炸裂
即座に五人全員が戦闘態勢に入る。
俺は相手が一人であることを確認し、双頭剣ではなく剣を一本だけ使うことにした。
両腰に一本ずつ提げた剣を一本だけ引き抜き、敵に向ける。
「あらあら、あなたたち血の気が多すぎるわよ、別に私は戦う気はないわ」
相手の女は黒髪だが、頭の頂点付近は金髪である。恐らく元々金髪で、黒に染めていたのだろう。
身長は俺よりも少し高いくらい。175センチといったところだろうか。
服装は黒のスーツに黒のサブリナパンツ。日本のOLのような服装だ。
足にはピンヒールを履いている。これで戦うつもりか?
本当に戦う気がないのかもしれない。
「まあまあみんな、武器をしまってお話しましょ?」
そう俺たちに語り掛けてくる。
「話ならまず貴様に聞きたいことがある。」
ヴァルカンさんが言った。
「あら、何かしら?」
「ここ最近、ここの南にある街、アストンにおいて人攫いが多発している。何か心当たりはないか?」
そう訊くと。
「嫌ね~、人攫いだなんて人聞きの悪い。これは教育活動、いわばボランティアよ。」
確定だろう。
コイツが犯人だ。
「分かった。お前を倒して連れ去られた人たちを救出する。」
そのヴァルカンさんの言葉を合図に、五人一斉にその女に攻撃を開始した。
ヴァルカンさんとシグネとは出会ったばかりで、連携が取れない。
それどころか二人の実力すら把握していない。
どう戦おうかと考えていると。
「戦う気は無いって言ったのに…。」
そう言って女は教鞭の先をつまんで勢いよく引き伸ばした。
そうすると教鞭はみるみる伸びていき、戦闘用の鞭と化した。
その長さ、約3メートル。
鞭を伸ばしきると、そのままビュンビュンと音がするくらい振り回し、こちらを牽制する。
これでは不用意に近づけない。
俺たち五人が攻めあぐねていると。
「来ないの?そっちから仕掛けてきた戦いなのにねぇ…」
女は空いている左手をこちらへ向けクイクイッと手招きし、挑発する。
「来ないなら、こっちから行くわよ!!」
そう言うと、スーツの内ポケットから何やら直径3センチ程の黒い球体を取り出し、空中に五つ投げる。
俺は相手が何をしたのか分からなかった。
いや、正確には分かったのだが、何をされたのか気づくのは攻撃を受けた後だった。
「伏せろ!!!」
ヴァルカンさんの声がこだまする。
彼は攻撃を受ける前に何をされたか分かったようだ。
「『火球弾』」
敵が魔法を唱える。
あれは。
爆弾だ。
洞窟内に轟音が響く。
冗談だろ。洞窟内で爆発物を使うのはご法度だろ。
奴は頭のネジが何本かぶっ飛んでいる。
情報の処理が追い付かなかったが、俺の目は何が起きたのかを鮮明に捉えていた。
まず、爆弾を空中に投げる。
その導火線に魔法で点火。
瞬きほどの間に鞭で爆弾を弾き、正確に俺達五人の元へと飛ばした。
回避不能。
俺はあの時以来の手傷を負った。
腕が痺れる。全身を打った。この痛みはトレーニングの時に受けた痛みとは全く別物だ。
俺たちは岩肌が露出した洞窟のエリアで戦っていたが、爆発の衝撃で洞窟のさらに奥、教室の中へと吹き飛んでいた。
先ほどよりもさらに狭い教室内。
小学生や中学生のころ、学校に不審者が入ってきて自分が撃退するという妄想をよくしたっけ。
それが今現実となっている。
嬉しいねぇ全く。
さっきの衝撃の打ちどころが悪かったのか、グランとエクスはダウンしていて、ヴァルカンさんはその治療に当たっているため、戦闘不能。
瓦礫の中から立ち上がったのは俺とシグネ。
「よろしく頼むよ。」
「ええ。足引っ張らないでよね。」
キツい性格してるよなぁ。
苦笑いしながら、シグネとグータッチを交わす。
三人には悪いが、こういう狭い場所ならかえって人数が少ない方が戦いやすい。
「さぁ、第二ラウンドと行こうか、人攫い。」
「人攫いじゃないわ、ちゃんと名前で呼んでちょうだい。私はシルビアよ。」
シルビアと名乗ったその女は、こう続けた。
「自己紹介がてらに私がなんでこんな事してるか話しましょうか。」
「いいわよ、話さなくて。どうせろくでもない理由でしょ」
そうシグネが噛みつく。
「年上の話は大人しく聞くものよお嬢さん。私はとある方の宗教を布教するためにはるばるパンゲア・ウルティマ大陸から来たのよ。」
宗教…ヴァルカンさんが言っていたテロ組織か?
「かの大陸では信者はもうそれは大量にいるわ。入信した人は黒髪に染めるから、貴方もてっきり信者だと思っていたのだけれど…違うみたいね。珍しいわ、地毛が黒の人なんて。」
シルビアは、俺を指さしながらそう言う。
「私もそろそろ染め直しに行かなくちゃ…金髪が目立ってきちゃった。」
日本では金髪に染めていて頭のてっぺんが黒くなっている人はよく見るが、その逆は初めてだ。
「さて、そろそろお喋りはやめて本当に第二ラウンドを始めましょうか。かかっておいで?」
シルビアはそう言ってまた俺たちを挑発する。
「シンヤ、好きに暴れて良いよ。私が合間を縫って魔法ぶつけるから。」
そうシグネが俺に囁いた。
「頼んだ。」
俺は返事をすると、もう片方の剣を右の鞘から引き抜き、使っていた方の剣と持ち手を合わせる。
そのまま半回転ねじり、双頭剣で戦うことにした。
ここからは一対一だと思って戦った方がいいだろう。
それならこちらの方が戦いやすい。
「面白い武器を使うのね。でもそんな小細工じゃ私には勝てないわよ?貴方、経験不足がもろ分かりよ。せいぜい一~二か月。長くて三か月くらいしか鍛錬を積んでない。その武器は片手剣、二刀流、双頭剣の三種類の使い方がある。その三種類の扱い方を、三か月でマスターしようなんて…。笑止千万よ。」
痛い所をつかれた。
確かに俺の経験不足は如何ともしがたいだろう。
…ならば!
「『火球弾』!」
「何ッ!?」
先ほど動きを見ていた相手の魔法。
一瞬だったが、再現に成功した。
「確かに俺は経験不足だ。だったら泥臭く、小細工で勝負してやる!」




