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ヘンリク卿〈1〉

 魔導騎兵(マギルリエ)とは何か。

 後世、軍事を当時の技術発展と結びつけて論じた軍事技術史の泰斗であるトンマーゾ・アンドレオッティ。

 彼は初期の著作『歴史的展開に於ける発展論〜戦場と技術・文化・制度の連動性〜』の序文にて次のように語る。







 古今東西あらゆる戦場で常に当時の最新技術を駆使した兵器が用いられた。

 丁度数世代前の親兄弟たちが塹壕の中にて機銃・砲撃・魔導砲撃に怯えていたという大陸国家の集合記憶が卑近な例であろう。このように技術発展と戦場の動向というのは絶えず連動しているものだ。


 遡って古代から概観してみよう。

 古代の碑文に深く活躍を刻むのは鐙の開発による騎兵であろう。騎兵は徒歩(かち)にて対抗する兵を瞬く間に蹂躙していった。


 続く中世初期の年代記に於いて花形として戦果を上げたのは魔導行為(マギラギウム)を行使する魔導兵であった。

 現代大陸文明の始祖とも目される、フラスヴェールの建国者ユーグ大王ユーグ・デン・ストゥーレはこの魔導兵を集中運用することによって、数々の戦を制したとされている。


 中世後期から近世にかけての書冊(カルチュレール)では魔導騎兵(マギルリエ)という語が頻出する。

 序文の最後にて少し述べるが、有史以来類を見ないほどに戦場を単独で支配したと言っても過言では無い兵科である。

 近代以降の工業技術発展によって役割は相対的に矮小化するが、これも避けられぬ話題に違いない。〈中略〉



 前時代、戦場を飛び交うのは矢や投石ではなく魔導に代えられた。魔導による障壁と小爆発を起こす攻撃は瞬く間に戦場を支配した。

 当時、歩兵や騎兵とは『魔導の応酬の側に佇む青銅の剣』とまで評されたほどに無用の代物であった。

 無理に接近すれば魔導兵の戦果と成り果てるが、そもそも接近でさえ、魔導砲撃の長射程がために困難を極めた。

 換言すれば、魔導騎兵(マギルリエ)とは中世に登場した現代戦車であった。

 魔導による強靭な防御と素早い機動を活かした突撃が齎す衝撃、そして魔導砲撃による圧倒的な制圧力は間違いなく戦場の主役へと登り詰める必要十分条件を満たしていた。


 こうした戦場における馬上の英雄(ダグ)の台頭の背景には当時の技術的進歩があった。

 王国歴百八十三年、魔導金属(ミスリル)の産出・加工技術の確立である。


 そして対抗策としての、海を超えた極東で発明され君侯(ベルターン)が治める大陸東部から経由し伝来した新兵器火銃(アーキバス)の導入。

 専門化していく戦場に対応するための魔導学校設立。 

 魔導の才を市井から発掘するための育英制度を通した下層民の生活水準の向上。


 全てはこの魔導騎兵(マギルリエ)が関わっていたのである。本書ではこうした戦場に於ける技術発展に伴う戦術の推移を(略)

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