夜遊び
夕食を食べ終え、一旦部屋へ帰る。
俺は部屋に入ると真っ先に洗面台へと向かう。
「どれどれ…お!落ちてるー!!」
漬け置きしていた俺の服は、見事に生き返った。
「よかった…よかったよぉ…」
濡れたままの服に頬ずりをする。
ビチョビチョで気持ち悪いとかは思わない。
俺はこの旅に2着しか外着を持ってきていないので、無事に生き返ったくれたことが何より嬉しいのである。
昨日着た、洗濯して干してあったもう1着の服が乾いていたので、漬け置きしていた服と交換する。
寝巻きから干してあった服に着替える。
今から俺たちはバーに行く。
流石に寝巻きであのオシャレな空間に行くのは無いだろう。
バーにはビリヤードやダーツが隣接しており、まさにオトナの遊び場といった感じだ。
「お待たせー…ってどうした?」
仲間の元へ戻ると、全員若干引いた感じの表情を見せていた。
「いや…濡れた服に頬ずりは無いだろ…」
あーね。あれね。
「俺は物を大事にするからな。」
自分でも若干何言ってるか分からない答え方をしながら、みんなと一緒に部屋を出る。
バーは人生初なので楽しみだ。
バーでのマナーは一応だが少しは頭に入っている。
まず初めに、勝手に席に座らない事。
席に案内されるまで待つのだ…
「おー、この椅子回転する」
…やってくれたなあのバカ。
まあいい。
「すみません、4人です」
人数を伝え、席に案内される。
どんなお酒があるのか気になるところだが、ここで2つ目のマナー。
目の前のボトルを勝手に触らない。
1本何万、場合によっては何十万もすることがあるボトルだ。
壊してしまったら土下座じゃ済まない。
だから絶対に触っては…
「僕この瓶の色めっちゃ好きです」
「わかるわー」
なんか…その…うん。もうどうでもいいや。
ふとバーテンダーさんに目をやると、100点満点の苦笑いを湛えていた。
いやもうマジですみません。
こいつら、シラフでこれだからな。
呑ませたらどうなるか想像もしたくない。
今日は2人(特にエクス)を早めにビリヤードに誘って時間を潰す…。
その作戦でいこう。
そんな決意を抱いていると、後方から嫌な予感が。
「あれ?よく会うね、キミたち。」
もっとヤバい人来ちゃったーーーー。
終わった。THE END。Fin。梶原慎也先生の次回作にご期待ください。
しかもルミナさんいないじゃん!!
あの人が頼りだったのに…。
「ルミナが寝たからもうオレを止めるものはいないんだよお!!」
皆さん、ここバーです。
バーなんです。
皆さんバーといったら何を思い浮かべますか?
カッコいいバーテンダーさん、キレイで美味しいカクテル、カウンターの向こう側に敷き詰められたお酒の瓶。
現実はこうです。
常識知らずの成人男性(×2)、頭のネジが外れている成人男性(×1)、そしてなぜかさっきからずっとダーツやってる本来まとめ役になるべき二児のパパ(×1)。
俺、ただ単に美味しいお酒飲みたいだけなんだけど。
知らない人のふりするか?
いや、それだとバーテンダーさんに迷惑がかかる。
…なら。
「第1回!!!船内ビリヤード大会、開幕!!!!!」
俺は腹から声を絞り出し、高らかに開幕を宣言した。
「ルールは簡単!振り分けられた自分の番号以外のボールをポケットに落としていき、最後まで自分のボールが残っていた人が勝ち!!以上!!」
半ばヤケクソになりながら大声を出す。
その声が聞こえたのか、辺りからぞろぞろと人が集まってきた。
観客もできたことだし、始めようか。
プレイヤーはグラン、エクス、カマロさん。
勘のいい方はお気づきであろう。
これは俺とケンさんがゆっくりお酒を飲むために組んだ試合である。
集まった観客たちの最前列にいた俺とケンさんは、3人にバレないようにその列から抜ける。
そして後ろに併設されたバーのカウンターの方へと向かう。
「ど…どうぞお掛けください…」
バーテンダーさんは引きつった顔で俺たちを席へ案内してくれた。
本当に申し訳ありません。
「さっきは連れが本当にすみません。俺、バー来るの初めてなんですけど…なにかおすすめとかありますか?」
「ならマティーニはいかがでしょうか。少々度数は高いですがカクテルの王様と称されるカクテルですよ。」
俺もその名前は知っている。
オリーブを入れるのが特徴的なカクテルだ。
ポピュラーが故、お店ごとに色々なこだわりがあるのだとか。
「じゃ、それお願いします」
俺の言葉を聞くとすぐにバーテンダーさんは作業に取り掛かった。
グラスに氷を詰めてそこに水をかける。
「こうして氷を少し溶かして角を取ることで、表面積を減らして泡立ちにくくします」
氷を溶かすことに使った水を捨て、奥の棚からお酒の瓶を2本取り出す。
「こっちがジン、こっちがドライベルモットです。」
それぞれのお酒を分量を量ってグラスに注ぎ入れる。
最後にオリーブを入れて完成だ。
簡単そうだし、今度機会があったら作ってみたいな。
「では早速いただきます。」
…これは。
「強いっすね…!」
「ハハハッ。そうですね、お客様はまだ若いのでこれからアルコールにも耐性がついてくると思いますよ。」
そうしてしばらくバーテンダーさんと話をして楽しんだ。
後方は終始やかましかった。
「はい。」
『もしもし。そっちはどんな感じ?』
「コンタクトを取ることには成功しました。」
『好調だね。こちらに来るまでにできるだけ人数を減らしておいてもらえると助かるな。』
「善処いたします」
『頼んだよ。ルミナ。』




