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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
一章・鈴音
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   類は友を呼ぶ③

 二人して合点がいって頷く俺達を怖いくらいの笑顔で見つめてきた。


「最近、鈴音の登校時間が遅いこと多いじゃない。私はそれを心配しているの」


 鈴音の登校時間。

 確かに最近は特に多くなっている気がする。


 遅刻しているわけではないが、かなりグレーな時間に滑り込んでセーフになっている日も多い。


「うーん、言われてみれば。最近鈴音ちゃん部活の助っ人もあまり入ってないらしいけど、それも何か関係あるのかもね」

「今朝もギリギリに登校してきたしな」


 孝宏の考えに便乗するように俺も知っている情報を伝える。


 鈴音は一年の頃にはそのようなこと一度もしていないのだが、二年になってあからさまに多くなっているだろう。


「何か、私生活で起こってるのか? だってあいつは――」

「考え出したらキリがないわ。私たちだけで話しても確証バイアスにすぎないものね……」


 俺が言おうとする言葉に被せるように、友華は一度話し合いを止めようと諌めた。


 チラリと見えた視線は少し厳しそうに俺を睨んでいた。


 部室の中とはいえ、オカ研の扉では廊下に声が漏れる。不特定多数の人間がいる学校で、それも本人のいない場所で言うことじゃなかったな。


 俺も自分の行動の浅さに反省して黙った。


「確証バイアス? なんそれ、食べ物?」


 状況が分かっていない孝宏が友華に質問した。こいつの鈍感なところを初めてありがたく感じるな。


「認知バイアスってやつの一種よ。自分の都合の良い情報だけ集めて、何の確信もない思い込みを強めるということ。まあつまり、鈴音に問題があるかどうかはあの子本人に聞くのが一番ってことよ。私たちだけで話しても疑惑が出るだけで、解決はしないでしょ」

「なるほどね。認知バイアスね。了解。理解」

「孝宏。わからなかったら最後の部分だけ把握しとけば大丈夫だ」


 知ったかぶる男に横から助け舟を出しておく。


 たまに友華は俺たちには少し難しい話を、知っていて当然のように口に出すのだ。授業に出ているとはいえ、真面目に受けてはいない俺と孝宏では理解するのも難しいことがたまにある。

 まあ孝宏に限っては俺と同様とは言い難いんだけれど。


「文化祭も近いわけだし、部員の面倒事はみんなで解決しましょう。鈴音には私から今日聞いてみるわ」

「ああ、それならクラスも同じだし俺が」

「あんたはデリカシーないから絶対に駄目よ」

「ひどい!」

「じゃあ僕が」

「論外」

「ちくしょう!」


 友華がどうにもやる気のようだし、確かに俺たちが聞くよりは同じ女子が尋ねたほうが鈴音も話しやすいかもしれない。


 今回は、我らが部長に任せてみるか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 放課後。


「鈴音。あなた最近忙しそうね。家のことかしら?」


 俺と孝宏はソファに座りながら頭を抱えて項垂れる。


 そうだった。我らが部長は人付き合いが死ぬほど苦手なのだった。鈴音とアリスが二人して入ってくるなり、友華は質問から入った。せめて助走をつければ良いのに……。


「え!? 突然どうしたの?」


 当然だが開口一番そんなことを言われたら流石の鈴音も動揺する。


「山元と斉場も、どうかしたの?」


 アリスは俺達を不思議そうに眺めている。


「いや、人選ミスをしたなと」

「一番やばい奴に任せちまった」

「むう……、何の話?」


 若干置いてけぼりをくらっているアリスが不満そうに頬を膨らます。


 友華はそれに構うことなく話を続けた。

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