ワークアウト
翌朝。
結局あのまま結構飲んでしまったので、若干頭が痛い。
あの後、ちょっと頭のよろしくない3人組に隔離措置でビリヤードをやらせていた事がバレ、危うく取っ組み合いになるところだった。
特にエクスは。
『今日は!!!奢ってくれるって言ったじゃないですかぁ!!!』
と泣きだす始末。
見かねたバーテンダーさんは。
『今日は閉店ですぅ~。まだ時間じゃないけどなんとなく閉店ですぅ~。』
と、内心バチギレであっただろう。
出禁を食らわなかっただけマシである。
普段は温厚だが流石に怒ったケンさんは、3人を部屋に連れて行き風呂場で正座させた。
その後1時間くらいは音沙汰なかったので静かにキレ続けていたのであろう。
その間俺は夜の海と星空を眺めながら1人グラスにビールを注いでいた。
バスローブも部屋に備え付けられていたので赤ワイン片手に富豪ごっこでもしようかと思ったが、赤ワインを切らしていることに気づいたのでビールで妥協したのだ。
まさか、自分がこんなにも酒好きになるとは思わなかった。
昔から美味しそうだなぁとは思っていたが。
さて。
今日は特に予定はない。
というかこの2週間の船旅、特に予定がないのだ。
この船の中にある娯楽施設といえば、昨日行ったプール、ビリヤードやダーツくらいのものだ。
船内の娯楽を1日で使い果たしてしまうとは、なんという失態。
もっとペース配分考えておくべきだった…!
…いや、待てよ?
よくよく考えてみればアレも娯楽施設になるかもしれない。
「なあシンヤ。今日何すんの?」
グランが俺に問いかける。
よくぞ聞いてくれた。
「今日はな…合同トレーニングだ。」
この船にはもう1つ娯楽施設になりえるものがある。
そう、ジムだ。
昨日部屋に帰ってくる際分かったことなのだが、カマロさんたちの部屋は俺たちの部屋の隣であった。
その隣の部屋にノックをする。
「ふぁ~あ。なにごと?」
ベッドの上でブレイクダンスでも踊ったんじゃないかと思うレベルの寝癖をつけたカマロさんが応答した。
「おはようございます。もう11時なんですけど。」
「オレデフォルトが12時間睡眠だから…」
長すぎだろ。
「何かご用ですか?」
その奥からルミナさんがひょっこりと顔を出す。
「いや。今からウチはジムでトレーニングしに行こうかと思うのですが、良ければ一緒にどうかなと思いまして。」
それを聞いたカマロさんは無言で扉を閉めようとする。
「結構で~す」
「ほら、私は行きますから一緒に行きますよ!!」
そのカマロさんを必死に食い止めるルミナさん。
「い~や~や~!!!筋トレき~ら~い~!!!」
子供か。
いや、無理にとは言わないんですけど。
それにしてもルミナさんのやる気がすごい。
表情に決意がこもってる。
そりゃそうか。
筋トレが好きでなけりゃあんな重いハンマーを軽々と使いこなすパワーなんて手に入るわけないもんな。
一体どんなトレーニングをしているんだ?
参考にさせてもらおう。
「…ッ!…ッ!ふぅ。これ効きますね…」
い…1キロのダンベルをハァハァ言いながら持ち上げてる…。
ジムに着いた俺たちは、これまでに自分がやってきたトレーニング方法などを話しながらトレーニングに励んでいた。
カマロさんの今までやった中で一番辛かったトレーニングが腕立て10回というのにはみんな流石に驚きを隠せなかった。
それであの強さ。
俺が今までやってきた筋トレの数々は一体…。
そして、ルミナさん。
とにかく力が弱い。
2キロのダンベルを持ち上げるのに四苦八苦し、今は1キロのダンベルでトレーニングをしている。
え?なんであのハンマー持てるの?
あれ発泡スチロール製?
さて、俺が向かったのはベンチプレス。
力自慢がこぞって挑戦するこの種目、果たして俺は何キロ上げることができるかな?
まず男性の平均と言われる40キロ。
「お、結構イケる」
クリア。
行けそうなので一気に飛んで70キロ。
「これは…キツい!!!」
ギリギリクリア。
75キロいってみるか!
「グググググ…だはー!!無理だこれ!!」
いやー、しんどい。大胸筋はあったほうがカッコいいし、今後は胸トレやるかぁ…。
「お、ベンチプレス?おれもやってみていい?」
天を仰いでいる俺に話しかけてきたのはケンさんだった。
この人はすんごい上げそうだな…。
俺は起き上がり、場所をケンさんへ譲る。
するとケンさんはものすごい勢いでバーベルに重りを追加していった。
その重さ、200キロ。
「いやいやいや、無理ですって。いくらケンさんでもえええええ!?!?!?」
俺が話し終わる間もなく、軽々と持ち上げて見せた。
いやー。すごいもん見れた。




