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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
二章・友華 一部
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二十七話・夏休み前の部活

 文化祭が終わり、そして数週間後にあった期末テストも終わった。

 期末テストに関しては本当に終わった。


 一学期の期末テストが終わったら、学生にとって最大の休みである夏休みまでもう秒読みだ。

 だからか、少し校内でも夏休みの話が持ち上がるようになっていた。

 長期休みを利用してどこかに出かける話題や、二年の夏休みから三年時の受験に向けて塾に通おうと何人かで話し合っている生徒など、共通して休みの過ごし方についての話が多くなっている。


 そして今日は夏休み前の最後の学校。

 午前中でホームルームや終業式が終わり、午後からは完全フリーなので俺はオカ研の部室に顔を出していた。


「わああ! これが部長席なんだあ! すごい回るううう!」

「ええ、これからはあなたの椅子になるのよ。大切に使いなさい」


 部室では鈴音が、今まで友華の座っていた椅子に座りくるくる回っている。

 例にもれずばっちり浮かれきっている様子だ。


「ふふ、鈴音元気だね。もうすぐ夏休みだし、部活も楽しそう」

「いやいやアリスちゃん。夏休みだからって、この部活は特に何もしないよ。いつもみたいに部室に来てだべってるだけ」

「そうなの!? みんなで集まれるんだ! 楽しみ!」

「そうだ。肝試しの件はどうなったんだ?」

「そんなことよりも鈴音。その椅子、座り心地はどうかしら?」

「ふかふかでベッドみたいだよ! 肝試しはもう場所も決まってるから大丈夫! 串木野先生の知り合いが山を持ってるからそこでする許可もらったんだ!」

「あう」


 実は必死に話題を逸らそうとしていた友華がうなだれた。

 アリスが何故かその鈴音の一言に疑問を浮かべる。


「串木野先生に肝試しの話をしたの?」

「うん! 顧問だからね!」

「初耳だ!」


 驚いたように目を丸くしている。


「というか私って結構この部活について知らないことが多い気がするんだけど……」

「そういえばアリスが入ってから部活について説明したことなかったな」

「バタバタしててそんな暇なかったもんねー」

「うう……。その節はお世話になりました」


 鈴音が申し訳なさそうに頭を下げた。


「こら男子。鈴音をいじめるのはやめなさい」


 友華に注意された。

 アリスも頬を膨らまして俺たちを見ている。


「まあ、その件は置いといて私が知らないで皆が知っている話があったら聞かせてほしいな。なんか仲間外れみたいで嫌」

「そうだなあ、俺は別にいいんだけど友華はどうだ? 一応創設者なんだし、お前の判断に任せるよ」

「私? それこそ全然大丈夫よ。話されて困るようなものでもないし。――ただ、話すのはお前に任せるわ」


 何故かそこで部員ではない俺に話が振られる。

 確かにこの部活が創設するまでの内容を知ってはいるが、話ともなれば孝宏に任せた方がいいのではないだろうか。

 口だけは達者な男だし。


「あ、僕も無理だ。そんな前のこと覚えてもないしね」


 頼ろうと視線を向けただけでノーサインを出される。

 もちろん鈴音も同じように両手をクロスしてバツ印を作っていた。


「ええ、俺が話すのか……」

「山元、だめ?」


 アリスが悲しそうに見てくる。

 どくりと心臓が脈打つのを感じた。アリスにそんな顔をされたら断れるわけがないだろう。

 駄目だな、なんて断った時には俺は一生後悔するくらいアリスをがっかりさせてしまう。

 それに話すことが面倒なだけで内容はそこまで気にするものでもないしな。


「――わかったよ。話す! 話すから! 少し長めの話になるけど我慢しろよ」

「本当!? 楽しみ!」

「ふふ、もう一年前の出来事なのよね。懐かしいわ」

「ホントにね! 私はよく覚えてないけど!」

「ほれ優作。座布団だ。折角だからこれに座ってやりなよ」

「お前なあ。まあいいけどよ」


 孝宏が床に敷いた座布団に座る。全員の視線が集中しても普段なら緊張なんてするはずがないのに、今は妙にドキドキしていた。

 ええい、とにかくさっさと話して終わりにしよう。


 俺は大きく一呼吸してから、この部活を創設した時の事。

 友華や孝宏と出会った話を思い出した。


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