砂場に駱駝
シルクロード浪漫!
広大な砂漠の旅からはぐれて
砂場に迷いこんだ駱駝が一匹
キャラバンにはもう戻らねえのかときいてやったが
いちど膝を折っちまったら
重い腰をあげるのはひと苦労だな
いいさ このちっぽけな箱庭で
月が痩せていく 幾つもの夜を過ごしやがれ
やっと膝をのばして
重い腰をあげたと思ったら
噴水のところへ行って ごくごくやると
また戻ってきたのか
こんなちっぽけな箱庭には
たとえ山が聳えたって
おまえのひとまたぎで 踏み越えられちまう
月が痩せていく 幾つもの夜を
費やすまでもないというのに
おまえは膝を折って 腰をおろしちまった
しかし なんてふぬけたつらしてるんだ
広大な砂漠にいたころのおまえは
緊張したおももちで
右と右 左と左
おんなじほうの まえ脚と うしろ脚を
いっしょに出して歩いてたもんさ
まあいいや
こんなちっぽけな箱庭で
月が肥えていく もう幾つかの夜を過ごしやがれ
だが いつまでそうしてるつもりだ?
こんなちっぽけな箱庭には
たとえ山が聳えたって
川が流れこんで湖を湛えたって
おまえのひとまたぎで 踏み越えられちまう
月が肥えていく もう幾つかの夜を
費やすまでもないというのに
おまえの背には
似つかわしくない瘤が負われているだろ
おまえはなんのために その瘤を背負った?
おまえのその瘤には なにがこめられている?
そんなことも忘れちまったなら
こんなちっぽけな箱庭で
月がまた痩せて また肥える夜を
幾つでも費やすがいいさ
いまはまだ はちきれんばかりの瘤を
無駄に費やした夜に萎ませたら
やがて瘤なしのおまえを
だれも駱駝なんて呼んでくれなくなるだろうぜ
それがいやなら もういちど
膝をのばして 重い腰をあげて
こんなちっぽけな箱庭から この砂場から
とっとと広大な砂漠へ戻りやがれ
そこでまた
緊張したおももちで
右と右 左と左
おんなじほうの まえ脚と うしろ脚を
いっしょに出して歩きつづけな
それがその瘤を背負った
おまえの生きざまのはずだ
そいつがわかったら
こんなちっぽけな箱庭には この砂場には
にどと戻ってくるんじゃねえぞ
それじゃあな