リアルとフィクションの相互作用④
フィクションとリアルの相互関係。
考えもしなかったが、なんとなく友華の不安もわかるような気がする。
原因不明の病気による死を拒み、生きることを選んだアリス。そんな彼女に、これ以上の苦悩を浴びせられるなんて信じられない。
友華の話が本当ならこの世界の神様とやらは、超がつくほど意地の悪いやつなんだと思う。
「もし仮にだ」
俺が話し始めると友華は難しそうな顔をやめて視線を向けてくる。
考えたくはないが何かアリスが抱えているものがあるとして、その時は。
「仮にアリスが何かを抱えていたとして。俺はあいつの力になるって約束した、何があろうと見届けるよ、必ず」
何故か友華は俺の発言を聞いて感心したように目を見開く。
そして、どこかからかうような目に一瞬で変容したのはわかりやすかった。
「お、おお。珍しく格好良いわね……。惚れた者負けってことかしら?」
「違うわ! 心配してるだけだ!」
指摘されて初めて自分のセリフの恥ずかしさに気づいてしまう。
それを隠すように声を荒らげたが、友華には照れ隠しのように受け取られているんだろうな……。
「ええ。そういうことにしといてあげるわ」
腑に落ちないが友華はニヤニヤしながら俺を見ている。
俺自身は鈴音のことを引きずっていたが、友華と話していると不思議と重く抱えていた気分が和らいだような気がする。
まるで次に起こることがわかっているかのように、友華は常に冷静でその時に必要なことを行う。多分今の話も、目的としては鈴音の件で無意識にパンクしかけていた俺を励まそうとしてくれたのだろう。
「……ありがとうな」
「な、なによ急に? 素直にお礼されると裏がありそうだから気持ちわるいわね」
言葉は荒いが根は良いやつなのだ。多分。
――その時、俺のスマホから着信音が鳴った。
突然の音に二人してびくりと背筋を張る。
「わ、悪い。――と、アリスからだ」
鈴音の所にいるはずのアリスから着信。そこに不安を感じない方が難しかった。
「俺だ。どうした、アリス」
『山元! 助けて、鈴音が!』
「落ち着け! 何があったんだ!?」
『とにかく急いで! わ!』
そこで通話は途切れた。
嫌な予感ほど、何故か的中してしまう。
俺は友華の方を見た。静かな部室の中、アリスの声は友華にも届いたはずだから。
「優作! 行くわよ!」
「ああ! 急ぐぞ!」
「そっちじゃなくてこっちに来なさい! 車があるわ!」
先導しようとした俺を静止して、先を友華が走り始める。
頼む! 二人とも無事でいてくれ!