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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
五章・友華 二部
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   もう一度あなたに会うために④


「ありがとう! 話を聞いて貰えないと始まらなかったから助かるよ」

「言っておくけれど、信じたわけじゃないわ。あくまでも話を聞くだけよ」

「十分、十分」


 孝宏先輩は高校生の頃のように、いたずらを仕掛けそうな笑みを浮かべた。


「まあさ、自分に不思議な力があるって言われても納得できないのは当然だよね。だから、順を追って話したいんだけど」

「そうね。その方がわかりやすいわ」

「友華ちゃんの持つ力は、時間逆行って感じ。自分の思った瞬間に戻ることが出来る力だよ」

「帰るわ」

「待って待って!」


 孝宏先輩に腕を掴まれて座らされる。

 この人の話を信じられる気がしない。

 物を浮かべるとかだったらまだわかるのに、自分自身が過去に行くなんて。タイムマシーンみたいな事を人間が行えるはずがない。


 そもそも時間を移動するためには光の速さで移動する必要がある訳で、未来ならまだしも過去なんてより一層複雑な理論形態を用いるのは明白。

 なので私が過去に飛べるなんて馬鹿げた話、信じられるはずが無かった。


「大体、何でお前がそんな事を知っているのよ。私が知らないのに」


 これが私が孝宏先輩の話を信じられない一番の理由だ。


「あ、ええと、僕が知ってるのは友華ちゃんから聞いたからだよ」

「だから、言った覚えないわよ」

「正確には過去に飛んできた友華ちゃんから。僕らが一年生の頃に、オカ研を作ったのは友華ちゃんなんだもん」

「……はぁ?」


 頭がこんがらがってきた。

 孝宏先輩は未来から来た私に会ったことがある?

 確かにその私から話を聞いたことがあるのなら、過去に飛ぶ能力を先輩が知っているという辻褄はあう。


「僕たちが入学した時、二年生の先輩として友華ちゃんが学校にいたんだよ。だから僕は君を知ってる。過去に飛んで優作や僕たちを助けようとしてくれた先輩として」

「嘘を吐いて、いるようには見えないのよね……。お前本気でその話をしているの?」


 孝宏先輩の態度は本気で私を懐かしんでいるような感じだった。

 こんな話題じゃなければ直ぐにでも信じているけれど、如何せん根拠が足りない。


「そう言うと思って、準備して来たよ。友華ちゃんから聞いた友華ちゃんを納得させられる情報」

「ややこしいわね」


 孝宏先輩がメモを取り出して開く。


「えっと、小学五年生までおねしょしてた?」

「……べ、別に」

「普段はキツイ当たりするけれど、実は寂しがり」

「はん、だから何よ」

「高校一年生まで熊のパンツを――」

「ふん!」

「目がああああ!」


 先輩からメモ帳を奪い取って目を通す。

 そこには私が他人には知られたくないような秘密が羅列されていた。

 昔の失態、趣味、コンプレックス等様々。


「な、何よこれ!?」

「と、友華ちゃんから聞いた、友華ちゃんの秘密。これを言えば私を納得させられるはずよって」

「流石私ね。やることがえぐいわ……」

「僕も思ったよ。まさか友華ちゃんが未だにプイキュアを見ているなんて」

「それ以上話すのはやめなさい。折るわよ」

「何を?」


 思いっきり憎悪を込めた私の言葉に孝宏先輩が震えていた。

 しかし、まあ。

 流石にこのメモ帳の情報は私しか知らないものもあるから。

 うーん……。


「はぁ。信じられないことだけど、信じるわよ。お前には未来を見る能力があって、私には過去に戻る能力があるって事を」

「……ありがとう」


 そんな顔をされては信じるしかないだろうに。

 孝宏先輩は空になったコーヒーカップを揺らして、不安そうに私を見てきた。


 ここまで多少強引に話を進めて何かを私にお願いするのは、先輩自身後ろめたい部分があるのかもしれない。

 この人は優しい人だから、こういうのには慣れてなさそうだ。


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