再出発
「なぁ、どうするよ。」
「どうって、何が?」
街の正門によりかかりながら話す。
街は所々燃えているものの、死者はいない。教会にみんな避難したようだ。
1人を除いて…。
俺は手にしたエメラルドのネックレスを手にグランに問いかける。
「旅、続けるのか?」
「いや…どうするのが正解なのか、俺には分からないよ…。」
「僕はメリーさんの遺言通りにした方がいいと思いますけどね。」
街の中から出てきたエクスが言った。
「この状況でノコノコ旅続けるってのか?お前正気か?」
グランが食ってかかる。
「じゃあジェーラはどうなるんですか!カイラがいつ帰ってきてもおかしくないあの街で!一人放っておくんですか!?」
感情的になるのもわかるが…。
「エクス、落ち着け。一つ気づいたことがある。」
俺の言葉に二人は黙り、こちらを見る。
「俺の憶測に過ぎないが、恐らくオーラはカワサキに操られている。幼い頃から育てた恩を着せられているんだと思う。」
「その根拠は?」
「メリーさんを殺す時、哀しい目をしていた。」
こればかりは確証が持てないが…。
「お前は冗談を言うタイプじゃない。本当なんだろうな…。」
「じゃあこうしましょう。旅の目的を、『宝探し』から『オーラをこちらに引き入れる』ことに変えるんです。」
なるほど。オーラを仲間にできれば、カワサキの所在も分かるかもしれない。
「なら目的地は変わらず、パンゲア・ウルティマ大陸だな。ヴァルカンさんの情報によると、奴らはネーブル海を根城にしているらしい。」
「ジェーラをセデスまで送ることもできるな。」
現在の旅の予定を整理しよう。
フォルクスを発った後北上し、港町セデスを訪れる。
ここでジェーラとは別れる。
船でパンゲア・ウルティマ大陸北部、ランボへと向かう。
グランにとっては里帰りだ。
その後は大陸を南下、ネーブル海を目指す。
「長い道のりになりそうですね。」
「それはもとよりだ。気合入れていくぞ。」
グランの目に生気が戻りだした。
「さぁ、フォルクスに戻るぞ。二人とも捕まって。」
メリーさんの遺体は、自宅のあった場所の庭に埋めてある。
帰ってきたら花を手向けよう。
決意を胸に、魔法を唱える。
「『空間転置』!」
この魔法は、思い描いた場所へと移動する。
よって、今までに訪れた場所にしか行くことはできない。
俺が思い描いた、あの路地へと転移した。
そこでは、ジェーラが心配そうな顔で待っていた。
「お帰りなさい。どうなりましたか…?」
「聞くな。」
俺は唇を噛み締めそう言った。
「あっ…ごめんなさ」
「謝らなくていいですよ。悪いのはジェーラじゃないですから」
「今後のことを話す。一旦宿に戻るぞ」
カイラに渡された腕輪は、アンタークに置いてきた。
既に燃えた街は、もう攻撃されることが無いためだ。
あれはGPSだろう。
恐らくカワサキは、この世界に科学技術を持ち込んでいる。
手強い奴が相手になったものだ。
宿に戻り、街であったことやこれからのことを話した。
それを聞いたジェーラは途中から涙ながらに話を聞いてくれた。
この子はとても良い子だ。
それゆえ、早く家に帰してあげなければ。
「私もパンゲア・ウルティマまで連れて行ってください。」
「ダメだ。これは俺たちの問題だし、第一お前未成年だろう」
「でも…」
「シグネが心配しますよ。現時点だって当初の予定より遅れてるんですから」
「心配するな。帰りにはアストンにも寄ってくからさ」
…それよりも。
「まずはカイラを探さないとですね。」
「グランさんを引き込むことが目的なら、もう一度私たちの目の前に姿を現すはずです。」
「次は逃がさないぞ。」
「俺の兄貴に親殺しをさせたんだ。ただじゃ済まさない。」
全員の目的が一致した。
「予定より早いが、明日発つぞ。今日は早く寝て、体を休めろ」
「了解。」
「「分かりました。」」
午後8時、俺たちは眠りについた。
「浮かない顔してるね?オーラ。」
この人は私の気も知らないでそんなことを言う。
「知ってますか?私、親を殺したんですよ。」
皮肉を交えてそう言う。
「まあいいや。オーラはこっちの大陸で待機しておいて。セデスではカイラにやってもらう。」
この人は人を殺したことはあるのだろうか。
もし、もう一度弟に会うことがあったら私は合わせる顔がない。
「さっきカイラにもあったけど、アイツは飄々としてたよ?」
あの人はイカれてるんだろう。
到底、相容れそうにない。
私は孤独だ。
この組織には腐るほど部下もいるが、その全員が私とは行動も、考え方も違う。
甘えることができる人も、信頼して仕事を任せることができる人もいない。
ずっと会いたかった母親は、自らの手で殺してしまった。
私は、何のために生きているのだろうか。
もう、死んでしまいたい…。
午前7時、起床。
昨夜はメリーさんの夢を見た。
というか、アンタークの夢と言った方がいいかもしれない。
いつも通り三人でランニングをして、店の手伝いをして…。
あの日々は楽しかった。
単調で、同じことを繰り返す日々だったが、日本にいた時よりも何倍も人生を楽しめていた。
もしかしたら、日本での生活も楽しめたのかもしれない。
昔の俺は、楽しみ方を知らなかっただけなのかもしれない。
そんなことを、最近思うようになってきた。
あの世界が恋しい。
そう思うようにも。
服を着替え、顔を洗う。
みんなで簡単な朝食をとった。
みんなは、昨日よりも幾分か明るい表情をしていた。
旅をすることを楽しみにしていた。
さあ、再出発だ。




