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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
一章・鈴音
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   文化祭準備②

 そこで友華が俺たち二年組を頬杖付きながら見つめる。


「お前たちは当日に用事はないのかしら?」


 俺と孝宏、そしてアリスは鈴音のようにステージでの発表はない。


 そして、二年の学年発表は……。


「二年は好きな題材を大きい紙に纏めればいい展示作品だから大丈夫。僕はもう終わってるし、こっちに本腰入れるよ」 


 腕枕して机に突っ伏しながら顔だけ上げる孝宏。態度だけだとだるさ全開だが、意外とやる気のようだ。少なくとも俺はまだ自分の展示品を作っていない。


「後はそうねえ、当日の衣装は私が準備できるのだけれど、看板が欲しいのよねえ。」

「看板って……。部室でやるんじゃないのか?」


 部室なら既にオカルト研究部と戸にでかでか書かれているので(マジックで)、通りがかれば誰でも気づきそうなものだが。


 友華は呆れたような目で俺を見る。やれやれと大げさに手でリアクションを取ってだ。


「はあ、こんな角にある部室でやったら集客率が下がるじゃない。やるなら本校舎で、それも二階でよ」

「ええ!? 二階って毎年売り上げ一位の料理研究会が出店する場所だよ! 借りれるならすごいとは思うけど、難しいんじゃないの?」


 鈴音の驚きに友華は待ってましたとばかりに腕を組んだ。


「ええ、そうね。でも、安心していいわ。だってもう借りてきたもの、料理研究会が出店する教室の真横をね」

「おお、すごいな」


 鈴音は動揺するばかりだが、何となく友華の考えは分かる。毎年人が多く来る店の横に構えれば、料理研究会目的の生徒やOBの目に入りやすいし上手くいけば客を奪える可能性もある。


 出店する場所としては人目につきやすい最善のポジションだとは思う。思うんだが……。


「よくあいつが許してくれたな。確か両隣の教室は調理スペースと客を入れる部屋に使われてるだろ?」


 うちの高校では出店を一年生の各クラスの学年出し物か、文化系の部活がするのだが不動の一位である料理研究会はその収益ゆえに教室三つ分の使用が許されている。


 毎年、全ての教室が埋まるほどの出店なんて無いので、空き教室の有効活用といえばそうなのだが場所代なんて請求されない文化祭では確実に利益を上げれる方法だろう。


「ええ、煽りに煽ったら快く承諾してくれたわ。」

「ええ……、そんなことしたら絶対あいつ来るじゃん。今日にも」


 孝宏が面倒くさそうに顔をしかめながら言うが、俺も同じことを思っていた。


「あいつって?」


 唯一知らないアリスだけは首をかしげていた。


「ああ、料理研究会のな――」


 説明しようとしたら時すでに遅し。建て付けの悪い戸をゆっくりと開けて、一人の女子生徒が入ってきた。


 ツインテールの赤みがかった髪、少しつり上がった目からは自分への自信に満ち溢れているような輝きを感じる。友華程ではないがそこはかとなく風格漂う立ち振る舞いで、部室に足を踏み入れた。


「ごきげんよう、オカ研の皆さん! よくも私の可愛い部員を脅してくれましたわね!」


 バーン、と効果音の見えそうな勢いで友華を指さした。

 既に訪問を予期していたからだろうが、友華は驚いた様子もなく頬杖しながら返答するのだった。


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