(4)
次で完結です!
ドキドキしながらお読みください。
そう、この道化師は女性みたいだ。
道化師は道化師だから、性別なんか意識していなかったが、化粧を落とし衣装を脱げば、そこには一人の人格があるわけだ。
素体にはもちろん、性別がある。
ということは、だ。
今、僕は自宅に女と二人。
母親以外の女と二人。
僕の下腹部の奥に、澱んだ熱の気泡が湧きあがった。思わず生唾を飲む。
やめよう、こんなことを考えるのは……。
僕は、道化師が、男か女かなんてさっきまで気にもかけてなかったじゃないか。
そうか、じゃあ僕は女の脚の間から家に帰ってきたんだ。通り抜けてきたのは、女の股ぐらの間だった……ああ、やめだやめだ。
性別のことは、考えるな。
熱の澱みは身体の裡に留まり、なかなか消え去っていかない。
僕はその熱を逃がそうと、頭の中で連立方程式の無機質な佇まいや、数字と英字が織りなす味気ない大行進への想像を働かせていた。
◇
「このたわけが!」
突然、道化師が叫んだ。真っ赤に塗りつぶされた唇が、大蛇のように耳まで裂けた。
僕は驚き慌てて、思わず、尻餅をつく。
どういうことだ。こいつはよみうりランドの従業員じゃないのか。
お客の僕にたいして、なんという口の利き方を……。
その時、僕はやっと気づいた。道化師は、母親だった。
そうか。あの手紙を読んだ母親は、僕が今日死んでしまおうとしていることを知った。
そこで、僕のあとをつけたか、もしくは僕が小倉優子に心奪われていたことに勘づいていて、よみうりランドにあたりをつけたのか。
詳しい経緯はわからないけれど、とにもかくにも、よみうりランドに先回りし、道化師に姿を変えて潜伏した。
そして、わざと一緒に時空の裂け目に巻き込まれ、僕を家に連れ戻したのだ。
つまり、僕は、母親に欲情してしまっていたのか。
白塗りの化粧で、どこぞの他人の女かと思い込んでいたばっかりに。
全て、母はお見通しだったのだ。
つづきます!
次で最終話^_^