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グリーンフラッシュ

翌朝。


左腕はまだ自由には動かない。


しかし感覚は戻ってきたし、物を持つくらいなら出来るようになった。


食事も不自由なく取れた。


今日でジェーラと1日一緒に過ごせるのは最後となる。


と、いうことで。


「今日は1日ジェーラちゃんと遊びましょうのコーナー!!!」


一番精神的にキてなきゃおかしい人が一番元気である。


ケンさんは基本的に声がデカい。

それゆえ。


「お…おー…」


恥ずかしそうに拳を上げるジェーラ。


彼に悪気はない。許してあげてくれ。


「ジェーラ!どこ行く!?今日だけは何でも奢っちゃうよ!?…あ、高いのはヤメテね」


ちなみに、その特性は息子であるグランにも遺伝している。

さっきからこの2人のせいで街の人から注目を浴びっぱなしである。


現在時刻は午前11時。


ちなみに武器の手入れは朝に済ませてある。

ジェーラは俺の武器の分解構造に興味津々だった。


ダンジョンオタクはメカにも興味があるのかもしれない。


さて、その話は置いておいて。


俺たちが向かったのはアクセサリーショップ。

完全に頭から外れていたが、彼女は年頃の女の子。


アクセサリーに興味が無い訳がない。


流石ケンさん。オトナの男性だけあって理解ってる。


「好きなの選んでいいぞ。家族にもお土産で何個か買っていったらどうだ?」


その言葉に、一瞬ジェーラの表情が曇る。


「私に家族は…いや、いますね。」


しかし、その顔はすぐに明るさを取り戻した。

ヴァルカンさんとシグネのことを思い出したのだろう。


全く、エエ話や。


思わず目頭が熱くなっていると、彼女はお揃いのデザインの腕輪を3つ持ってきた。

あしらわれた宝石の色は色はそれぞれ青、緑、黄。


それぞれの髪の色だ。


満足げな笑顔を見せ、俺たちの先頭に立つジェーラ。


「次ここ行っていいですか?」


そういってケンさんに街の地図を指さしながら見せる。


「もちろん!本屋か。本読むの?」


俺は今までジェーラが本を読んでいるところを見たことが無い。


旅にも本は持ってきていない様だが…


「本…というか地図が見たいんです」


なるほどね。ジェーラらしいや。


「洞窟とかの地図ですか?そういうのは一通り履修してるものだと思ってたんですけど…」


エクスの言う通り、ジェーラの性格からしてそういう地図はコレクション用と読むように2冊ずつ買うレベルで読み漁ってそうだが…。


「舐めないでください!手に入るものは全て読み終わってます!…じゃなくて、どうしてもアストンではパンゲア・ウルティマ大陸の洞窟の地図は見つからなかったんです。」


そうか。この街は大陸同士を繋げる玄関口。


どちらの大陸の地図とも出回っていても不思議ではない。


「俺たちも向こうに行った時用に買っていった方がいいかもな」


「そうだな」


しばらく歩き、本屋に到着する。


そこは異世界の独特な空気で、魔導書なんかも置いてありそうな雰囲気を醸し出していた。

なんというか、テンションが上がる空気だ。


本を目の前にしてこんなに気分が高揚するのは、小学校の国語の時間で図書室に行った時以来かもしれない。


本来嫌いだった国語の授業が、あんなにも楽しくなるのだ。


本の力は偉大である。

俺はその辺にあった本を手あたり次第パラパラとめくってみる。


そうしているうち、1冊の本が俺の目に留まった。


その本の名前は、『文明転生』。


パッと見た感じ、神話のようだ。


その内容は以下の通り。


『太古の昔、人類は今よりはるかに高い技術と文明を持っていた。しかし、それが神の怒りに触れた。人口は百分の一にまで減らされ、大地は荒れ果て海は暴れた。もう人類に生き残る道は残されていないと誰もが思いだしたころ、そこに救世主が現れた。彼は彼の持つ究極の秘宝で時を操り、人類は窮地を脱した。その時に使われた時を操る秘宝は、今もパンゲア・ウルティマ大陸のどこかに眠っているとされる…。』


なるほど。これがアイツらの言ってた時を操る秘宝ね。


しかし、これが実話ならこの世界が異様に高い科学の知識を持っていることにも合点がいく。

その知識は前文明の置き土産ってことか。


地球の文明とどっちが上なのかな?


「すみません、お待たせしました!」


その声に振り返ると、大量の地図を抱えたジェーラが立っていた。


「そんなに買ったの!?持って帰れる?それ」


「帰りの主な移動は船ですし、大丈夫ですよ!アストンの港から孤児院までも近いので!」

ならいいけども。


しかし。


この世界の地図は基本的に手描きだ。

つまり…。


「シンヤ君…これ地図にかける額じゃなくない…?」


青ざめた顔のケンさんが俺に領収書を見せてくる。

思わず俺も顔をしかめる。


5人で泊まった場合の宿の宿泊代<夕食・朝食込み>よりも高い…。

そんな俺たちの横でジェーラはホクホクとした表情をしていた。




それからなんだかんだあって、夕方。


よしよし、この空気なら『アレ』が見られるかもしれない。


「そろそろ日没だ。宿戻って飯にしよう。」


「ちょっと待ってもらっていいですか!」


宿へと歩を進めようとしたケンさんを、俺が制止する。


「最後に、行きたい場所があるんでついて来てください!」


そう言うと俺は街の正門方向へと歩き始めた。

みんなも困惑した表情ではあるが俺について来る。


「どこ行くんですか?」


「ヒミツ♡」


「きしょ」


グランに泣かされながら街の正門を出る。


そう、俺が向かっているのはあそこである。


今は日没寸前で、ちょうどオーシャンビューが一番綺麗な時間帯だ。

やけに勾配のキツい階段を上り、全員足が酸っぱくなったころ、展望台へと到着する。


「ハァ…ハァ…着いたぞ…どうよこの景色…」


「ハァ…ハァ…とても…綺麗ですね…」


ここの展望台への道を作った人は、もう少し勾配を緩やかにするとかは考えなかったんですかね。

みんなの息切れが収まったころ、太陽が沈む。


その様子をみんなはうっとりしながら見つめていた。


「あれ?なんか今一瞬太陽が緑に光りませんでしたか?」


「俺も見えたぞ!」


グリーンフラッシュ。


大気中の光線の屈折による、プリズム効果によって起こる自然現象。

地平線や水平線で日没が見られ、かつ空気が非常に澄んだ状態でしか見ることができない激レアな現象。


沖縄に旅行に行った時に見たグリーンフラッシュが忘れられなくて、みんなにも見てほしくて。


見せることができて、俺はもう大満足だ。


その後は宿に戻り、ご飯を食べて寝る支度をした。


船の出発時刻は正午。出発のための荷造りや買い出しもあるから、早く起きなきゃな。

他のみんなはもう寝たが、俺はケンさんと晩酌をしていた。


話していたら盛り上がってきてしまって、寝るに寝れないのだ。


「なぁシンヤ君、俺もキミたちについていっていいか?」


「滅茶苦茶頼もしいですけど、お仕事は大丈夫なんですか?」


「ん?だいじょーぶ。結構貯金あるから。」


そう言うとケンさんは頬をプクッと膨らませてOKのハンドサインをそこに当てて見せた。


酔ってるなこの人。


明日ついて来るか聞き直そう。

ぶっちゃけついて来てくれると助かる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ジェーラさんとはお別れになっちゃうけど、これからはケンさんが仲間として一緒に行動してくれるんですね!すごく心強いし、頼もしい!!(*'ω'*)
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