第13話 国を侵す悪夢!
「姫騎士さまが、国王夫妻を殺めたマンティコアだという噂?」
オレは鎧を着た大男に訊き返す。
「ええ。そのため王都では、その……姫騎士様を玉座から下ろそうとする動きが……」
言いづらそうに大男は語った。
確かに、これは報告しづらい話題だよな。
にしても、
こうもタイミング良く──あるいは悪く噂が流れるなんて不自然過ぎだ!
絶対、裏ボスとかのフラグ立っただろ!
魔王倒したことで!
「やられたわね」
首輪のチェーンを弄りながら、モネアは顔をしかめる。
「姫騎士である私と、その親衛隊──つまり、『現王政を支持する主な人間』は、魔王討伐のため国から『出払っていた』」
「だからこそ、か」
オレはモネアの発言に深く頷く。
頷き過ぎて首がもげたわ。
「だからこそ、この日に、旧王政を支持するヤツらが革命を起こそうとした」
「そうなんです、姫騎士様。今、王都・ストレングォルスクでは、民意も分裂。このままでは紛争が起こることもありえます! それどころか──」
大男は言葉を飲み込み、神妙な顔で沈黙した。
「『それどころか』何かしら? 許可するわ、続きを進言しなさい」
「そ、それどころか……! 姫を魔物だと言う連中から、『命を狙われる危険性』も……!」
「つまり、こういうことだな? 『直ちに国へ帰り、民の動揺を鎮める必要がある』けれど『国へ帰れば命を狙われる』」
要するに──
「国か自分の命か──どちらを選ぶか迫られている状況ってワケだ」
「言うまでもないわッ! 私が大切なのは国と民──そしてかわいい妹。それだけよ!」
凛と言い放つモネア。
けれど、その表情には少し不安が滲んでいた。
そりゃそうだよな。
一気に状況がひっくり返ったんだ。
不安に感じて当然だ。
オレも、納期直前に倍の仕事量を要求された時は、泣きながらキーボード叩いたもんな。
「とにかく、親衛隊たちは先に王都へ戻りなさい! 私も後で向かうわ!」
「ですが姫騎士様、魔王の討伐は……?」
「魔王討伐は、私一人でどうにかするわッ! 今はもう夜更け。既に目覚めた後だろうケド──」
モネアは意を決した顔で、剣を引き抜いた!
もしかしてコイツら、知らないのか?
『オレが魔王をまた眠らせた』ってコトを!
それもそうか。
オレ、誰にも言ってなかった!
魔王寝かしつけたこと!
「私一人の命で国が救えるなら本望だわッ!」
「姫騎士様ァ〜ッッ!」
儚げに微笑む姫騎士。
号泣する大男。
「副隊長、国と妹をよろしくね……」
「姫ッ騎士……ひっぐえぐ、様ァ〜ッッ! ズビッ!」
「副隊長、貴方みたいな兵士が親衛隊で良かったわ……」
「おッ、おああ、おあッ……! 姫様ッ……!」
やっべ〜!
なんか感動的な雰囲気になってるけど、魔王オレが倒しちゃったんだよな……。
ここで指摘するのも、なんか空気読めないみたいになるし……。
とりあえず、
この場は合わせとくかッ!
「いやー、泣けるぜ。アンタ最高の姫騎士だよ、ガチで」
オレは目頭を押えながら、姫騎士さまに親指を立てた。
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