(2)
今日も冷えますね!
どうぞお楽しみください〜
歩く先に、大道芸人がいた。三組の家族連れが、取り囲んで道化師のダンスを見ている。
ニッカポッカみたいに幅太で、足首のところだけキュッとすぼまったパンツを穿いた道化師。頭には、派手なシルクハット。白塗りに鮮やかな色の隈取りで、記号のような道化師顔だった。おどけた挙動でステップを踏み、「せーの!」で三点倒立をしてみせる。はみだすように赤く塗られた唇が、さかさまになって、にまっと笑った。口をうねうねと開けたり閉じたりしてさまざまな表情を見せながら、天に向けられた脚を閉じたり開いたりしてみせた。子どもたちが拍手をして喜ぶ。
「あ、裂け目だ!」
なんと道化師の空に向けられた二本の脚の空間に、時空の裂け目が見えた。裂け目の奥は、粘膜のような質感と色をしていた。クジラの胃袋にでもつながっているのかもしれない。
僕は裂け目に、「自宅に手紙を取りにいきたい。土間に置いてあるんだ」と念じた。すると、裂け目の奥が五秒くらいゆらゆらと揺れて、次第に色が変わり、僕の家の土間の像を結んだ。よし、そこだ。今からそこに飛び込むから、待っててくれよ。
僕は子どもたちを押しのけて道化師に近づき、その股ぐらに手を伸ばした。
すると、道化師がバランスを崩し、逆立ちのまま後ろにひっくり返った。しまったな、先に道化師にどいてもらえばよかった。つい気持ちがはやって近づきすぎてしまった。
ああ、もう遅い。僕は、足下に崩れた道化師につまづき、かたや道化師は僕に巻き込まれるようになって、二人してもつれるように絡まり合いながら、裂け目の中に転がり込んでいった。
続きます!