオーラのようなものがオレの体に作用し、自然と体が弛緩した。


 刹那、オレの腕から抜け出すアウローリア。

 そして彼女は、今度こそオレから逃れ、自分の部屋に閉じこもった。


「確かに、人生には一人の時間も必要だ。けど、アイツの悲しみは一人で背負えるものなのか……? オレはかつて『見てきた』んだ」


 社畜だった頃、オレは見てきたんだ。


「一人で考え過ぎて、精神のバランスを崩したヤツを。少し心配なんだよ、アウローリアが。だから、少し様子見てきていいか?」

 その問いかけには、三人とも静かな微笑みで返してくれる。


 良かった〜!

 さらにダメ出しなんてされたら、泣きながらこの町を破壊し尽くす以外なかったからな。


「ホント空気読めないわよね、アンタ」

 いつの間にか、モネアはオレの隣まで来ていた。


 ハァ〜?

 この女、わざわざまたダメ出しを?

 二回攻撃アビリティ持ちか……?

 すると。


「でも──」

 モネアは呟いた、他の人に聞こえないような声で。


「他人のために何か行動しようとしてる──そういうところは、評価してなくもなくなくないわよ」

「え、何て? 告白?」

「ああもう! 『そういうとこ』よ! 私のことなんてどうでもいいから! さっさと様子見てきなさい!」


 オレはモネアに蹴り飛ばされた。

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