部員集め③
「さあ、お前たち。早速緊急事態の発生よ」
放課後。
校長室から色々と奪って作り上げたオカ研の部室に、優作先輩と孝宏先輩を呼び出した。
することは勿論、鈴音先輩に関しての話だ。
「どったの友華ちゃん? 昨日の今日でえらい慌てようだね」
「つうか何で俺は呼ばれたんだよ」
ソファに座っている優作先輩は不満な表情を隠そうともしていなかった。
「写真」
「わかってるよ。ああもう、いつか仕返ししてやるからな」
ぼりぼりと頭をかきながらも一応は付き合ってくれるようだ。
結局のところ誰かに対して心の底から冷たくできないそんなところが、私がこの人に惹かれた理由でもある。
「さてと、本題に入るわ」
私は立ち上がって腕を組む。
「実はこの部活に誘う予定だった一年の坂上鈴音って生徒が、陸上部に入ったから勧誘できなくなったのよ。このままじゃ定員不足で部活は作れないわ。最低でも四人は部員が必要だもの」
「なるほど! そいつは残念だ!」
「お前。嬉しがっているわね」
優作先輩が出会って一番の笑顔を浮かべた。
「なるほどねえ。鈴音ちゃん以外の人を誘うっていうのは?」
「それはあれよ。私の知ってる流れと違うというか……」
「何言ってるんだお前?」
「ああ、はいはい。それは確かに大変だね」
私が未来から来たことを知っている孝宏先輩だけが、私の話を理解して頷く。
鈴音先輩がオカ研に入部しなければ、私が過去に飛んできた意味も大きく失われる。何よりあの人のいないオカ研が私の知っているような歴史を辿るのか、そんなの考えるまでもない。
「何言ってるかは分からないけど、ともかく鈴音を部活に入れたいんだよな……。無理なんじゃないか?」
「あれ、優作って鈴音ちゃんのこと知ってるの?」
「昨日の放課後に友華関連で少しな。その時は走り幅跳びの練習してたから、陸上部に入ったのは意外じゃないと思う」
「へえ、僕会ったことないから気になるなあ」
「会ったことないのにちゃん付けだったのか」
二人とも既にある程度仲は良さそうだ。
未来でもかなり親密だったけど、性格的な部分でこの二人は互いに似ているから打ち解けるのも早かった。
「友華ちゃん、僕たちは協力したいけど具体的な作戦とかはあるの? 流石に出たとこ勝負じゃ厳しいんじゃない?」
「もちろんよ」
「内容は?」
「鈴音が自分で断れないのなら陸上部に問題を起こして活動停止させるわ」
「よーしわかった。お前は今回の件に首を突っ込むなよ。俺と孝宏でどうにかするから」
私の完璧な作戦は速攻で拒否された。
「まあ、これは強引すぎるかしらね。いいわ、お前たちの案を聞いてあげる」
「普通に勧誘しようぜ」
「僕も一回話聞いてみたいな。どんな人なのかも知りたいし」
そんなわけで、私たちはひとまず鈴音先輩を部活に誘うためにもう一度話を聞いてみることにしたのだった。