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最期に

「…クス…!おいエクス!!」


「ハッ!!!ここはWho?僕はWhere?」


「多分それ逆」


あの後の記憶がない。

寝てしまったようだ。


「おはよう。もう朝だよ。」


「朝起きて様子を見に来たらほぼ死んでたからな、お前」


「死んでた割合をパーセンテージで言うと?」


「うーん、2億。」


「Wow!Do you know 百分率?」


言うてる場合か。

幸い、一晩寝たら覚えた内容がすっぽりなくなってしまうようなことは無かった。


これで実践練習に入ることができる。


僕たちは着替えると、寝癖も直さずそのままディアブロさんの家に直行した。

扉を軽くノックする。


すると中から小さく。


「入れ」


という声が聞こえた。


声のした方向から察するに、恐らく2階にいるのだろう。


僕は書斎へ向かった。


だが、書斎には誰もいなかった。

ここじゃないんだったらどこから声がしたんだ?


「おい。こっちだ。」


その声に振り返ると、ドアの開いた寝室から上体だけを起こしてベッドに横たわるディアブロさんが見えた。


「すまんな。思ったよりも体調の方が芳しくない。」


「いえいえ、ご無理はなさらないでください。」


「歩けるんだったら空を飛ぶところを見せてやれたかもしれないが、今は無理そうだ。」


彼は時間がない、と仰った。

それが何を意味しているかは、火を見るよりも明らかであろう。


「それか、今すぐ死んだら浮いてるところを見られるかもな。ガハハハッ」


ディアブロさん、それ笑えないですって。


「冗談はここまでにするとして、飛ぶのに必要なコツを教える。」


それを聞き、僕は緩んだ心を引き締めなおす。


「お前、高所恐怖症はあるか?」


「いえ、ありませんけど…。」


「そうか。飛ぶ際、怖いと思ってしまってはいけない。恐怖のみならずその他の感情もすべてシャットアウトして、リラックスした状態で魔法を使用するのが鉄則だ。」


感情をシャットアウトして、リラックス…。


「感情の乱れは魔力の乱れだ。魔力のエネルギーを形を変えずにそのまま放出する。魔力が乱れると飛行にも影響が出る。」


なるべく平常心であり続けることが大事ってことか…。


「よし、では本格的な飛び方の説明を始める。」



彼が言うには、飛翔魔法とは魔法とは言っても従来の魔法とは形式が全く異なるものだそうだ。

人は魔法を使用するとき、無意識のうちに魔力というエネルギーの形を変えているのだという。


それを形を変えずに放出するために、前述した平常心が必要になるわけだ。


魔力の個性を消す…とでもいうのだろうか。


300年間、様々な魔法使いと接してきた魔力。


魔法使いは自分に合うように、魔力の形を変えながら使ってきた。


その適応によって生まれた個性を取っ払い、魔力本来の形で使用するのである。


「スーッ…。ハーッ…。」


深呼吸をして心を落ち着かせる。


魔力を感じ、なるべく干渉しないように放出…!


「おお!飛べた…イテッ!!!!」


「室内でやるとかバカなのかキミは?」


ごもっともです。


僕は勢い余って天井に頭を強打した。

でも、できるぞ。できるぞこれ!


「ちょ、ちょっと外でやってみます!!」


「人に見られんようにウチの庭でやれ。この魔法は私が極秘で開発した物だ。民間に知れ渡ったら敵わん」


「はい!分かりました!!」


「全く、返事だけはいいな。…さて。」


「なんですか?」


「いや、なんでもない。行っていいぞ。」


若干の違和感を感じながらも、僕は彼の寝室を後にした。



一階に降り、2人を呼ぶ。


「飛べるようになりましたよ!!」


「マジか。見せてくれよ」


「室内でやれとかグランはバカなんですか?」


「おう、殺されてえか?俺も会話聞いてたからな?室内で飛んだのはお前だろうが」


バレたか。


裏口の扉を開け、庭に出る。

ディアブロさんの家の庭はとても広く、キャッチボールくらいなら不自由なくできるだろう。


そのくらいの広さがあった。


これならちょっと失敗しても周りに被害が及ぶことは無いだろう。


「ではいきますよ~!ハッ!」


何も起きない。


「え、大丈夫?飛ぶっておクスリやるって意味じゃないよね?」


んなわけないでしょ。

落ち着いてもう一度だ。


今度は2人に見せようなんて思わない。


平常心、そしてリラックス。


魔力を放出する。


「「おおー!!」」


そう驚いた2人の声が聞こえないほど、僕は集中、そしてリラックスしていた。


しばらく浮遊感を味わったのち、ゆっくりと地に足を付ける。


「よし、これでシンヤ救出に行けるな。」


待っててください、シンヤ。


今行きますよ…!





帰る前にディアブロさんにお礼をしようと彼の寝室の扉をノックする。


だが、いつまで経っても返事がない。


扉の『ギィィィ』ときしむ音を響かせながらゆっくりと寝室に入る。

ディアブロさんは、寝ているようだった。


ベッドの枕元には、先ほど僕が返した飛翔魔法について書かれた本が置いてあった。


その上にはなにやらメモ書きが。


『天から迎えが来たようだ。この書籍はエクス、お前の名義で出版するといい。私の魔法を、ぜひ後世に伝えていってくれ。』


「ディアブロさん…」


「脈がない。つまりそれは…そういうことだな。」


本当にギリギリだった。

でもこのギリギリを制したことで、仲間の命が助かるかもしれない。


「ディアブロさん、ありがとうございます。」


その声を受けた彼の顔は、少し微笑んでいるように見えた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ディアブロさんとしても最期の最期に今までの研究を託せる相手が見つかって嬉しかったんじゃないかな(*'ω'*)
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