六十一話・如月友華との放課後
三年になり、部活にも後輩が増え。同時に、自分が高校生でいられる時間も僅かなのだと実感した。
そんな忙しくも充実した日。
学校自体は午前中で終わりだったので、部活も三時前には終わる。今日は顔合わせして少しだけ文化祭の話題に触れて終了だった。
用事が無ければ全員暇を潰すのだが、生憎今日は俺以外殆どが帰宅後に用事があったらしい。
全く薄情な奴らだと思ったが、そそくさと帰っていったので文句の一つも言えない。
喫茶店に行くには早すぎる気がするので、俺はおとなしく部室で勉強をすることにした。
オカ研の部室はソファもあるしエアコンもある。今までは部員が五人で、一人になれる時間も多いので勉強をするにはかなり好条件が整っているのだ。
「そんなわけで何も用事のない暇人の俺は、おとなしく部室で勉強をするのだった」
「その言い方だと私も暇人みたいじゃないの。お前と一緒にしないでほしいわ」
同じく部室に残ってパソコンをいじっていた友華に睨まれた。
友華だけは何も用事が無い暇人だったのでここに残っている。初日から学校にパソコンを持ってきて遊び惚けるのはどうかと思ったけど。
「同じようなもんだろ? つうか何でパソコンいじってるんだよ、校則違反だぞ」
「お前に校則違反何て注意されるとは思わなかったわ。率先して違反しそうな顔してるのに。悪人面とは優作先輩のような顔の事を言うのですね」
「はは、お前ほどじゃない」
「……」
「……」
御覧のように最悪な空気が流れていた。
これは不味い。話を変えなければ。何か話題はないか?
「そ、そういえば、お前はパソコンで何しているんだ? ゲームとかか?」
「そんな訳ないでしょ。凡人と違って私は常に刺激を求めているの。血沸き肉躍る経験を積むために切磋琢磨しているのよ。知識を蓄える邪魔をしないでほしいわね」
「わ、悪い。勉強中だったのか」
小難しいことを言っていたが話しながらも、友華はカチカチとタイピングしてマウスを動かしていた。
流石に悪いと思ったので謝り、一体どんな難しい論文を読んでいるのかと画面を覗き込む。
「ん? 勉強じゃないわよ。ネット掲示板漁ってレスバしてたわ」
「最低だお前!」
友華は有名なネット掲示板で読むのも嫌になるような長文の書き込みをしていた。
俺の罪悪感を返せ。
「相手はネットだけでは口が達者になるニートよ? そのくせ私に反論するなんて許せないじゃない」
「相手もお前と同じこと思ってるかもな。鏡だろ」
「お黙り。そういうお前は何を、って勉強だったわね。意外な趣味をお持ちで」
「好きでやってんじゃない。お前も三年になったらこうなる。特に俺は一年の頃授業サボり気味だったから、宿題以外に自習を何時間かしないと周りに追いつけないんだよ」
「私は今の段階でも難解国立大学に合格できるレベルはあるわよ。去年の試験問題も勝手に解いたけど合格点は上回ってたもの」
くそ。サボり癖のありそうなこいつに脅しのつもりで言ったのに。
というか一年生の時点でそこまで知識あるってどういうことだよ。天才って本当に実在するんだな……。
「どれ、少し見せてみなさい」
「あ、ちょ、待てって!」
友華が俺のノートをひょいっと取り上げる。そして止める間もなくニ十分ほど悩み続けていた数学の問題に視線を流していた。
ま、まあ幾らこいつでも三年の問題は解けまい。さっきのも現実味のない事だし、嘘の可能性が高いし。
「……お前、この問題途中を思いきり間違ってるわよ」
「なぬ!?」
一瞬で間違いを指摘されて、俺は思わず変な声を出した。
次回の更新は明日になります
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