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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
一章・鈴音
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十三話・茶葉の生産量一位は静岡です

 友華はそれに構うことなく話を続けた。


「それでどうなの鈴音。最近あなたが不規則な生活を送っているって噂よ。入部の時に約束したでしょ、困ったことは相談なさい。一人で悩むよりも多くの意見がある方が何事も効率的じゃないかしら」


 友華は自分の思ったことを口に出す。それは良い事でもあるが、時と場合においては相手を追い詰めることにも繋がってしまうだろう。


 何も人を傷つけたかったり、相手の気持ちを考えられない訳ではない。まあ、色々とややこしい経緯があるのだが長年他人を遠ざけてきた癖とでも言うのだろうか。


「う、うう……。友華ちゃん何か言い方キツいよ……」

「そうかしら? 別に普通だと思うのだけど」


 相手の気持ちを考えられない訳ではないのだが、如何せん本人の精神面が図太すぎるので多少空気が読めないこともある。


 今のように。


「友華。その辺にしとけ」

「言いすぎだよー。本当に悩みあったらどうするのさ」

「むう。あんたらに言われるとは……。少し反省するわ」


 俺達に関しては完全に舐めくさっている上でこの態度だ。


 というわけで空気の読めない友華は食い下がったので、ここは状況を知る俺が話を進めるのが一番だろう。


 孝宏に任せたら友華よりも悪化しそうだしな。


「鈴音。俺もお前に悩みがあるのなら聞かせてもらいたい」

「優作まで? 悩みなんて無いよ……」


 遠慮がちに目線を下にそらす。わかりやすく隠したな。何かしらで困っていることは確実だろう。


「部活の仲間だろ、困るような隠し事ならみんなで解決しよう。俺たちは皆同じ考えだよ。お前が心配なんだ」

「な、仲間……。うう、仲間に、隠し事はしないよね?」


 もじもじしながら俺と視線を合わせてくれる。


 そうだ。オカルト研究部は部員の問題は部の問題として、必死に解決に取り組んでくれる。悪い人間はこの部活に存在しないんだから。


 鈴音も置いてけぼりにされているアリスを除いた皆の視線に気づき、仲間の存在を認知して、感動したように目を潤ませる。


 全く一人で抱え込むなんて、こいつらしくもない。

 友情を誰よりも大切にする。それが鈴音らしさなのだから。


「うん。話すよ! ごめんね皆、私たちオカルト現象に興味を持った仲間なのに!」


 まあ、とは言っても。


「おう! まあ、俺は部員じゃないしオカルトなんて毛ほども興味ないが、聞くだけ聞かしてくれよな!」

「うわああああん! 騙されたあああ!」

「あ、鈴音!」


 俺の一言で鈴音が鞄を床に置き、開けっ放しのドアから廊下に駆け出していった。


 アリスが止めようとするも、既に走りだした後で声は届かなかった。


 四人で沈黙の時間が流れる。


「「「ええ、やっば……」」」


 ドン引きしたような声が重なる。


「悪かったって! 俺が呼び戻してくるから、その目はやめてくれ!」


 三人からゴミを見るような目で見られた。ぐう、中々にメンタルが抉られるな……。


「前から思ってたけど、お前って人の気持ち考えないよなあ」

「本当よ。人でなしとはこのことだわ」

「お前らに言われたかないわ! とにかく行ってくる!」


 部室からそう言って飛び出す。あの視線を浴び続けたら居心地が悪すぎるし、やらかしたと自分でも反省している。


 なんとしても鈴音を探し出さなければ、今後のオカ研での面目が立たない。


「優作だけじゃ心配ね……。アリス、ごめんだけど一緒について行ってもらってもいいかしら」

「うん。最初からその気」


 アリスが俺を追うように出てきた。

 走って行くつもりだったが、病み上がりのアリスにはキツそうなのでやめておこう。


「すまん、俺のせいだ」

「そうだね。全部山元が悪いね」

「なんか、冷たくないか」

「別に。女の子に気を使えないのは、良くないもん」

「はい……」


 ご立腹のアリスと一緒に俺は放課後の学校探索を始めるのだった。


 とりあえずは三階建ての部活棟をまわる。鈴音と仲がいいのは女子だけの運動部だったよな。


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